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コラム

 

 
最新お寺のスピリチュアルケア

 

 

 日本のお寺では、かねてより個人の修行を優先し、檀家以外の一般社会の問題とは距離があった。しかし最近では、スピリチュアルケアの専門的研修を受けた僧をがん患者向けのホスピスに常駐させ、医師・看護師などと協働で患者の心のケアを行う事例など、お寺の新たな社会的活動が注目されている。

 

 

すっきりとしたデザインの
「あそかビハーラ病院」の外観(HPから引用)

 東日本大震災の後、被災者の心のケアのため東北大学で「臨床宗教師」の養成が始まった。僧侶や牧師に限定しない臨床宗教師の養成講座は、その後、龍谷大学・鶴見大学・高野山大学・武蔵野大学などに広まった。欧米ではチャプレンと呼ばれる宗教者が病院・軍隊・警察署・消防署などに配属されスピリチュアルケアを行うのが一般的だが、日本でもお寺が組織として同様のケアサービスに参画し始めている。
 仏教においては、僧院は「ビハーラ」、チャプレンは「ビハーラ僧」などと呼ばれる。ビハーラ僧は、チャプレン同様に自派の教義を押し付けることなく、患者の「悩み」「こころ」を最後まで傾聴し理解に努めることを使命とする。

「あそかビハーラ」病室前の
広々とし た庭園(自己撮影)

 わが国で初めてのがん患者向けビハーラの開設や、ビハーラ僧の養成・派遣の事業に取り組んでいるのは、約800万人の信者を持つ浄土真宗本願寺派(西本願寺)だ。2012年京都府城陽市に同派が開設した緩和ケア病棟「あそかビハーラ病院」の病床数は28床で、4人の僧が常駐する。宗派を問わず受け入れる年間の入院患者は150〜200人に上るとともに、視察者が年間1,000人を超える注目施設となっている。

 筆者は先日、「あそかビハーラ病院」を視察し、心身ケアの進め方を検討する多職種カンファレンスにも参加する機会に恵まれたが、ビハーラ僧が医師・看護師・薬剤師・ソーシャルワーカー等と完全に対等な立場で参加していることに驚いた。普通の病院と異なり、患者の病状だけでなく、ご家族の価値観までも考慮したきめの細かいサービスが個別に議論、決定されており、医療とスピリチュアルケアとの統合に大変感銘を受けた。郊外立地のハンディキャップにも拘わらず、広域から患者が集まっている。浄土真宗本願寺派では、「あそかビハーラ病院」を拠点としてビハーラ僧養成講座を本格化している。

 

 

 わが国では現在、団塊世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態になっても住み慣れた街で最後まで自分らしい暮らしを続けられるよう、住まい・医療・介護・予防が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の構築が進められている。
 このシステムにおいては、終末期の高齢者やその家族を、医療・介護だけでなくメンタル面でも支援するサービスが不可欠となろう。多死社会が本格化するなか、「日本人の死生観」に通じるお寺の新たな社会事業が、多くの街に広がってゆくことを期待したい。

 



  佐藤 教夫
2018年10月25日 街のちから(三友新聞)




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