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コラム

 

 
街づくりの注目施設・図書館

 

 

 地方都市の中心市街地が空洞化し、多くの自治体にとって街の活性化は喫緊の課題であるが、再開発事業や既存施設のリノベーションを行うことで飛躍的に人を呼び込むことに成功し、全国的に注目されている行政もある。そのキーコンテンツは「図書館」である。

 スマホ等の普及により、本離れが懸念されたが、実際には図書館の数も利用者数も平成時代を通して増加傾向にある。特に2003年に指定管理者制度が導入されてから、公の施設の管理運営を民に包括代行できるようになり、民の視点からの図書館運営が始まった。これを契機に、図書館は、本を読み、本を借りる場所、勉強する場所から、コミュニケーションポイント、コワーキングスペース、本を目的としない人が集まり時間を過ごす場としての施設に変わってきている。

 

 

自治体による図書館リノベーションの
成功事例として知られる武雄市図書館

 図書館をリノベーションした結果、人を呼び込むことに成功した事例として、まずは、佐賀県の武雄市図書館が挙げられる。時を過ごす滞在型図書館を世に広めるきっかけとなり、小さな地方都市を全国的に有名にした図書館で、年間90万人が来館する(市人口5万人)。そしてこの武雄市図書館を見た周南市が、空洞化した徳山駅前に作ったのが周南市立徳山駅前図書館であり、年間200万人が来館する(市人口14万人)。また日本一の来館者数を誇るのは、神奈川県の大和駅前再開発事業で実現した、年間300万人強が来館する大和市立図書館(市人口24万人)だ。西日本一来館者の多い図書館は、年間200万人強が来館するあかし市民図書館である(市人口30万人)。明石市も明石駅前周辺が空洞化していたが、駅前再開発事業の核に図書館を持ってきた結果、再開発事業が駅周辺を活気づけることにつながり、今では隣接する市からの移住者も増え、税収も増えている。

 これらの図書館に共通しているのは、市長がイニシアティブをとって図書館事業を推進し、開放的な空間、カフェ、書店、充実したキッズゾーン、コワーキングスペース、市民プラザといったサードプレイスとしての複合的な場を市民に提供している点である。そして施設が人を呼び込んだ結果、周辺エリアも賑やかさを取り戻していることだ。

 このような目覚ましい成功事例を受け、全国の自治体も図書館に注目しており、指定管理委託を受ける企業には多くの相談が持ち込まれている。

 

 

 たいていの行政は既に図書館を運営しているが、図書館はランニングコストが毎年発生するコストセンターでもある。予算が逼迫する中、手狭になって蔵書が増やせない図書館や老朽化の進んだ図書館の建て替えも進まず、来館者が低迷している施設も多い。そこで再開発事業や商業施設の核施設として図書館を誘致し、人が集まる滞在型にリニューアルオープンできれば、新規に土地代や建築コストをかけることなく、従来のランニングコストと変わらず、来館者を大幅に増やすことも可能になる。

 地方に暮らす市民から見れば、書店が減少し、既存の本屋もベストセラー中心に取り扱うことが多い中、図書館に対する期待は高い。何故なら都心も地方も人々の知的欲求は変わらないからだ。

 これからの進化した図書館は、本を目的としない人々も引き寄せ、時間を過ごす場として、世代と季節を問わず、安定的に多くの来館者が見込まれるため、街の活性化の一翼を担うことができる。つまり街づくりの核施設として期待されるのだ。

 



  山脇 純
2019年6月13日 街のちから(三友新聞)




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