IR

社外取締役座談会

グループ長期経営方針の
「ありたい姿」の実現に向けて

経営方針「VISION 2025」の振り返りをはじめ、新グループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」への期待や評価、取締役会の実効性、人材戦略などをテーマに、中山社外取締役、伊東社外取締役、河合社外取締役、引頭社外取締役4名による座談会を実施しました。その内容をご紹介します。

社外取締役鼎談社外取締役鼎談
  • 河合 江理子指名諮問委員会委員
    報酬諮問委員会委員(左)

  • 伊東 信一郎指名諮問委員会委員長
    報酬諮問委員会委員長(左から二番目)

  • 引頭 麻実指名諮問委員会委員
    報酬諮問委員会委員(右から二番目)

  • 中山 恒博指名諮問委員会委員
    報酬諮問委員会委員(右)

長期経営方針「VISION 2025」の振り返り

これまでの長期経営方針「VISION 2025」を通じて、
三井不動産はどう成長できたと思いますか。

伊東: 私は、期間を通じて順調に成長を遂げてきたと評価しています。特に、2018年の策定当初には想定していなかったパンデミックを途中で経験し、商業施設事業やホテル・リゾート事業などの施設営業事業は大変な苦労をしましたが、それを補う形で、オフィス賃貸・分譲事業が順調に成長し、またロジスティクス事業なども好調に推移しました。一方で、商業施設事業や施設営業事業もコロナ禍が収束して以降の立ち直りのスピードが非常に速く、そういう意味でも、全体が順調に成長していると見ています。グローバルカンパニーへの進化という点でも、ニューヨークやロンドンなどで、将来につながる大規模プロジェクトが複数誕生しており、大きな成果が上がった、そんな期間だったと思います。
中山: そうですね。「VISION 2025」で目指したありたい姿について、2025年を待たずして、その達成が見えたという点は評価できると思います。伊東さんのおっしゃるように、特にコロナ禍で一番苦しんだ事業が、コロナ禍明けに早速、成長の原動力となり、それまで溜めてきた力を出したという点はとても良かったと思います。また、「VISION 2025」では、「経年優化」や「Real Estate as a Service」といったキーワードを掲げていましたが、こういった本業である不動産事業の進化も重要なポイントでした。三井不動産グループは業界で一歩先を行くのだというメッセージが明確になったことが「VISION 2025」の成果であり、私としては特に印象深いです。

新グループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」

新グループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」が策定されました。
策定プロセスやそこに込めた想いなど、どのような期待を持っていますか。

引頭: 中山さんがおっしゃったように、「VISION 2025」では当初掲げた目標を数値面でも達成し、さらに進化するための土台がつくられました。それを踏まえて、「& INNOVATION 2030」で今後私たちがどう変わっていくのかということについて、今回、我々社外取締役も含めて、多面的な議論を交わしたうえで、経営方針の策定に至りました。日本だけでなく世界を見ても、自然災害や金利・為替動向、生成AIの台頭など、外部環境の変化が経営にもたらすインパクトが大きくなっているなかで、当社がどのように、不動産会社としての枠を超えて成長していくか、という視点で議論を尽くしてきました。不動産業は長い歴史のなかで比較的変化が緩やかな業界にも見えますが、今回、それを大きく変革しようとしていますし、そのためにも、多様なバックグラウンドを持った社外取締役がさまざまな意見を述べてきました。
河合: そうですね。策定プロセスでは、社外取締役の意見についても本当によく取り入れていただいた印象で、皆で納得できた経営方針ができたと思います。「& INNOVATION 2030」のありたい姿には、「産業デベロッパーとして社会の付加価値の創出に貢献」とありますが、このビッグピクチャーに向けて事業戦略と財務戦略を両輪で進めていくバランスの良い計画になったと思います。また、良い意味でアグレッシブな目標数値を出せたことも評価しています。
中山: 社外取締役が策定プロセスに参画する時点で、膨大な量の資料が用意され、ありたい姿について相当議論してきたことが感じられました。社内の経営陣が合宿されたと聞いていますし、私たちも議論に入りやすかったですね。
伊東: 「VISION 2025」をスタート台にして、2030年に向けてどのようにして道筋をつけていくか、そうした観点で、用意周到に議論を展開できたと思います。「産業デベロッパー」という言葉は、不動産デベロッパーを超えて、新たな産業への進出にも挑戦していくという、三井不動産グループの方針も包含しており、とてもマッチした表現ではないでしょうか。
引頭: 「& INNOVATION 2030」からは、不動産業の枠を超えるイノベーションを起こしていくという想いを強く感じます。不動産業の枠を超えて、世の中にどういう大きなインパクト、社会価値的価値を創出していくか、そのための手段として、新事業領域の探索、「プラットフォーマーとしての深化と進化」を掲げていますが、この「プラットフォーマー」という言葉も「産業デベロッパー」とセットで捉えるべき重要なキーワードだと思っています。要は、単に産業をデベロップするためのコーディネーションだけでなく、そのプラットフォーマーになるという宣言なのですよね。これは三井不動産グループが、今後イノベーティブなビジネスモデルへと変革していくなかで非常に重要なことだと思います。
  • 中山恒博
  • 社外取締役 中山 恒博
    (株)みずほコーポレート銀行代表取締役副頭取やメリルリンチ日本証券(株)
    代表取締役会長を歴任し、金融業界で、長年にわたり経営者として活躍。
    2019年6月から当社取締役に就任。指名諮問委員会、報酬諮問委員会委員。

「& INNOVATION 2030」の財務戦略については、どのように評価していますか。

中山: 事業戦略を通じた社会的な価値創造だけでなく、財務戦略を通じて経済的な価値創出も図っていくという道筋を示したことで、全体のプランが、地に足が着いた感じがします。社会的価値の創出だけの議論ですと、やはり少し遊離してしまいかねない。そこを、経済的価値の創出という視点で、具体的な数値の目標と財務戦略を練り、しかもそれを単に利益の成長で終わらせるだけでなく、創出した利益の還元や効率性の改善といったところまで示せたことで、一つの完成されたピクチャーが見えたと思います。民間の事業会社として社会に貢献しながら利益も出し、その利益を社会にも還元していく、そのサイクルを示せたことは非常に大事だと思います。
河合: 当社のように長期にわたるプロジェクトを手がけている企業が、安定・継続的な利益成長と、BSコントロールを通じた資産効率性の改善を通じて、株主還元を強化するという財務戦略は、わかりやすくて良いと思います。
引頭: そうですね。こうした全体視点から財務戦略を打ち出したことは、資本市場にとっても安心感につながると思いますし、2030年度前後の定量目標として掲げたROE10%以上という水準は、決して容易には達成できる水準ではないものの、大きな期待を持っていただいているように思います。

事業戦略で打ち出した、新たなアセットクラスへの展開や新事業領域については、
どのように期待していますか。

中山: 「新たなアセットクラス」として掲げたスポーツ・エンターテインメントを活かした街づくりについては、私は相当成長余地があると見ています。
引頭: そうですね。私は千葉・船橋の「LaLa arena TOKYO-BAY」を完工後に視察したのですが、視察したことで今まで抱いていたアリーナに対する価値観が大きく変わりました。どの階の席に座ってもアリーナを映し出すビジョンは快適に見えるし、臨場感もあるし、ものすごく付加価値の高い施設だと感じました。
伊東: こうした施設には、東京ドームが三井不動産グループに加わった効果も大きく表れているのだと思います。
中山: そうですね。また、「新たなアセットクラス」の賃貸ラボ&オフィス事業やデータセンター事業は、今後、「産業デベロッパー」や「プラットフォーマー」としての力を発揮していきたいという当社の想いが込められている領域です。
引頭: 賃貸ラボ&オフィス事業では、社会的価値だけでなく経済的価値の創出もできますし、既にLINK-Jやクロスユーといった宇宙ビジネス関連のネットワーキングづくりでも実績を出しています。
伊東: 一人ひとりの妄想や構想を実現に結び付ける「妄想、構想、実現」という社長の言葉や当社の社風が生きる分野だと思いますし、植田社長の旗振りも上手だなと思います。
引頭: そうですね。ラボに関しては、日本だけでなく世界が、ライフサイエンスなどの科学分野での新たな価値創出を目指しており、そうしたところには資金も集まりやすいでしょうから、まさしく「産業デベロッパー」としての機能が発揮されるのだと思います。「産業デベロッパー」は、ある意味で、産業フロンティアを創ることと同義ですから、私はとても期待しています。データセンター事業に関しては、これからAI時代が到来し、消費電力量や半導体の設計方法自体にも大きな変革が生まれてくるなかで、三井不動産グループの新たなアセットをどうマッチさせ、世の中をリードしていけるかがポイントですよね。
中山: 新事業領域も含め、こうした次世代に向けた新たなチャレンジは、すべてが同じ時間軸で同じ利益率を上げる必要はありません。冷静なモニタリングは必要ですが、トータルでうまく回せれば、会社としてはとてもおもしろいですね。

  • 伊東信一郎
  • 社外取締役 伊東 信一郎
    全日本空輸(株)、ANAホールディングス(株)で代表取締役社長・会長職を歴任。経営者として長年にわたり活躍し、2019年6月から当社取締役に就任。
    指名諮問委員会、報酬諮問委員会委員長。

取締役会の実効性、資本市場との対話

社外取締役としての今後の役割について聞かせてください。

引頭: 今まで話してきた事業戦略の進捗を見ながら、リスク許容度を超えていないか、しっかりモニタリングしていくことも、私たち社外取締役の役割の一つです。三井不動産グループの懐の深さで、社会的な価値を創出しながらも、偏らないようバランスを見ていくのが、取締役会、その中でも特に私たち社外取締役の責務だと感じています。
中山: そうですね。社外取締役の目線は、世の中の常識から見て、執行側の議論が外れていないか、サステナブルかどうかです。ここをしっかりとモニタリングしていくことが社外取締役の役割です。今回、社外取締役が1人増え、13人の取締役のうち5人が社外取締役という構成になりました。今後も、取締役会全体のスキルマトリックスの視点から、その構成についても議論していくことが大事だと思います。また、併せて、資本市場の声に耳を傾けることも重要で、投資家の視点は、私たちに気づきを与えるきっかけにもなります。そうした、資本市場の声が取締役会で共有され、それをもとに議論を深めることも必要だと思います。
伊東: 当社は2030年度に向けて高い目標を掲げましたので、今後そこに向けて、どうしっかりと数値で進捗を示していけるかも、世の中は関心を持って見ていると思います。こうしたテーマについて、さらに取締役会で多くの時間を割いて議論していけたらと思います。
河合: そうですね。取締役会での議論に加えて、私たちが必要と判断したテーマについては、時間をとって議論するために社外役員ミーティング等でも取り扱い、その結果を執行側にフィードバックしていくというのも、一つの有効なモニタリングの仕方ですし、社外役員のさまざまな知見を経営に反映する良い機会だと思います。今後もますます社外取締役の責務は大きくなると考えます。

  • 河合江理子
  • 社外取締役 河合 江理子
    京都大学名誉教授。長年にわたり海外で活躍し、経営コンサルタント、国際決済銀行(BIS)や経済協力開発機構(OECD)などの国際機関での経験も豊富。
    2021年6月より当社取締役に就任。指名諮問委員会、報酬諮問委員会委員。

取締役会の実効性確保に向けた取り組みを、どのように評価していますか。

中山: 今回、取締役会の付議基準を一部変更しましたが、議論をより充実させるという意味で良かったと思います。もちろん、当社にとって、取締役会で議論するべきかどうかは、金額だけで決める問題ではありません。経営として重要だと思うものは、やはり取締役会に上げていく。そうしたフレキシビリティがあってもいいと私は思います。その点で、付議基準に限らず、必要な取締役会審議のあり方は継続して検討する必要があると思います。

ありたい姿を実現するための人材戦略

最後に、ありたい姿を実現していく当社のイノベーションを支える人材について、
どのように考えていますか。

河合: 三井不動産は長期的視野に基づいた経営方針で安定感もあり、人を大切にし、人材育成にも真剣に取り組んでいる優良企業で、従業員の皆さんものびのびと仕事をしている印象です。最近は働き方改革を通じて、女性にも働きやすい環境をつくろうと努力していると評価しています。
伊東: そうですね。社員のエンゲージメントも高いですし、「妄想、構想、実現」の旗を振る植田社長のもとで、元気の良い人たちが育つ土壌もあると思います。
河合: 一方で、イノベーティブな人材をより惹きつけるという意味で、人事のフレキシビリティをより高めることも考えられると思います。社外のイノベーティブな層は人材の流動性も高い側面もありますが、三井不動産の今のエンゲージメントの高さを活かしつつ、2つが両立するような会社を目指していければより良いのではないでしょうか。
中山: 従業員の方からは、新たな長期経営方針を植田社長が直接、従業員の働く現場を回って説明されていたと聞きました。従業員の方も、そうした社長のアクションがとても新鮮で、社長の想いが直接伝わってきて良かったとコメントされていました。
引頭: 人材戦略というのは、どうしても、どのように人を配置しようといった視点になりがちです。私はもっと根本的に、どうやったら人が気持ち良く働きながら、満足感を得られ、また仲間になっていけるのか、という視点が大変重要だと思います。
伊東: そうですね。併せてですが、当社施設の運営現場の多くは、グループ会社の方が担っていますから、いかにグループ全体のエンゲージメントを向上させていくか、その視点も非常に重要だと考えています。

  • 引頭麻実
  • 社外取締役 引頭 麻実
    大和証券(株)や(株)大和総研でのアナリスト・コンサルタント業務経験や、証券取引等監視委員会委員等を務めるなど、豊富な経験と幅広い見識を有する。
    2023年6月より当社取締役に就任。指名諮問委員会、報酬諮問委員会委員。