トップコミットメント

持続可能な社会の実現をめざして 三井不動産株式会社 代表取締役社長 菰田正信

当社グループは創立以来、時代時代の社会課題を、「場」の提供によって解決してきました。高度経済成長期の埋め立てによる工業用地の整備、霞が関ビルに始まるオフィスの高層化による執務空間の縦への拡大、住宅や商業施設事業によるくらしの豊かさの提供など、日本の高度経済成長期を支える「場」を提供してきた「産業デベロッパー」としての歴史があります。これを「産業デベロッパー1.0」と捉えています。

そして、現在は「場」だけではなく、イノベーションを促進する「コミュニティ」を重ね、企業や社会、そこに生きる人々の英知を結集させる役割を担う「産業デベロッパー2.0」へと成長を遂げてきました。産業の成長を支える「場」と「コミュニティ」の双方を提供することで、社会の付加価値の向上に寄与すると同時に、新たな需要を生み出し、当社グループの持続的な成長の実現を目指してまいります。

その象徴的な取り組みの一つが、半導体産業への挑戦です。半導体は「産業のコメ」とも称されるとおり、私たちの身の回りのモノやサービスのほぼすべてに使われ、その重要性は年々増しています。すべての産業分野でデジタル化・DX が急速に進む中、半導体はデジタル社会における産業の“根幹”であり、“付加価値創出の源泉”です。AIの進展とともに、もはや経済安全保障上の最重要戦略物資となってきており、当社としても非常に重要な領域と認識しています。

当社グループはこれまで、日本橋を中心にライフサイエンスや宇宙産業をテーマに街づくりに取り組み、その中で「人や企業、大学をつなぎ、コミュニティをつくり、活性化していくチカラ」を培ってきました。半導体分野は大変裾野の広い産業で、産業コミュニティであるRISE-A の運営を通じて、半導体サプライヤー、ユーザー、サポーターが立場を超えて「共創・協調」するための「場」と「コミュニティ」を提供していきます。

熊本では、半導体産業をテーマにサイエンスパークプロジェクトに挑戦します。熊本は、半導体関連企業の集積に加え、世界最大の半導体ファウンドリである台湾のTSMC が進出し、新生シリコンアイランド九州の一大拠点となりつつあります。参考としているのは、TSMC を生み出した台湾のサイエンスパークです。多様な企業とアカデミアが集まり、基礎研究から製品開発、人材育成まで幅広くコラボレーションする仕組みを参考に、熊本においても、工場、オフィス、クリーンルーム、研究施設などの整備にとどまらず、人材育成も含めたコミュニティを構築し、産官学連携、日台連携によるR&D から量産までの幅広いエコシステムを地元とともに構築していきます。産業の成長とともに新たな需要を創出し、それを着実に事業機会として取り込むことで、社会と企業の持続的な成長が好循環するモデルを実現していきます。

環境との共生については、2025 年に策定した街づくりにおける環境との共生宣言「& EARTH for Nature」において、自然と人・地域を一体で「環境」と捉え、それぞれの魅力が循環し、年を経るごとに輝きを増す、持続可能で豊かな「環境」のネットワークを、東京、そして日本全国へ広げ、次の世代へつないでいくという考え方を示しました。

「東京ミッドタウン(六本木)」は、この考え方を体現する代表的な街の一つです。都心部では希少で広大な緑地を有するミッドタウン・ガーデンでは、2007 年の竣工以来、従前地からの既存木の移植・保存、高木層を持つ樹林の保護などの管理を継続してきました。その結果、都心において生物多様性に配慮されていることが評価され、環境省などによる「自然共生サイト」に認定されました。都心にありながら、人も生き物も豊かに暮らせる場を提供していることは、当社グループが目指す環境との共生の一つの姿です。

旧防衛庁時代から受け継いだ桜などの樹木を守り、育て、四季折々の植栽やイベントを通じて、人々が自然を身近に感じられる場を提供してきました。緑地は単なる景観ではありません。自然があるからこそ人が集まり、憩い、新たな価値が生まれる。そうした循環を通じて、街の魅力とエリアの価値を高めていくことができます。これからも環境との調和を大切にしながら、「経年優化」していく、次世代に誇れる街づくりを進めてまいります。

人々の健やかさと活力を支える街づくりにおいては、スポーツ・エンターテインメントの可能性がますます大きくなっています。

「東京ドーム」は、スポーツとともにコンサートの圧倒的な聖地としてグローバルに認識され、国内外のアーティストからも選ばれる存在です。当社グループは、この「東京ドーム」で培ってきた運営力やブッキング力を活かしながら、規模や特性の異なるスポーツ・エンターテインメントの場を広げ、あらゆるレイヤーのアーティストや興行に活用いただける環境を整えていきます。

商業施設との連携も、当社グループならではの強みです。商業施設と一体となったアリーナである「LaLa arenaTOKYO-BAY」では、イベント来場者が隣接する「ららぽーとTOKYO-BAY」などへ回遊する効果も生まれています。さらに、渋谷の「MIYASHITA PARK」では、東京ドームで開催されるコンサートやスポーツイベントに合わせてポップアップストアを展開するなど、エンターテインメントと商業施設のシナジーを創出しています。世の中では、「モノ」消費とは別次元で、「コト」や「トキ」を体験する価値が大きく伸びています。リアルの商業施設を持つ当社グループの強みを活かし、「コト」「トキ」と「モノ」を融合させ、リアルの体験価値を通じて異次元の「感動」のある街づくりをさらに加速していきます。

これらの価値創造を支える源泉は「人」です。人的資本主義という言葉が広まる以前から、私たちは「人こそが会社の本質的な資産である」という認識を共有してきました。だからこそ、従業員ひとり一人が能力を最大限に発揮できる環境づくりを重視し、働きやすさの向上や自律的なキャリア形成を支援しています。その実現に向けて私が大切にしているのが、従業員との対話です。社員との一体感を醸成し、当社グループを「One Team」とするため、私は社長就任後の3 年間で計97 回の社内ミーティングを開き、従業員と胸襟を開いて語らってきました。こうした対話を通じて、あらためて従業員のモチベーション・多様性・エンゲージメントの高さを感じています。

当社グループの特徴は、限られたメンバーで、質の高い成果を生み出している点にあります。このコンパクトな組織体制により、風通しの良い環境をつくり出すことができています。そして、多様な才能と情熱を持った仲間が、One Team となって知恵と想いを結集することこそが、当社グループの最大の強みです。この組織力こそが、複雑なミクストユースの街づくりを実現する当社グループの競争力です。

真の付加価値は、形式主義や前例主義に陥らず、お客様や社会が本当に望むものを先回りして考え、挑戦することから生まれます。多様な人材が自分らしさと能力を最大限に発揮することで街づくりの価値が高まり、社会に対してより豊かな選択肢を提供し、当社グループの競争力を高めていきます。

これからも当社グループは、本業である街づくりを通じて社会課題の解決に取り組んでまいります。私たちの価値創造は、「社会的価値の創出」と「経済的価値の創出」を車の両輪として考えています。社会的価値を創出することが経済的価値の創出につながり、創出した経済的価値によって、さらに大きな社会的価値の創出へとつなげていく。この好循環を絶えず生み出し続けることが、当社グループの持続的な成長の源泉です。マテリアリティへの取り組みを一層進化させ、社会とともに成長する企業グループとして、より豊かで持続可能な未来の実現に貢献してまいります。