ESG / SUSTAINABILITY

Vol.7

2022.3.28

新規事業で挑む「食」の課題

三井不動産グループでは、ロゴマークの「&」に象徴される「共生・共存」「多様な価値観の連繋」「持続可能な社会の実現」の理念のもと、グループビジョンに「&EARTH」を掲げています。
街づくりを通して、人と地球がともに豊かになる社会に向けた取り組みをニュースレターとしてお届けしてまいります。 Vol.7となる今号では、今後注目される食の課題解決の施策として、三井不動産の「農業」の新規事業を紹介します。
農業と不動産業という一見すると少し距離のある事業が、どこでどう繋がるのか。 三井不動産ならではの視点と取り組みを、社員インタビューを交えてお届けします。

「しぜんと、生きる。」GREENCOLLAR
二拠点生産で新たな農業を提案

2019年に設立された三井不動産発の社内ベンチャー企業「株式会社GREENCOLLAR」は、日本と季節が逆のニュージーランドの両国で日本品種の高品質な生食用ぶどうを生産し、世界中へ販売する事業を行っています。日本とニュージーランドでの二拠点生産を通して、通年雇用、早期の技術習得を実現させるとともに、年2回「旬のぶどう」を提供しています。
一方、日本の農業は高齢化、耕作放棄地の増加など、多くの課題を抱えております。GREENCOLLARでは二拠点生産、ICT活用、大規模化など新しい農業のかたちを実現するとともに、生産現場へのボランティアの受け入れなどを通じ、都市と近郊、消費者と生産者の距離を近づけ、農業をより身近に感じてもらう取り組みも行っております。
GREENCOLLARは「しぜんと、生きる。」をヴィジョンに掲げ、大自然のなかで身体と頭と感性を使い、仕事も余暇も充実させる生活スタイルを追求することで、人も地球もサステナブルな生き方を実現していきます。

通年生産と通年雇用

極旬バイオレットキング

ぶどうの生産は繁忙期と閑散期の労働時間差が大きいため、これまでは従業員を通年雇用することが困難でした。GREENCOLLARでは季節が逆のニュージーランドで生産を行うことで、通年雇用を実現しています。年2回の生産活動により、1人あたりの生産性が倍になるとともに、技術の習得スピードも格段に速くなることで、生産性向上と高付加価値化を実現いたします。

ぶどうの生産スケジュール

生産現場と消費者の架け橋へ

従来、生産現場と消費者の間には明確な線引きがあり、消費者にとって生産現場は遠い存在でした。GREENCOLLARではD2C販売、ボランティアの受け入れなどを通じ、消費者を生産現場に近づける取り組みを行っています。この取り組みを加速することで、「都市」と「郊外」をクロスオーバーさせ、多様な価値観に対応する生活スタイルを生み出します。

世界でのアイデンティティ奪還

近年、日本の品種が海外へ無断で持ち出されたことなどにより、海外における高級ぶどうの主要プレーヤーが日本から他国へシフトしつつあります。
GREENCOLLARは自社ブランドである日本品種のクラフトぶどう「極旬」を年に2回、世界へ向けて販売することで「Japan Quality」の再認知を図っています。また、新品種開発にも着手し、さらなる国際競争力の強化を目指しております。

PROJECT STORY
プロジェクトストーリー

「農業をあこがれの職業に。農業が抱える様々な課題 をGREENCOLLARが解決していく。」

株式会社GREENCOLLAR
代表取締役:鏑木裕介(写真左)、大場修(写真中)、小泉慎(写真右)

GREENCOLLAR代表取締役 鏑木 裕介

GREENCOLLARの発想の原点とは

鏑木:2014年からNZでぶどう生産を行っている葡萄専心社 樋口社長と出会い、日本とNZを往来しながら、大自然に囲まれた環境で、魅力的なぶどうを生産するライフスタイルに魅力を感じました。
また、日本品種のぶどうは魅力がある一方、繁閑差が大きいため通年雇用が難しく、投資額が大きく回収が遅いという構造的な課題があり、この点に事業としての伸びしろ、可能性を感じた部分もあります。

GREENCOLLARはどんな社会課題を解決するのか

鏑木:二拠点生産やICT活用による大規模で効率的な生産体制と、国内外への販路開拓などを通じたブランド化によって収益性を向上、さらに労働条件を改善させることで、農業をあこがれの職業にして、日本の農業の発展に貢献していきたいです。
また、日本品種の海外流出や、海外での大量供給により、日本の国際競争力は相対的に低下しています。さらに農業におけるイノベーションの源泉である、品種開発力の低下も懸念されております。
GREENCOLLARは世界で「日本品種」と「日本品質」を前面に打ち出したブランディングと、ライセンスビジネスを視野に入れた品種開発を進めることで、海外における日本の農作物の地位を向上させ、日本品種のアイデンティティを奪還する取り組みも行っています。

三井不動産がなぜ、ぶどうの生産販売に取り組んでいるのか、三井不動産らしさがどのような点に表れているのか

鏑木:デベロッパーの本質である土地の価値最大化という意味では、実は不動産会社らしい事業だと考えています。ぶどう生産は初期投資が大きく、投資回収までリードタイムが比較的長く、その後は長期間の安定収益が得られるといった特徴があり、不動産ビジネスに似ているところがあります。
三井不動産は、「経年優化」という思想の元、長期的なスパンで街のあり方、そこに住まわれる人々の暮らし、さらには環境問題への配慮を考えて街づくりを行っています。GREENCOLLARでも短期的な利益だけではなく、地方や農業のあり方、農業に従事する人々の生活を長期的に考えて事業を行っています。
また、三井不動産の街づくりの知見を活かし、山梨にある大自然に囲まれた農場を、地方と都市の相互交流を行う場として捉え、都市に住まわれている方を積極的に地方へ呼び込む取り組みも行っています。農業のある暮らしを体験していただき、地方と農業をより身近に感じていただくことで、農業そのもののイメージも変えていけると考えています。

新規事業を生み出す社内プログラム

三井不動産は、新規事業を事業横断で生み出すために社内に複数のプログラムを有しています。GREENCOLLARもこれらのプログラムを活用して生まれました。

事業提案制度「MAG!C」

GREENCOLLARは、三井不動産社内ベンチャーの第1号で、2018年に開始した事業提案制度「MAG!C」から生まれました。毎年、年に一度、事業案を募集し、その中から審査や事業化研修などのサポートを経て事業化を推進するプログラムで、発案者が事業責任者としてビジネスを立ち上げるもの。MAG!Cは2021年までに累計で269件応募があり、14件が事業検討に着手、うち2件が事業化しています。

スーパーマーケットの廃棄野菜を、生きものミュージアムの動物の餌に

三井不動産グループが運営するEXPOCITY(大阪・吹田市)では、施設内の廃棄食材をユニークな形で活用しています。スーパーマーケット「デイリーカナートイズミヤ」のミニトマトやニンジン、大根、キャベツ、ブロッコリー、小松菜などの野菜や果物を、同じEXPOCITY内の生きているミュージアム「NIFREL(ニフレル)」の動物たちに定期的に届けています。
野菜や果物はいずれも売り場に並べる前の加工・包装のプロセスで取り除かれた部分や、入荷後の点検で商品としてそぐわないと判断されたものが主で、売場に並べたのち棚から外したものもあります。この取り組みは、「NIFREL」から隣接する「デイリーカナートイズミヤ」で出る廃棄食材を生きものの餌に活用できないかとの相談を受け、EXPOCITY職員がお引き合わせしスタートいたしました。複合商業施設を運営する当社ならではのフードロス削減の取り組みです。

三井不動産グループのSDGsへの貢献について

三井不動産グループは、「共生・共存」「多様な価値観の連繋」「持続可能な社会の実現」の理念のもと、人と地球がともに豊かになる社会を目指し、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)を意識した事業推進、すなわちESG経営を推進しております。さらに「重点的に取り組む6つの目標」に取り組むことで「Society 5.0」の実現や、「SDGs」の達成に大きく貢献できるものと考えています。

重点的に取り組む6つの目標

  1. 街づくりを通した超スマート社会の実現
  2. 多様な人材が活躍できる社会の実現
  3. 健やか・安全・安心なくらしの実現
  4. オープンイノベーションによる新産業の創造
  5. 環境負荷の低減とエネルギーの創出
  6. コンプライアンス・ガバナンスの継続的な向上

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