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コラム

 

 
健康の街・クアオルトかみのやま

 

 

 「クアオルト」という言葉をご存じだろうか。ドイツ語で「健康保養地・療養地」を意味する言葉だ。ドイツでは温泉や海風など土壌・海に由来する療養とともに、太陽光・空気といったその土地の気候や地形を利用した治療や療養歩行が主なプログラムとなっている。

 今回は、地域資源を活かし2008年から展開する山形県上山市の「上山型温泉クアオルト事業」を紹介する。

 

 

 上山市は県の南東部に位置し、開湯560年の歴史ある「かみのやま温泉」をはじめ、蔵王連峰の懐に抱かれた城下町・温泉町・宿場町の3つの顔を併せ持つ街だ。人口は3万人超、そのうちの37%を65歳以上の高齢者が占める。市としては、観光宿泊客の減少や高齢化に伴う医療費高騰など、街の活性化や住民の健康を考えなければならない状況にあった。

 2008年、同市の健康を軸としたクアオルト事業が内閣府「地方の元気再生事業」に採択されたことを機に、ウォーキングコース整備・エビデンス調査・専門ガイド養成を行った。2015年には厚生労働省「宿泊型新保健指導事業(スマート・ライフ・ステイ)」にも採択され、保健指導×観光を融合したプログラムを全国に先駆けて実現した。

 

 

気候性地形療法によるウォーキングには
運動が苦手な人も気軽に参加できる

 上山市が特に力を入れるのは、医科学的根拠に基づく健康ウォーキングだ。気候の力(特に冷気と風など)を活用し、野山の傾斜地を歩くと運動効果が高まるため、ドイツでは「気候性地形療法」と呼ばれる。5カ所8コースでアジア初のドイツミュンヘン大学によるコース認定を受けているほか、クア(健康)の道が10コース、街なかにも2つのウォーキングコースを設けた。

 クアオルトに適した自然や風土を持つ上山市での保養により、持久力強化・免疫システムの改善・血液循環機能の向上などの効果が期待できる。また、気候の要素として、「太陽光の紫外線Β波」はビタミンD3活性、「可視光線」は体内リズムの調整や睡眠ホルモン生成、「清浄な空気」は気管支疾患・アレルギー改善に効果がある。こうした地域資源を活かした健康づくりは、激しい運動が苦手で運動時間を確保しにくい中年以降の世代にとって、無理せず楽しく取り組める健康増進プログラムと言える。

 ウォーキング以外にも、地元飲食店や旅館の協力のもと、地元食材を使い栄養バランスに配慮したクアオルト膳・クアオルト弁当も開発・提供しており、正に街をあげたプログラムとなった。10年に及ぶ官民一体での取組みが評価され、昨年秋にはクアオルト関連の旅行プログラムが経済産業省が主導するヘルスツーリズム認証を受けている。

 

 

 健康経営への企業意識が高まるなか、従業員や顧客への各種健康づくり支援で、上山市の取組みに注目する首都圏企業も出てきている。具体的には、宿泊型新保健指導やクアオルト体験プログラムの活用等である。これまでの上山市の取り組みを研究者が調査分析をしたところ、医療費の高い人が健康ウォーキングに継続的に参加した年では、平均で約6万円もの削減効果が出ていた。

 「健康は一日にしてならず」。人生100年時代を迎え、老若男女問わず健康への関心事は治療から予防・未病へと移りつつある。上山市の街の資源を活かし、住民・来訪者が元気になる「日本一のクアオルト」を、これから先も極めてもらいたい。

 



  鈴木 加代子
2019年3月14日 街のちから(三友新聞)





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