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コラム

 

 
ストックホルムの壮大なライフサイエンス開発

 

 

 毎年国連から発表される「世界幸福度ランキング」で上位を独占するのは北欧5カ国である。2018年ランキングでは、1位フィンランド、2位ノルウェー、3位デンマーク、4位アイスランド、そしてスウェーデンは9位にランクインしている。

 このランキングは「所得」「健康と寿命」「社会支援」「自由」「信頼」「寛容さ」などの要素を基準に採点されるものであるが、現在スウェーデンで実施中の「ハガシュターデンプロジェクト」は、この中の「健康と寿命」に大きく寄与するものとして期待されている。

 

 

この広大な空閑地にライフサイエンスの
街が開発される(右がソルナ市側)

 ハガシュターデンは、ストックホルム市と隣のソルナ市に跨る96ヘクタールもの広大な対象エリアでのオフィスと住宅の複合開発プロジェクトである。エリア内に存在するカロリンスカ研究所とカロリンスカ大学病院およびその関連施設を、エリアのイノベーションドライバーとして活用する。2025年の完成時には、23,000人分の新たな職場を生み、6,000戸・13,000人分の住宅を供給、その中には国内で一番高い125メートルのツインタワーマンションが計画されている。

 カロリンスカ研究所はノーベル生理学・医学賞の選考委員会が設けられることで有名な医科大学である。その大学病院の名声は世界に轟いており、年間160万人の患者が訪れている。そのため、ここを中心とする半径7キロメートル圏にこの地方のライフサイエンス産業の半分が集結している。これを背景として、今回のハガシュターデンでは大きく2つのコンセプトを掲げている。

 1つ目は、「ライフサイエンスの聖地を作る」という試みである。新しくできるオフィス群の多くにライフサイエンス産業テナントの誘致が考えられており、エリアの中心には大きなカンファレンスセンターが設けられる。

 2つ目は、住宅不足に対応することである。ストックホルム市の出生率は2.3で毎年4万人の人口が増えており、住宅が不足している。ここでは特に、勤務時間が不規則な医療従事者にとっての職住近接の住宅としての期待が大きい。

 以前よりストックホルム市ではスマートシティ開発に力を入れており、同市の南部で開発されたハーマビー、東部の国際港エリアで開発されたロイヤルシーポートも、住宅を中心とするスマートシティプロジェクトとして世界的に注目を浴びてきた。今回のハガシュターデンは同市西部に位置し、この3つのプロジェクト各々は、ストックホルム都心をぐるりと囲む環状高速道路の拠点となる見込みだ。

 現在、隣接するソルナ市との市境には、川の様に広い掘割式の高速道路と線路がある。ハガシュターデンでは、その上に巨大な蓋のような人工地盤をかぶせて開発し、分断を解消することまで考えている。現地でストックホルム市担当者から説明を受けたが、正直そのスケール感には唖然とした。

 

 

 とかく北欧と言えば“既に成熟化しきって活気が無い国”という見方をされがちだが、ハガシュターデンのような世界でも類がないようなプロジェクトを進めている。その本気度は、まるで最新のデザイナー事務所の様な市役所のワークプレイスを見ても伝わってきた。日本の地方自治体との違いをまざまざと感じるとともに、発想を大きく変えれば日本の街でもまだ頑張れる余地があると感じた次第である。

 



  佐々木 誠
2019年2月14日 街のちから(三友新聞)




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