CEO MESSAGE

CEOメッセージ

CEOメッセージCEOメッセージ

はじめに

2023年4月1日をもって、代表取締役社長に就任した植田でございます。私は今、その使命の重大さと責任の重さに身が引き締まると同時に、三井不動産グループを支えてくださるステークホルダーの皆様とともに、新たな未来を築き上げていく、という強い想いを抱いています。
最初に、私の経歴を簡単にご紹介させていただきますと、これまでの40年の会社人生のなかで、日本橋の本社に勤務したのは2009年から僅か10数年のみです。それまでは支店勤務や出向を繰り返し、長きにわたり、外からの視点で、この三井不動産という企業グループを見つめてきた人間です。
入社して最初の配属はたった4人の横浜営業所でした。その後、日本はバブル崩壊を迎え、6年以上にわたり三井不動産ファイナンス社で不良債権処理を行っておりました。まさに砂を噛むような仕事であり、大変厳しい時代でした。
その後、日本における不動産証券化の黎明期である1999年から10年以上、三井不動産投資顧問に在籍し、日本初の上場J-REITであるNBFの準備段階としてプライベートファンドの組成を担当。また、東京ミッドタウンの入札において、ノンアセットビジネスを行う試みとして、投資家の皆様から資金を集めて応札・落札し、アセットマネジメント業務を行ってまいりました。不動産デベロッパーでありつつ、機関投資家の視点やマインドを学んだ経験は、私にとって大変示唆に富むものであり、当社のビジネスモデルである「保有・開発・マネジメント」と「投資家共生モデル」を自らの手で推進してきたという想いを持っています。
リーマンショック後の2009年以降は、ビルディング本部で14年間、一貫して事業機会獲得や新しいオフィスの在り方・働き方を模索し、日比谷・日本橋・大手町・八重洲など、東京都心のミクストユース開発を推進してまいりました。加えて、ワークスタイリング事業や日本橋ライフサイエンス構想などを立ち上げ、街づくりを通じた国際競争力の強化や新たな需要を喚起するプラットフォーム創りに取り組んでまいりました。
まさに三井不動産の街づくりの思想である「人が主役」「経年優化」を実践してきた14年間だったと感じています。

社長としての使命

三井不動産のDNAを次代につなげること

近年の自然環境・社会環境の変化、人々の価値観の多様化などは、グローバル規模で驚くべき速さで進行中です。では、このような不確実性の時代において、社長として自分の果たすべき使命とは何か。それは、世の中の不可逆的な変化を捉え、次の時代に向けた成長軌道を描くだけでなく、従来の不動産業の枠を超えて、人や企業のニーズを読み解き、“新たな需要を創造していく企業”へと進化させていくことである、と考えています。
三井不動産グループは、これまでも日本経済や社会の発展とともに、時代の要請やお客様の声に耳を傾け、多様な価値観や知の結集を通じてビジネスを革新し、常に新たな価値を切り拓いてきた会社です(統合報告書2023 P17ページ参照)。
さまざまな進化を繰り返してきた三井不動産の歴史のなかで、お客様のニーズに真摯に向き合う「顧客志向」と、価値創造に果敢にチャレンジし自らのビジネスをイノベーションする「進取の気性」は、当社のDNAとして社員一人ひとりに刻まれ、受け継がれ、今もしっかりと浸透していると感じています。
今、世の中は大きな転換点にあり、すでに“コロナ回復期”から、次の成長を模索する“変革期”へと移行しました。このような時代には、これまでの経験則は通用しないものですが、世の中の変化が訪れるタイミングはチャンスでもあります。今こそ、三井不動産のDNAをフルに発揮し、次の成長の種を掴み取ることで、新たな三井不動産へと進化していくことができると私は確信しています。

三井不動産のDNA:「進取の気性」と「顧客志向」

三井不動産のDNA:「進取の気性」と「顧客志向」

日本の産業をサポートするプラットフォーマーへの進化、新たな需要の創造

三井不動産ファイナンス社の在籍時代は、まさにバブル崩壊時。当時の私は、日本が世界から取り残されていく危機感を感じていました。また、投資顧問に出向していた時は、不動産証券化を日本に持ち込み、なんとかして日本の立場を上げていきたい、という想いに駆られていたことを、今でもよく覚えています。
振り返れば、私は、常に“世界のなかでの日本の立ち位置” を考えながら仕事をしてきました。
今の日本は、他の先進国と比較して成長鈍化や国際競争力の低下が懸念されています。日本の産業競争力や成長力が高まっていくようなサポートや、そこに働く人の生活や人生を豊かなものとするお手伝いをしたい。これが私の発想の原点です。
また、ビルディング本部長の時は、当初2020年に予定されていた東京オリンピックまでに日本橋・日比谷・大手町の大型新築物件のオフィス床20万坪をリーシングするという当社史上初のミッションに奔走していましたが、このプロセスのなかで「今ある需要という小さなパイを奪い合うのではなく、そのパイを大きくする方法が必要だ」と強く感じました。
このような経験が、日本橋におけるミクストユースの街づくりとライフサイエンスの取り組みへとつながっていきました。
日本橋をライフサイエンスの街へ。この取り組みは、当社がハードとソフトの両面で街づくりというプラットフォームの提供を通じて、日本のライフサイエンス業界をサポートし、新たな需要を喚起し、社会的価値の創出と経済的価値を高めていった象徴的な事例です。
もともと、日本橋は、当社グループを中心としてオフィス・商業・ホテル・ホールなどさまざまな機能を創出し、また地元の皆様と街の活性化を推進してきた街です。別の側面として、日本橋は、江戸時代から続く「創薬の街」であり、以前から数多くの医薬関連企業が点在している街でもありました。

日本橋は「創薬の街」 数多くの製薬企業が存在

日本橋は「創薬の街」 数多くの製薬企業が存在

これからの時代、グローバル規模でライフサイエンスの取り組みが重要性を増していくことは明らかであり、当社は2016年に、世界の健康長寿に関わる課題解決への貢献を掲げ、アカデミア有志とともにLINK-Jを設立しました。そこから日本橋でライフサイエンス分野の「コミュニティの構築」と「場の整備」によるエコシステムを形成し、「新産業創造」と「ライフサイエンスの聖地化」に向けた活動を展開。今ではLINK-J会員652団体、年間イベント834件、イベント動員数年間20万人以上、ライフサイエンスビルは日本橋で約15棟を展開しており、167の団体が新たな当社テナントとして日本橋に集結しています。

ライフサイエンス分野 新産業創造・聖地化へ

ライフサイエンス分野 新産業創造・聖地化へ

※1 2023年2月時点 ※2 2022年実績

さらに、ウーブン・バイ・トヨタ様やボストン コンサルティング グループ様など、ライフサイエンス以外の業界からも、当社の活動にご賛同・共感いただき、新たに日本橋のテナントとしてお迎えすることができました。街の多様化がテナントの多様化につながり、日本橋は、今では東京のトップクラスの賃料水準の街へと成長しています。そして現在は、次なる産業創造を目指し、「江戸時代の五街道の起点である日本橋から、6つ目の街道を宇宙につなげよう」とJAXAと連携して、日本橋を「世界に誇る宇宙ビジネスの聖地」にするべく動き始めています。
宇宙開発の進展は、モビリティ・グリーンテック・ロボティクス・データサイエンス・ライフサイエンスといった多岐にわたる分野の産業創造に影響をもたらし、関連ビジネスや市場規模は拡大を続けています。日本橋には、すでに30を超える産官学の宇宙関連プレーヤーが集結し、最新の知と情報が集まる宇宙関連のエコシステムが構築されています。

宇宙産業に関する一般社団法人「cross U」設立

宇宙産業に関する一般社団法人「Cross U」設立

一般社団法人クロスユー:
当社を中心にして設立された、「宇宙ビジネスの拡大」を目指す共創プラットフォーム

これからも“人や企業に寄り添うパートナー”として選ばれるデベロッパーでありたい。従来のような不動産デベロッパーの枠を超え、いわば街づくりを通じた“産業デベロッパー”というプラットフォーマーとして、さまざまな産業へポジティブに関わり、多くの気づきやイノベーションの種を獲得し、そこから新たなビジネスの創出・需要の創造を実現していくことで、新しい三井不動産を切り拓きたい、と私は思っています。

三井不動産の競争優位性と今後の課題

続いて、街づくりにおける当社の競争優位性と今後の課題について、ご説明します。

総合力の強み

私たち企業は、多様化するお客様のニーズに応えていくために、あらゆる可能性や選択肢を提示できる幅広い提案力が求められています。その点において、当社グループは一つの企業体であらゆるアセットを展開し、賃貸や売却や運営機能といった多様な稼ぎ方を包含しながら、ミクストユース型の街づくりを推進できる、世界的にみても稀有な企業であり、他社にはない「総合力」を有しています。
また、この総合力の強さは、お客様にご提示できる「選択肢の広さ」を意味しており、最も高い付加価値をご提供することが可能、ということでもあります。
一方、この総合力が内包する課題は、事業の複雑さゆえに外部からリスクが見えにくく「コングロマリット・ディスカウント」と捉えられがちである点です。しかし、あらゆるアセットと多様な稼ぎ方を併せ持つ総合力があるからこそ、外部環境やマーケットの急変に際しても、リスク耐性とレジリエンスの強さを発揮できます。大事なことは、投資家の皆様が過度なリスクを織り込まないように、情報の非対称性を解消し、当社グループの総合力の強さをご理解いただくことです。当社グループの総合力が、商品本部やグループを跨いだ「社内外の連携」となり、お客様の新たなニーズや需要を掴み、新商品やサービスを生み出し、不動産業の進化につながっている姿を、皆様にもご理解いただけるよう、しっかりと資本市場との対話を重ねていきたいと思います。

「あらゆる商品セグメント」「幅広いバリューチェーン」「街づくり型事業の開発力」

「あらゆる商品セグメント」「幅広いバリューチェーン」「街づくり型事業の開発力」

資産ポートフォリオと顧客基盤の強み

2020年から始まったパンデミックの波は、働き方を大きく変える契機となり、世の中にリモートワークや在宅勤務が浸透しました。その一方で、あらためてオフィスの意義や重要性が再認識され、生産性の向上・人材獲得・企業のブランディングなどに資する、好立地・高スペック・多機能な物件が相対的に人気を集める時代となっており、これからは、街やオフィスの優勝劣敗が進んでいくことが予想されます。
下記グラフは、当社の資産ポートフォリオに占める築5年以内の物件割合やミクストユース物件の割合を示したものです。当社グループは、2018年の東京ミッドタウン日比谷を皮切りに、東京都心部やニューヨークなどで相次ぎ再開発を推進するとともに資産入替を進めてきた結果、過去からの比較では、①むしろ資産ポートフォリオが若返っていること、②好立地・高スペック・多機能なミクストユースの資産割合が増加していることがおわかりいただけると思います。

ポートフォリオの若返り、都心ミクストユースが増加

ポートフォリオの若返り、都心ミクストユースが増加

※東京ミッドタウンシリーズ、コレドシリーズ、50・55ハドソンヤード、その他大規模5物件

加えて、シェアオフィスである「ワークスタイリング」、テナント専有部への「グリーン電力の提供」、企業の健康経営に資する当社サービス「&well」、出社したくなるオフィスづくりをサポートする「&BIZconsulting」など、当社は、独自のソフトサービスの提供を通じて、 テナント様との長期的なリレーションの強化を実現しています。

充実したソフトサービス

充実したソフトサービス

また、前述した「ライフサイエンスの聖地」としての日本橋のように、場とコミュニティの提供を通じて多くの企業やアカデミアが集まり、エコシステムが形成され、新たなビジネスの創出や新需要の創造につなげている活動も、当社ならではの取り組みです。

場とコミュニティの提供

場とコミュニティの提供

LINK-Jにおけるネットワーキングイベント

コロナの鎮静化に伴い、世の中でリアルの価値が再認識されているなか、当社はこのようなハードとソフトの独自戦略で「街」に求められている多様なニーズを受け止め、いろいろな仕掛けを施し、ワークとライフが一体化した「行きたくなる街」を創っています。そして、そのような街にあるオフィスだからこそ、ワーカーが「出社したくなるオフィス」として、多くの経営者から移転先として選ばれる結果につながっていると感じています。
加えて、当社は、不動産の総合力を武器として、80年以上の営業活動によって培われた顧客ネットワークを有しています。それは事業会社に限らず、アカデミア・農業界・医療法人など、業界の枠を超えた幅広いものであり、また、その関係性も、家主とテナントという関係を超え、時に共同事業者として手を携え、また時には社会に還元するための共同研究を行うなど、厚み・深みのある強固なリレーションとなっています。
このように、当社グループの資産ポートフォリオの厚みや顧客基盤の強みは、長い歴史を経て積み上げてきたものであり、他社が容易に真似できるものではなく、これからも中長期的な競争優位性を発揮していくことが可能です。
しかし、これまでの当社グループは、“地道にコツコツといいものをつくっていれば、わかる人はわかってくれる”、といった職人気質な社風もあり、他社との違いや差別化について、対外アピールが十分にできていない面がありました。資本市場とともに生きていくうえでは、その強みを対外的に定量的に発信していくことが肝要であり、これは社長としての責務であると強く感じています。これからの三井不動産グループの変化にぜひご期待いただきたいと思います。

三井不動産の街づくり

三井不動産の街づくりの思想

当社グループが目指す街づくりの根幹にある思想は「人が主役」「経年優化」の2点です。
街というプラットフォームを提供し、コミュニティの構築と場の整備を通して、さまざまな人や企業が集い、エコシステムが形成され、イノベーションが起こり、新しい産業や価値が創り出されていく。そこから新たな需要やニーズが生まれ、建物やサービスも進化し、時を経るごとに街の魅力が高まり、さらに人や企業を惹きつけていく。その好循環が産業や企業の成長へとつながり、都市の競争力も高まり、経済も発展していく。こうした価値創造こそが、私たちデベロッパーの存在意義であり社会的使命である、私はそう考えます。

街づくりを通じた「人々への感動の提供」「暮らしの豊かさの創造」「持続可能な社会の実現」

街づくりを通じた「人々への感動の提供」「暮らしの豊かさの創造」「持続可能な社会の実現」街づくりを通じた「人々への感動の提供」「暮らしの豊かさの創造」「持続可能な社会の実現」

街づくりによるサステナビリティ実現

私たちは、地球に生きる企業市民として、環境課題を“自分事”として捉え、未来に向けて、あらゆるステークホルダーに対して「経年優化」をもたらす経営の視点が不可欠です。
当社グループは、サステナビリティやESGといった言葉が世の中に定着する遥か前の1991年、「マーク」の理念を制定しました。これは、対立する概念を「or」でどちらか選ぶのではなく、「」で両立・共存させることを表したものであり、この理念のもと、「共生・共存」「多様な価値観の連繋」「持続可能な社会の実現」を掲げ、街づくりを通して、地球環境との共生や社会の持続可能性を高める取り組みを推進しています。
特に、グローバル規模で進行する気候変動への対応は、社会基盤の構築・発展を担う当社グループの社会的責務であり、TCFD賛同表明、RE100の加盟、SBTイニシアティブ認定の取得、CDP2年連続Aリスト獲得なども含めて、これまでも積極的に脱炭素社会の実現に向けた全社行動計画を推進してきました。そしてこのたび、生物多様性への取り組みに関する情報開示要請の高まりを受け、従来の取り組みから今後のビジョンを含む「三井不動産グループ生物多様性方針」を策定しました(統合報告書2023 P79ページ参照)。
2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全する「30by30アライアンス」にも加盟し、当社グループで北海道に保有している約5,000haの森林では、生物多様性に配慮した天然林の保護などを含む持続可能な林業にも取り組んでいます。また、神宮外苑の再開発では、4列のイチョウ並木を保全するとともに多様な緑化を計画しており、将来的には地区内の樹高3m以上の高木本数を既存の1904本から1998本へ、また緑の割合も現況の約25%から約30%へと増やしていく予定であり、次の100年に向けて、緑の循環を図ってまいります。

三井不動産グループの保有林

三井不動産グループの保有林

一方、気候変動への対策は課題が山積しています。当社グループの温室効果ガス排出量の約9割はScope3からの排出であり、CO2排出量の2050年ネットゼロ達成は、当社グループだけでなくサプライチェーン全体で取り組んでいく必要があります。このサプライチェーンが“他人事の連鎖”になってしまっては何も生まれません。今は100年後の地球の未来を決定する転換点にあり、私たち企業は、自ら実行していく経営の意志が問われています。
サプライチェーンの下流にあたるテナント様や住宅ご購入者に対するCO2排出量の削減対策については、新築・既存物件の省エネ設備の環境性能向上が着実に進行中です。テナント様からのご要望に応じて、専有部にグリーン電力を供給するサービスも、すでに100社超のお客様と契約を締結しています。
また当社は「非化石証書」だけに依存しないリアルなグリーン電力の調達として、メガソーラーの開発・運用において送配電ネットワークを利用し、発電した電力を当社保有建物に「自己託送」スキームを活用して送電する取り組みを展開中です。これからも自社のみならずテナント様も含めたカーボンニュートラルの実現に向け、メガソーラーや洋上風力発電等の新技術の活用により、さらなる再生可能エネルギーの調達を目指していきます。
加えて、サプライチェーンの上流にあたる建築資材メーカーや建設事業者への働きかけとして、当社は、2022年3月、日建設計様とともに「建設時GHG排出量算出マニュアル」を策定しました。これを契機に、有識者や関係省庁を巻き込んだ検討会が発足し、6月には、正式に不動産協会より、業界が使用する標準マニュアルとしてリリースされており、企業の垣根を超え、業界全体での排出量削減に貢献しています。

街づくりは人づくり

これからの時代、街づくりを通じたプラットフォーマーとして、産業競争力の向上や新産業の創造に貢献し、人々や社会がより豊かに発展するためのお手伝いをしていくうえでは、不動産業の知恵だけでは対応できないことは明らかです。例えば、仮想空間・宇宙・グリーン等の新分野を含め、さまざまな産業へのプラットフォーマーとしてイノベーションを起こすためには、その分野を取り巻く環境・人・情報など、あらゆることを知らなければなりません。そのためには、いろいろな価値観を持つ人が活躍することが大切です。異なる価値観やバックグラウンドを持つ者同士がそれぞれの意見や発想を戦わせることで、新しいアイデアやビジネスが生まれます。その結果、組織としての変化対応力が高まります。つまり、「人が主役」の街づくりを標榜する当社グループにおいて、人的資本への投資や人権への取り組みといった“人づくり”は必然といえます。このような課題意識のもと、当社グループは「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」「人材育成・スキル向上」「多様な働き方」「健康経営」「社員エンゲージメント向上」を重点施策として取り組んでいます(統合報告書2023 P83ページ参照)。
なお、当社のD&I戦略は、現在、特に女性活躍推進を重要テーマとして位置付けています。当社グループは、お客様に女性が多いにも関わらず、これまで同質性の高い男社会でした。まずは女性にフォーカスして取り組みを進めます。そこから発展して、年齢や国籍の違い、障がいの有無、契約形態の違い、当社歴の長さ、育児・介護などの状況に関わらず、全社員がより能力を発揮できる環境へとつなげていきたいと思います。
企業の価値創造を支える最も大きな原動力は“人”という資産にほかなりません。当社グループは、これまで以上に、多様な価値観・能力を融合させてチームとしての価値創造力に変えていき、そこから生まれるさまざまな意見や知見を活かすことで、これからも社会に新たな価値を提供し続けていきたいと思います。

街づくりは人づくり街づくりは人づくり

株主還元について

  • 当社を長期的に支えてくださる投資家の皆様に対しては、長期的な視点を持って、持続的な成長と連動した安定・継続的な還元姿勢が最も重要であると認識しています。
    当社は、現状の還元方針として総還元性向45%を掲げていますが、これまで過去20年以上にわたり、純利益の減少があった時にも減配せず、還元「規模」の安定性を重視し、一貫して配当の維持向上を継続してまいりました。このような企業姿勢を通じて、私ども経営が資本市場に発信しているメッセージをご理解いただければ幸いです。
    そして、新しい経営体制となった今も、この精神は変わることはありません。
    2023年度の1株当たり配当予想は、これまでと同様、累進配当を継続し、純利益2,100億円に対する配当性向30%を目安として6円増配の年間配当68円を想定しています。自社株買いは、「機動的」と言いながらも、現状の株価に照らして、継続性や一定の規模感を考慮していく必要があると考えています。
    また、株主還元は、EPS成長やROE改善にも作用する要素であり、将来の当社の“あるべき姿”を目指して、現在の総還元性向45%から、さらなる還元の進化を目指してまいります。そして、VISION 2025の前倒し達成が見えた今、その先にある当社の将来像をしっかりと議論し、来春を目途に、新たな長期経営方針を公表したいと考えています。
  • 株主還元について

    配当総額・自己株式取得額・総還元性向の推移

    配当総額・自己株式取得額・総還元性向の推移

    1株当たり配当額・親会社株主に帰属する当期純利益の推移

    1株当たり配当額・親会社株主に帰属する当期純利益の推移

最後に

当社の事業は、社会のサステナビリティ実現に資する価値創造そのものであり、当社が創出する社会的価値の延長線上に、自らの経済的価値があることは、これまでの歴史からみても明らかです。その一方で、私たちの目指す街づくりは、長い期間を要する事業であるため、私たちを支えてくださる投資家の皆様の時間軸と比較しても、成長性や効率性などの効果が見えにくい点が課題の一つです。リスクをとって当社に出資してくださっている投資家の皆様に対して、定量的な指標等の向上も含め、しっかりと方向性と実績を示し、ご期待にお応えしていくことは、私の重要なミッションであると認識しています。
当社グループは、長期的な視点に立ち、自らの存在意義・社会的使命・価値創造といった定性的な姿と、それを実現するための持続的成長・効率性の向上・健全な財務体質・株主還元の強化などの定量的な姿を、両輪でしっかりと発信していきたいと思います。
座右の銘は「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる。」19世紀のフランスのSF作家ジュール・ヴェルヌの言葉です。

私はこれまでの経験を通じ、突拍子もない「妄想」であっても、そこに大義があれば仲間が集まって「構想」となり、「実現」につながっていくと確信しています。そして、土地柄を活かした「地の利」、時流を読んだ「時の利」、さまざまな出会いである「人の利」を重ねてきたからこそ、当社グループの今がある、と思っています。
これからも、当社を取り巻くステークホルダーの皆様とのご縁を大切に、より積極的に対話を重ねながら信頼関係の強化につなげていきたいと考えています。
引き続き、皆様の変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。

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