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情報発信

コラム

 

子どものような好奇心を

 

 「全国こども電話相談室」というラジオ番組を覚えていらっしゃるだろうか。1964年から2008年まで実に44年も続いた長寿番組である。子ども達から寄せられる素朴な疑問がなかなかに新鮮で、回答者の高名な先生方がたじたじとさせられることもしばしばであった。ことほどさように子ども達の「なぜ?なんで?どうして?」という旺盛な好奇心は尽きることを知らない。

 

 好奇心は基本的に情報が不足している状態で活発化する。だから子どもが好奇心旺盛なのは当然で、逆にオトナになると好奇心は徐々に薄れてくる。加えて、オトナになると人にあれこれ質問することは格好悪いという意識も出てくる。「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」という格言があるが、こういう格言があるということ自体が「聞くのは恥」と思っている人が多いということの証左でもある。
 さらに、インターネットの普及もあって、現代は情報洪水・情報爆発の時代である。お腹が膨れると食欲が失せるのと同じで、身の回りに処理しきれないほどの情報が溢れている今の世の中、ものごとに好奇心を抱くどころか、逆に自分のまわりに壁を築いて、自分が知りたくもない情報は受け入れないという人も少なくない。養老孟司先生が言うところの「バカの壁」というやつである。
 確かに世の中は情報に溢れている。一昔前はテレビと新聞ぐらいを押さえておけば事足りたが、いまではブログだフェイスブックだツイッターだと、チェックしなければならないメディアがどんどん増えている。あまりの量の多さに辟易して、周囲に情報遮断の「壁」を立てたくなる気持ちもわからないでもない。情報をいかにして取捨選択するかは、それ自体切実な問題である。当たり前の話だが、人間の脳のキャパシティや処理能力はそう簡単には増大しないからだ。
 しかし、情報爆発の一方で、現代は不確実性の時代でもある。変化のスピードは速くなり、しかも複雑化している。つまり「わからないこと」はむしろ従来以上に増えているのだ。わからないことをわかろうとするためには、「なぜ?なんで?どうして?」と問いかけなければならない。なぜなら、現象の背後にある原因や構造を理解しない限り、私たちはただ現象に振り回されるだけだからだ。それでは問題の解決、さらには変化の先取りなど望むべくもない。バカの壁を立ててその内側にこもっている場合ではないのである。
 ある国際比較調査によると、いわゆる学力の面では日本人は先進国の中でも総じて高いレベルにある反面、新しいことを学ぶ意欲、つまり知的好奇心は他国に比べてかなりの低位にあるという。

 2007年、わが国は65歳以上人口が総人口の21%を超え、超高齢化社会に突入した。翌2008年には総人口がピークアウトし、人口減少時代に入った。要は日本全体がオトナ化したということだ。これと時を同じくして「全国こども電話相談室」が終了したのは偶然ではないような気がする。どうやら日本は全体として子どものような好奇心を失いつつあるようだ。

 

 なお、余談ではありますが、本連載〈アンテナ〉は今回をもって終了させていただくこととなりました。2007年7月の連載開始以来今回まで約7年間、計77回にわたる連載を一度も休まず続けることができましたのは、ひとえに読者の皆様のおかげだと思っています。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

 毎回毎回、筆者の好奇心の赴くままにその時々の(一見どうでもいいような?)話題を取り上げ、それを「なぜ?なんで?どうして?」とまじめに考えてみるということを、飽きもせず繰り返してきました。この連載を通じて、読者の皆様の心の中に少しでも子どものような好奇心を呼び起こすことができたならば、筆者にとってこれに勝る喜びはありません。

 


辻田昌弘
2014年04月24日 アンテナ(三友新聞)


 
 
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