IR

社外取締役座談会

グループ長期経営方針の「ありたい姿」の実現に向けて

グループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」の初年度を振り返るとともに、その進捗と課題をはじめ、役員報酬制度や取締役会の実効性について、中山社外取締役、河合社外取締役、引頭社外取締役、日比野社外取締役の4名による座談会を実施しました。
その内容をご紹介します。

社外取締役鼎談社外取締役鼎談
  • 中山 恒博指名諮問委員会委員
    報酬諮問委員会委員(左)

  • 河合 江理子指名諮問委員会委員
    報酬諮問委員会委員(左から二番目)

  • 引頭 麻実指名諮問委員会委員
    報酬諮問委員会委員(右から二番目)

  • 日比野 隆司指名諮問委員会委員長
    報酬諮問委員会委員長(右)

グループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」の初年度の振り返り

日比野: グループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」の初年度である2024年度は、全セグメントで史上最高収益・利益を計上し、事業利益、経常利益、純利益もすべて過去最高を更新するなど、全体としては満点と言って良い業績だと評価しています。またPLだけでなくBSやリスクサイドにも常に目配りをし、マンション価格の高騰などの国内事業環境についても、その構造を踏まえて慎重な議論を進めています。また、イノベーションにつながる新規事業の進捗についても適宜報告がなされ、長期経営方針に沿って、地に足のついた形で進んでいる点は安心しています。

引頭: 本当にそうですね。初年度の定量実績は、2026年度の目標に向けて着実に進捗できたと思います。事業戦略の「三本の道」に関しても、第1の道である「コア事業のさらなる成長(深化と進化)」については、建築費の高騰や国内金利の上昇など、外部環境の変化にもかかわらず高い収益性を実現できており、「市場からのデカップリング」の実績を初年度から示せたと評価します。また第2の道である「新たなアセットクラスへの展開」についても、昨年開業したLaLa arena TOKYO-BAYが高い稼働率で好調なスタートを切るなど、スポーツ・エンターテインメントで大幅に収益を拡大し、実績を出しています。

中山: 2024年度を振り返ると、そのスポーツ・エンターテインメントやホテル・リゾート事業を含む施設営業セグメントが、賃貸・分譲・マネジメントに続く4本目の柱に育ってきたことも大きなポイントではないでしょうか。施設営業は、コロナ禍で最も苦労した事業ですが、当社は当時、運営ホテルの人員を削減せずに効率性を追求し、かなり筋肉質な事業体質へと変革してきました。足腰を強化してきた成果が、2024年度に利益成長として表れたと評価していますし、施設営業が4本目の柱として育ち、「三本の道」における第2の道「新たなアセットクラスへの展開」を図るうえでも、一つの起点となる大きな前進だったと捉えています。

引頭: 確かにそうですね。一方で、第3の道「新事業領域の探索、事業機会獲得」では、「プラットフォーマーとしての深化と進化」に向けたさまざまな活動がなされています。まだ初年度ですので、活動に直結した成果は発現していませんが、引き続き道筋を確認していきたいと思います。

河合: コア事業がここまで順調に進捗しているなかで、敢えて新たな事業に挑戦するのは容易なことではありませんが、社外取締役としては引き続き新しいチャレンジを後押ししたいと思います。また、新規事業では既存事業とは異なる視点やスキル等が求められるため、人材の多様性の確保が不可欠であると考えています。

中山: チャンスがあればM&Aを検討するけれど、そのチャンスが飛び込んできた時に、それを掴める体制でいられるよう、人的リソースの視点で準備しておくことが重要だと思います。また、第3の道に関しては、第1の道や第2の道と同じ時間軸で考えてはいけないと思うのですよね。昨年、専門部隊としてイノベーション推進本部を新設しましたが、本部としての実績をつくるために近視眼的な動きに走らないよう、経営としては追い込まないことが重要です。第3の道の実績は、年単位で測ってはいけないと思います。

引頭: 私も同じように思っています。なまじ数字で投資枠を設けると、会社が定めた第3の道の本質的な価値を見失いかねませんので、外部環境変化によって当初のシナリオからずれが生じたら、シナリオを書き直すことも受容しながら、イノベーションを育てていくことが重要だと思います。

河合: イノベーションを創出するには、会社から物理的に離れた場で、これまでとは違う経験をしてきた人たちが、異なるカルチャーをつくり上げ、大きなパッションと違う視野を持って、自由に仕事をするような環境を用意することも必要と感じています。

  • 中山恒博
  • 社外取締役 中山 恒博
    (株)みずほコーポレート銀行代表取締役副頭取やメリルリンチ日本証券(株)代表取締役会長を歴任し、金融業界で、長年にわたり経営者として活躍。2019年6月に当社取締役に就任。指名諮問委員会、報酬諮問委員会委員。


長期経営方針の達成に向けた課題

日比野: 2024年度の業績は素晴らしいのですが、一点、海外分野については、引き続き課題があるとの認識です。当社は国内においては確かな存在感を示すことができている一方で、海外においては、影響は限定的ではあるものの、一部のエリアで損失を計上しました。海外で投下資本を上回るリターンを得ることは容易ではありません。地政学リスクを回避しながら、国内で培った強みを友好国で活かす展開の種蒔きはすでに始まっていますが、将来の成長を考えるうえでは、海外分野でどのように収益を上げていくか、引き続き注視が必要だと認識しています。

引頭: 私はROAの水準が気になっています。ROEは10%目標に向けて当期末も8%と上昇基調にあり、資本効率は高まっていますが、BS全体を考えると総資産が増えていることが、今後ROAを押し下げる要因にもなり得ます。もちろん、ROAだけを切り取って課題と認識しているのではなく、投資と回収を上手くバランスしながら適切なタイミングでアセットが回転しているかという視点でも、しっかり見ていくことが重要だと考えます。

河合: 一方で、事業環境を見ると、建築費の高騰が続いていますが、取締役会では事業の採算性や将来性等を十分に精査したうえで、一部の案件については計画の再評価・調整を行いました。こうした柔軟な判断ができることは安心感につながっています。

日比野: そうですね。判断も素晴らしいし、意思決定後、円滑にパートアウトする力もある点でも安心です。また、財務健全性の確保という点では国内金利の急騰が最大リスクの一つですが、当社の円貨借入のうち、長期・固定金利のものが90%程度であるため、比較的低リスクだということを取締役会の議論においても確認しました。一方で米国債の格下げなどもありましたので、世界の金融情勢については常時クロスウォッチし、適切なデットバランスを保つ必要があります。住宅市場環境についても、住宅ローン金利との見合いから需給バランスが変化する可能性もありますので、多少の外部環境の変動では揺らがない事業ポートフォリオを構築しておく必要があります。

引頭: 当社のリスク管理能力は、私は非常に高いと評価しています。この1年の海外投資に関しても、負債を活用するか、出資にするか、為替がどの水準の時に実行するかなど、マーケットを見ながら会話して進めていました。将来起こり得るリスクに対しても、今の優れたリスク感覚を持続しながら向かって行ってほしいと思います。

中山: 海外の話でいうと、資産の3割を海外に振り向け、回転型投資を中心に新規取得を加速して1つの柱にしていくという当社の方向性は間違っていないと思います。米国・サンベルトエリアやシンガポール、豪州など、これまでとは違うエリアもバランスよく見つつ、うまくいかなければ資産回収するという、超高速の回転型投資を進めています。海外資産のポートフォリオ構成も、米国・ニューヨークの50・55 Hudson Yardsのようなフラッグシップができたうえで、それぞれの性格を捉えながら組み替えており、その方向性は良いと思います。一つ、忘れてならないのは、海外の資金調達の問題です。純金利負担を削減するため、日米の金利差を考慮した資金調達を実施していますが、これによる為替リスクについては常に頭の片隅に入れていただきたいと思います。

引頭: 中山さんと同様、私も海外ビジネス自体は推進すべきと考えています。当社は海外進出に際し、まずは現地の有力デベロッパーとのパートナーシップを締結してスモールポーションから入り、その後、パートナーから進出国・地域のデベロップメントを段階的に学び修得するアプローチを採っており、この戦略は非常に良いと思います。当社の海外進出の歴史は50年以上と長いですが、誤ったシナリオで展開するリスクを最小化するためにも、パートナーから引き続き学びつつ、グローバルの社会情勢・人口動態等のマーケットへの理解を深め、投資する姿勢が重要だと思います。

河合: 同感です。日本のマーケットが少子化などで縮小するリスクがあるなかで、海外投資は重要な戦略ですが、パートナーとともに、嗅覚を利かせて進めていくことが大事ですよね。

日比野: 日本には南海トラフ地震の発生可能性などの災害リスクもありますから、事業ポートフォリオのリスク分散の視点から海外は押さえていかなければいけません。日本をコアに、地政学リスクも勘案しながら海外にもアンテナを張り、良いパートナーを見付けて参入していくことが重要ですね。

  • 河合江理子
  • 社外取締役 河合 江理子
    京都大学名誉教授。長年にわたり海外で活躍し、経営コンサルタント、国際決済銀行(BIS)や経済協力開発機構(OECD)などの国際機関での経験も豊富。2021年6月に当社取締役に就任。指名諮問委員会、報酬諮問委員会委員。

役員報酬制度の改定について

引頭: 当社の役員報酬制度は、報酬諮問委員会や取締役会における複数回の議論を経て、今年3月に改定されました。今回の改定の大きなポイントは、算定式を明確にして開示したことと、長期経営方針のKPIとの連動性を強化したことです。KPIについては、定量面だけでなくESGの視点も含めており、財務・非財務のバランスが取れていると評価しています。株式報酬に関しては、支給する譲渡制限付き株式数(RS)と譲渡制限付き株式ユニット(RSU)を原則75%:25%と定めました。RSUの導入により運用性を高めたことは、報酬体系を考えるうえで重要なことだと考えています。また、経営を牽引する会長・社長の業績連動報酬の比率が高い仕組みは、株主の皆様からもご賛同を得やすかったのではないでしょうか。

河合: そう思いますね。報酬諮問委員会では今回の改定ポイントにつき議論を重ねましたが、ESGなどの非財務指標を役員報酬と連動させたことでインセンティブが働くようになりますし、何より報酬体系の透明性が高まったことは、私たち社外役員にとっても、これまで以上にモニタリングがしやすくなると考えます。

日比野: 株式報酬は、株主の皆様と価値を共有する報酬であり、それが役員報酬の約3分の1を占めています。中長期で株主の皆様とパラレルにリターンを得る報酬設計は、非常に精緻にできており、模範的との印象です。

中山: そうですね。基本報酬と賞与、それから株式報酬の3つの比率を見ても、グローバルスタンダードに近づいており、大変良い内容になったと思います。報酬に連動する財務KPIについても、賞与については事業利益と純利益といった短期的な業績とする一方で、株式報酬にはEPSとROEを連動させています。長期的に株主が追い求めるものを取締役としても追い求めていくといった、株主の目線に合わせていくという意図が反映されており、非常に優れた考え方だと思います。

  • 引頭麻実
  • 社外取締役 引頭 麻実
    大和証券(株)や(株)大和総研でのアナリスト・コンサルタント業務経験や、証券取引等監視委員会委員等を務めるなど、豊富な経験と幅広い見識を有する。2023年6月に当社取締役に就任。指名諮問委員会、報酬諮問委員会委員。

取締役会の実効性

中山: 取締役会においては、2024年度から付議基準を変更しました。これは過去に取締役会で何回も議論してきたことで、経営の根幹に触れるテーマを議論する時間をより多く確保できるよう、議案の数を絞り、かつ、取締役会に付議する金額基準を引き上げていただきました。その結果として、取締役会での議論はこれまで以上に活発になりましたし、明らかに実効性が高まったと感じています。また取締役会の前には、経営会議で議論されている内容をきめ細かく共有いただけます。こうしたことから、当社取締役会の実効性評価が、高い評価を得ているのは、私としては至極当然と受け止めています。一方、実効性の観点で、今後より一層取り組むべき課題は、グループガバナンスです。これだけ大きな組織ですので、三井不動産グループトータルでのガバナンスをどう評価し、またその実効性をどう高めていくべきかについては今後も引き続き検討するべきだと思います。

河合: 取締役会の実効性向上に資する観点として、取締役会の多様性があります。今年の株主総会での決議を経て、当社として初めて、女性の社内取締役である海藤取締役を選出できました。当社にとって今回の役員人事は非常に大きな前進だと捉えています。海藤取締役は、キャリア採用で当社に入社されており、新卒で入社された方々とは異なる視点をお持ちだと推察します。当社では、2025年目標としていた女性管理職比率10%という水準を2024年に1年前倒しで達成するなど、着実に女性管理職の数が増えてきています。新卒でも中途入社でも女性社員にとってガラスの天井を打ち破るという点でも意味のある役員人事ですし、取締役会の多様性向上という点でも、期待をしています。

引頭: ステークホルダーとの対話について、2024年度は、さまざまなタイプの機関投資家とのミーティング回数が増加しており、より積極化してきているとの認識です。一方で、当社の所有株式数ベースでの株主構成を見ると、増加傾向ではあるものの、個人株主比率が5%と1桁台にとどまっています。個人株主の拡充の視点から、株式分割を実施したほか、株主の皆様にはお客様としても当社のファンになっていただけるよう、三井ショッピングパークポイントを株主優待として進呈するなど、新たな活動を進めています。こうした地道な活動が、バランスの取れた株主構成の形成につながりますので、引き続き継続していただきたいと思っています。

日比野: 資本コストの観点から考えると、逆張り傾向の強い個人株主を増やすことは、株価のボラティリティを下げ、ひいては資本コストを下げる効果が期待できる側面もあります。加えて、当社はB to Cのビジネスにも多く携わっていますから、個人投資家・株主の拡大はプラス効果が高いと思います。個人投資家向けIRにもしっかり注力され、早期に比率を2桁台まで拡大できると良いと思います。

河合: 個人株主比率の向上については、通常のIRに加え、当社のファンづくりという視点ではPR的な活動とも捉え、お客様としても当社グループのファンになっていただけるよう意識して取り組むことが大切と思います。

引頭: そうですね。個人投資家向け説明会に加えて施設見学会の開催など、当社グループを知っていただく機会を増やしエンゲージメントを深めていけると良いですね。

中山: 外国人持株比率について申し上げると、海外機関投資家が50%近く保有している日本企業は、数の限られた優良企業しかありません。加えて、当社はある特定の機関投資家に偏ることなく、幅広い海外投資家に保有いただいています。この点は、当社は自信を持って良い部分です。

日比野: おっしゃるとおり、誇るべきことですね。世界から、安定的な成長性を認められている企業としてのメルクマールとして重要ですね。海外投資家から注目されていることは、当社の成長性への期待の表れでもありますから好ましいことです。

河合: 海外機関投資家の視点からは学ぶべきこともたくさんありますよね。彼らは、グローバルのマクロの視点から地政学リスクなども勘案したうえで投資先を判断していますから、対話を通じて、彼らの意見を参考に取り入れていくのも良いと思います。

  • 日比野隆司
  • 社外取締役 日比野 隆司
    (株)大和証券グループ本社の社長・会長を歴任し、ファイナンスや資本市場、さらには経営全般について、幅広い知見と多様な経験を有する。 2024年6月に当社取締役に就任。指名諮問委員会、報酬諮問委員会委員長。