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コラム

 

 
妖怪は街の地域資源・境港市

 

 

 鳥取県境港(さかいみなと)市は、国際線就航の米子空港とクルーズ船寄港の境港(さかいこう)を持つ、山陰地方の空と海の玄関口である。

 「ゲゲゲの鬼太郎」等の漫画で有名な水木しげる氏はこの街の出身だ。そのキャラクターや日本古来の様々な妖怪のブロンズ像177体と関連施設が、中心部の商店街800メートルにわたって並ぶ。今年で25周年を迎えるこの「水木しげるロード」は、今や国内外から年間200万人超を集客し、山陰地方観光の一大拠点となっている。

 

 

執筆する水木氏と見守る妖怪たちの
ブロンズ像が水木ロードを象徴している

 羽田から米子鬼太郎空港に飛び、鬼太郎列車を鬼太郎駅(JR境港駅)で降りると、巨大な妖怪壁画が迎えてくれる。鬼太郎交番を横目に、一つ一つの個性的な妖怪像を見ながらロードを進むと、妖怪ポスト・妖怪電話ボックス・妖怪ATMなど街全体が妖怪ワールドを創り出している。夜間は照明効果でさらに雰囲気がアップされ、多くの観光客を集めている理由がよくわかる。

 地域活性化の成功事例に共通してみられるのは、「その地域ならではの自然・文化・産業等の地域資源を、根気よく継続して磨き上げていくこと」である。水木ロードの場合も、成功している要因として、以下の3点が挙げられる。

 第1は、地元出身の水木氏ならではの「妖怪」という非常にユニークなテーマ(地域資源)を選んだことだ。当初、市は衰退化する商店街をコミュニティロードとして整備する構想を立て、テーマとして海や魚を考えたと言う。しかし、それではインパクトに欠けるため、際立つユニークさを求めた結果が、水木氏の描く妖怪であった。周囲には出雲大社や大山があり、神秘的・アニミズム的なイメージが残る山陰地方の自然と精神風土が、古くから伝わる超自然的な存在「妖怪」をテーマとする街づくりに奥深さをもたらしている。

 第2の成功要因は、はじめから完成品としての水木ロードを作らずに、官民が連携しつつ成長・変化を続けていることだ。1993年、市は23体の妖怪像の設置、歩道・ポケットパーク等の整備を行ってロードをオープンさせた。やがて像が80体まで増えた頃、水木しげる記念館構想が持ち上がったが、財政難もあり一時計画はストップした。

 その後、観光客数が横ばい状態となり危機感を持った地元民間団体が、妖怪像設置スポンサーの全国公募等で像を増やすなど、関連施設の整備やイベント開催を進めていった。2003年完成の記念館は、年間入館料収入1億円、5千万円超の黒字で、市の貴重な財源の一つだ。

 さらに、2018年に水木ロードのリニューアル工事が完了したことで訪問客が増加し、県や市の試算によると、その経済波及効果は200億円以上という。

 第3の要因は、妖怪という一つのテーマに徹底的にこだわり、まがい物ではない本物による街づくりを行ったことだ。

 177体のブロンズ像は、水木氏のスケッチ画を元に著名な彫刻家の監修を受けて作られた完成度の高い作品である。また、先述の交番・郵便ポスト・防犯灯などロードにあるものは、細部に至るまで妖怪をモチーフにしたデザインで統一するとともに、周辺での様々な開催イベントも全てが妖怪に関係したものだ。

 

 

 水木氏は2015年に逝去されたが、インバウンドの追い風を活かしながら、水木ロードを軸とした境港の街の、今後の発展・進化に期待したい。

 



  水橋 紳
2019年4月11日 街のちから(三友新聞)




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