S&E総合研究所 三井不動産 サイトマップ 三井不動産
情報発信

コラム

 

冗長性と多様性

 

 「冗長」という言葉があるが、「話が冗長だ」「冗長な文章」といった具合に、この言葉にはどちらかといえばネガティブなニュアンスが含まれているように思う。しかし、これが「冗長性」(リダンダンシー)になると話が違ってくる。特に東日本大震災以降、震災被害からの回復力・復旧力(レジリエンス)との関連でこの「冗長性」という言葉が注目を集めている。

 

 冗長性というのは、例えば大規模災害によって一部の設備が被災した結果、システム全体の機能が麻痺するような事態を避けるために、あらかじめ予備の設備を用意しておいて被災時にはそちらに切り替えるようなバックアップシステムを組み込んでおくことを言う。システム全体としては予備の設備の分だけよけいな投資がかかる、つまり冗長になるが、その分レジリエンスは高まる。震災後にビルやマンションへの設置が増えている非常用発電装置などはその典型である。
 また、レジリエンスを考える上で冗長性と並んで重要なのが「多様性」(ダイバーシティ)だと言われている。予備の設備を用意するといっても、これをメインの設備と同じ場所に設置するのでは災害時に両方とも同様のダメージを受けてしまう恐れがあるので、予備の設備は別の場所に設置するといった考え方である。
 さて、ここまで書いたところでふと「2:6:2の法則」の話を思い出した。これはお聞きになったことがあるかもしれないが、アリやハチの群れを観察すると、全体の2割がよく働き、6割は普通に働き、残りの2割はあまり働かない、という話である。
 この働かないほうの2割というのはアリの群れにあっては「冗長」な部分であるということができるが、では、そんな怠け者は群れにとって不要な存在かというと、ことはそれほど簡単ではないようだ。この働かない2割を抱えたいわば「冗長」な群れと、働かないアリを取り除いたいわば「効率的」な群れとを比較すると、なんと働かない2割を抱えている群れのほうが長期間存続できるという。
 また、アリはエサを見つけると巣穴からエサまでの道筋にフェロモンを付け、他のアリはそのフェロモンをたどってエサを運びに行くのだが、群れの中にその道筋から外れたり寄り道をしたりする不届きな(おバカな?)アリが混じっているほうが、群れ全体としてエサを持ち帰る効率が高くなるという。これはそうした不届きなアリが道を間違えることで、結果として思わぬ最短ルートを発見することがあるからなのだそうだ。
 まじめに働くアリしかいないという均質かつ効率的な群れよりも、働かないアリや寄り道するアリもいるという非効率ではあるが多様性に富んだ群れのほうが、結果としてサステイナブルであるということらしい。
 こうした話を、所詮はアリの世界の話だろうと一笑に付してはいけない。よく働く社員だけを必要最低限の人数だけ揃えて働かせれば、短期的にはパフォーマンスは高まるだろうが、そうした人的に均質で余裕のない会社は、逆に外部環境変化への対応力、まさに組織としてのレジリエンスは弱いとも考えられるからだ。

 もっとも、そうは言っても働かない社員が2割というのはさすがに多すぎるのかもしれないが。

 


冗長な文章の例

 なお、余談ではあるが、働かない2割のアリを群れから取り除くと、残ったよく働くはずのアリのうちの2割程度がやがて働かなくなるそうである。いや、だからどうだということではないのだが。


辻田昌弘
2014年01月30日 アンテナ(三友新聞)


 
 
調査研究報告
寄稿記事
刊行物
ケアデザインネット
あなたを想うことからページの先頭へ
copyright 2015 Mitsui Fudosan Co., Ltd. All Rights Reserved.
三井不動産のプロジェクト