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ノートパソコン栄枯盛衰

 

 ソニーがパソコン事業を分離し、投資ファンドに売却すると発表した。同社は97年に「バイオ」ブランドでパソコンを発売、同年発売のB5サイズ薄型ノート「505」は、銀色と紫色の2色使いの斬新なデザインで衝撃を与え、後の「銀パソ(銀色のパソコン)ブーム」の火付け役となった。

 

 その後ソニーはピークの2010年度には870万台を出荷する国内有数のPCメーカーとなったものの、12年度には760万台と低迷、今回の事業売却へと至ったようだ。ながらくバイオを使ってきた筆者としてはさみしい限りである。
 一方、ソニーと同じ家電メーカーでほぼ同時期にPC事業に参入したのがパナソニックである。同社の「レッツノート」は軽量、長時間駆動、頑丈というモバイルPCに求められる基本性能を徹底して突き詰めてきたことで、常時PCを持ち歩く必要があるヘビーユーザーのビジネスマンを中心に高い支持を受けている。
 出荷台数は68万台(12年度)とバイオの1割にも満たないが、「新幹線シェア」つまり新幹線の車内で乗客が開いているPCに占めるシェアはダントツのトップだと言われている。
 PC市場はいまやコモディティ化が進んでおり、世界で約3億台の市場の半分弱をレノボ、HP、デルの三強で占める。スケールメリットを効かせた薄利多売の「コストリーダーシップ戦略」が主流の中で、ソニーは世界第9位と日本メーカーとしては健闘してきたものの、それでもシェアは2%程度にすぎない。
 教科書的に言えば、PCにデザインという概念を持ち込むという「差別化戦略」で市場に参入したソニーが、成功に気を良くして規模の拡大という「二兎」を追い始めて、マイケル・ポーター言うところの「スタック・イン・ザ・ミドル」に陥ってしまった、というところだろうか。 対照的にレッツノートは「差別化戦略」に徹し、規模を追わずにニッチを極め続けてきたことが勝因と考えられる。
 ところで、ノートPCと言えばもうひとつ、アップルの「マックブック」に触れないわけにはいかないだろう。08年に発売されたマックブック・エアは、シルバーのアルミ削り出しボディからなる秀逸なデザインとその驚異的な薄さで多くのファンを持つ。レッツノートの「新幹線シェア」に対してマックブックは「スタバシェア」、つまりスターバックスの店内でお客が開いているPCに占めるシェアが異常に高いと言われているように、そのスタイリッシュなデザインが高く評価されている。

 アップルのスティーブ・ジョブズは大のソニーびいきだったそうで、マックブックのデザイン重視のコンセプトはバイオの影響を受けていると言われている。しかし、アップルはPCメーカーとしても世界第6位(推定)の規模があり、しかもタブレット端末を含めた出荷台数では世界一である。つまりバイオと違ってスケールメリットも相当享受できているものと思われ、その意味で差別化戦略とコストリーダーシップ戦略という「二兎」を追うことに成功していると見ることができるのではないだろうか。

 

 なお、余談ではあるが、特にスターバックスの店内でこれみよがしに(どや顔で)マックブックを使うことを「ドヤマック」とか「ドヤリング」と言うそうである。ちなみに筆者は1年ほど前に、ながらく親しんできたバイオからマックブックに乗り換えた。いや、べつにどや顔で言っているわけではないのだが。


辻田昌弘
2014年02月27日 アンテナ(三友新聞)


 
 
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