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共有地の悲喜劇

 

 新幹線や飛行機に乗る際に、三人掛けシートの真ん中の席にはできれば座りたくないと、多くの人が思うはずだ。自席に出入りする際に他の乗客に気を遣わなければならないのもさることながら、なんといっても厄介なのが「ひじ掛け」を巡る攻防戦だ。

 

 当たり前の話だが、三人掛けシートにはひじ掛けは4つしかない。しかし、そもそも腕は6本あるのだから、この数少ないひじ掛けを巡って争奪戦が起きることはそれこそ不可避である。狭いシートに長時間押し込められていることから来るストレスとあいまって、不快な思いをしたことがある人は少なくないはずだ。
 ボーイング社はこれを「ミドルマンの悲劇」と呼び、同社の「B767」の開発にあたっては、新たに2−3−2の座席配置を導入することで、真ん中の席(ミドルマン)の数を減らしたことを積極的にアピールしたほどだ。
 ところで、「悲劇」つながりで思い出したのだが、経済学の命題に「共有地(コモンズ)の悲劇」というものがある。これは、牧草地のような共有財産を、各利用者が自己の利益を最大化するために好き勝手に使うと、結果として牧草地は荒れ果て、利用者全員が被害を受けることになるというもので、地球環境問題などがその典型とされる。ひじ掛けを「共有地」と考えれば、各人がそれを好き勝手に利用しようとすると結果として利用者双方が不快な思いをすることになるという意味では、一脈通じるものがある。
 では、この悲劇を回避するにはどうしたらよいだろうか。いちばん簡単なのは、共有財産を使わないことだ。使わなければそもそもトラブルは起こらない。現に、ひじ掛けは座席の境界を示すものと割り切って、マナーとして使わないと言う人も多い。しかし、せっかくの共有財産を使わないというのはもったいない話だ。
 となると、次に考えられるのは、共有財産の利用に関するルールを定めることだ。例えば、ひじ掛けは各人が右側のものを使うことにしましょう、とか、両端の席には独占的に使えるひじ掛けがひとつあるのだから、真ん中の席の人に両側のひじ掛けを使わせてあげましょう、といった具合にルールを決めれば、トラブルはずいぶんと減るものと思われる。

 さて、いまの日本で「共有地」と言えば思い浮かぶのが水辺(河川敷や海岸)である。水辺の土地は原則として私有が認められておらず、国や自治体など公的セクターの管理下に置かれているのだが、結果としてあまり積極的に利用されていないように見受けられる。経緯はともかく、実態としては誰も使わないひじ掛けのような状態にあるのだが、これももったいない話だ。とはいえ近年は規制緩和が進み、水辺をより積極的に利活用しようという動きも見られるようになった。

 例えば、大阪・土佐堀川沿いでは、規制緩和を受けてカフェやレストランのテラスを防潮堤(河川敷)の上に張り出して設置することが可能になった(=写真=)。ほら、あたかもひじ掛けの上に腕を載せているように見えるじゃないか…と言ったら牽強付会に過ぎるだろうか。

 

 なお、余談ではあるが、旅行サイト「エクスペディア」が米国人を対象に実施した調査によれば、最も多い38%の人が先に席に着いた人がひじ掛けを好きに使ってよい、つまり「早い者勝ち」と考え、次いで28%の人が中央席の人がその両側のひじ掛けを使うべきだと考えているという。なんとなく「なるほど」と思わせる結果ではある。


辻田昌弘
2014年03月27日 アンテナ(三友新聞)


 
 
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