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コラム

 

 
MaaSが変える人・モノの移動

 

 

 都市では、多くの人・モノそして天文学的な量の情報が集まり行き交っている。それらを正確かつ迅速に移動させる効率性は都市の必須条件であり、世界的に都市化が進む現在、5G(次世代移動通信規格)や自動運転といったICT技術に期待が高まっている。

 

 

  日本における人・モノの移動を支えるインフラは、明治5年の鉄道開通以降着実に整備され、現在の鉄道営業距離は旅客2万8,000km、貨物8,000kmにおよぶ。都市の象徴インフラである地下鉄は、東京では3,000kmを越えている。
  また、自動車が誕生して約100年、道路に目を転ずると、公道と呼ばれる国・県・市町村が管理する道路は、8,000kmの高速道路を含め121万kmにも達し、鉄道・道路共に現在も延伸中である。
  都市の近代化とは、まさに多様で迅速な移動手段としてのハード整備の歴史でもあった。

 

 

世界で初めて都市交通に
MaaSサービスを実現した「Whim」
(出典:Maas Global社ホームページ)

  MaaS(マース、Mobility as a Service)という言葉を、最近よく耳にする。「サービスとしてのモビリティ」が字義だが、これは移動手段をクルマや自転車の所有という「モノ」で提供するのではなく、「サービス」として提供することを指す。
  MaasSが目指すものとは、徒歩・自転車・クルマ・鉄道・地下鉄・タクシー・飛行機など人の移動に関する、「計画〜予約・支払い決済」までをシームレスに統合した仕組みである。そして、先に挙げたICTの先進技術を活用するMaaSにより移動に要するコストが激減し、これまでなかった大きな需要が生まれると予測されており、スマートシティにおける重要な要素の一つと言える。
  MaaSの取組みで有名な都市の一つが、北欧フィンランドの首都ヘルシンキ市だ。定額の月額料金で、市内のバスや地下鉄などの公共交通機関とタクシーやレンタカー、レンタル自転車などを乗り継いで、効率よく目的地に移動することが可能なサービスが提供され始めている。移動の計画を立てることから料金決済までが、モバイルアプリ「ウィム」(Whim)で可能だ。このアプリの開発ベンチャーであるマース・グローバル社には、2017年トヨタグループ企業が出資を行なった。
  MaaSのシステム開発の背景には、人口減少・労働者不足、都市圏での道路渋滞といった社会課題の解決と、移動を統合するデジタルプラットフォーマーとして新たなマーケットの獲得を目指す競争がある。
  日本でも小田急電鉄がMaaSに向けた取組みを始めている。鉄道による移動に自動運転バスの運行情報や乗車予約を組合せたソフトサービスを、将来は自社のタクシーやカーシェア、駐車場などと連携した移動サービスへと統合することを視野に入れる。さらには、百貨店やスーパー、ホテルでの割引や観光旅行の手配など、ライフスタイル全般に関わるグループサービスを複合・立体的に提供することで、自社沿線の街や住民に新たな便益・価値を創造し、差別化を図る戦略だ。

 

 

 高齢化と人口減少に直面する地方都市では、行政サービス持続の必要から、郊外に拡散した居住エリアから街の中心部への集住を促す「コンパクトシティ」の施策に力を入れ始めている。自動運転やMaaSという新たなソフトサービスの登場が、「スマートシティ」をより一層進化させ、地方の抱える課題克服への、もう一つの有効な解決策となることを期待したい。

 



  山本 淳一
2018年8月30日 街のちから(三友新聞)




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