SUSTAINABILITY / ESG

Vol.13

2023.6.27

誰もが自分らしく輝ける街へ
三井不動産が広げるD&Iの輪

2022年度 国際女性デーイベント関係者

三井不動産グループのロゴマークである「&」に象徴される「共生・共存」「多様な価値観の連繋」「持続可能な社会の実現」の理念のもと、グループビジョンに「&EARTH」を掲げています。街づくりを通して、人と地球がともに豊かになる社会に向けた取り組みをお届けしてまいります。
今回のテーマは、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)です。三井不動産グループでは街づくり事業を通して、多様な人々が生き生きと暮らし、お互いに尊重し合える社会の実現を目指しています。サステナブルな未来のために三井不動産グループが実施するD&Iの取り組みを、社員インタビューを交えてご紹介します。

街中にある「ワーク・ライフの場」でD&Iを推進する取り組み

三井不動産グループでは、オフィスや商業施設など様々な「ワーク・ライフの場」において、D&Iを推進する取り組みを実施しています。そういった取り組みの中からいくつかの事例をピックアップしてご紹介します。

「三井のオフィス」での取り組み

多様な働き方を実現する「COLORFUL WORK」

三井不動産では誰もが自分のカラーを活かして働けるよう、「三井のオフィス」のスローガンに「COLORFUL WORK」を掲げ、多様な働き方の実現をサポートしています。

その一環として実施しているのが、オフィスで働く方々に向けて、ダイバーシティ社会での働き方を考えるイベントやセミナーの開催です。中でも、毎年国際女性デーに合わせて開催するイベントでは、育児や家事とキャリア実現の両立などをテーマに、様々な登壇者をお呼びして、働き方・生き方についてディスカッションしてきました。

2022年度イベント
「もっとチャレンジできる明日へ『Diversity&Career Forum』
~企業が女性活躍と多様性の推進に取り組む理由~」

2022年度の国際女性デーは、「企業が女性活躍と多様性の推進に取り組む理由」をテーマに開催しました。会場は3月10日にグランドオープンした東京ミッドタウン八重洲で、YouTubeでのオンライン配信も実施しました。

登壇者は、林礼子氏(BofA証券株式会社 取締役 副社長 )、野間友惠氏(ダイキン工業株式会社 人事本部 人事企画グループ長 部長)、安井直子氏(三井化学株式会社 人事部ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョングループリーダー)、橋本昌一氏(本田技研工業株式会社 人事・コーポレートガバナンス統括部 人事部 キャリア・多様性推進室 主幹)です。

様々な事情を抱えながらもキャリアを実現し、D&Iの推進に取り組んできた4名の登壇者により、刺激的なトークディスカッションが繰り広げられました。

今回のディスカッションの大きな特徴は、登壇者が自分自身のプライベートな経験を開示しながらキャリアを語ったことです。
林氏は、結婚して一度は専業主婦になるも2週間で限界を感じ、仕事に復帰したエピソードを披露。その後妊活を断念した際に、夫の言葉によって「良い母になるのが務め」といった強迫観念や周囲の期待から解放され、自分らしく楽しくストレスフリーに働くマインドを手に入れた経験を語りました。

野間氏は、かつて自分の中にあった「女性の幸せは犠牲の上に成り立つ」というイメージが、海外の女性たちの生き方に触れることで刷新された経験を紹介。そして卵子凍結や事実婚など、将来の可能性を広げることとなった自身の選択についても語りました。

男性の多い職場で働く安井氏は、女性研究職として初の課長就任、管理職として初の妊娠出産育休など、次々と「初」を経験した人ならではの苦悩を語りました。子どもを預けて働くことに悩んだ時期もあったものの、小さな子どもが多様な人と関わることの重要性を学んだことで、周りに頼りながらキャリアと育児を両立させられるようになったと述べました。

唯一の男性登壇者である橋本氏が語ったのは、自身がうつ病になったときのことです。最初は自分がうつ病であるという事実を受け入れるのも難しかったことや、次第に「自分の経験を恥ではなく光として周りのために活かそう」と考えるようになり、社員の悩み相談を受けるキャリアアドバイザーへと転身したことを語りました。

このようにそれぞれの登壇者が、人生における「つまずき」を開示しながら語るキャリアのお話は、様々な立場に置かれた参加者に共感をもたらし、D&Iの必要性を実感させるものとなりました。

イベント後半では、企業としてD&Iに取り組む意義についてディスカッションが行われました。女性が働きやすい職場は、多くの人にとって働きやすい職場であるという意見や、誰もが自分を活かして働ける環境の整備は、一人ひとりの人生を豊かにするだけでなく、企業の成長、ひいては日本経済、日本社会の成長のために不可欠であるという意見などが聞かれました。

また、今回は新しい取り組みとして男性登壇者をお呼びしただけでなく、社員の男性比率が高い企業からも登壇者をお呼びしました。これによって、男性も積極的に取り組める女性活躍推進のあり方をはじめ、すべての人が当事者意識をもって取り組めるD&I施策のあり方について、実践的な議論が実現しました。

参加者からは「D&Iに理想と現実が乖離している」という素直な声もありましたが、刺激的な議論を経てたどり着いたのは、「D&Iは必ず実現できる課題だ」という明るい展望です。社会のあり方は一気に大きく変わるものではありませんが、一人ひとりが希望を持って取り組み続けることで、確実にダイバーシティ社会実現が近づきます。その日に向かって着実に歩みを進めていく決意を、会場全体で共有できるイベントとなりました。

「三井ショッピングパーク ららぽーと」での取り組み、ママwithららぽーと

パパ・ママ・キッズ、みんなが居心地のよい空間へ

赤ちゃん休憩室・キッズスペース・授乳室・おむつ台の設置事例
(上段:ららぽーと福岡(福岡県)、下段:ららぽーと堺(大阪府)

三井不動産グループが開発および運営を手掛ける商業施設「三井ショッピングパーク ららぽーと」では、パパ・ママが楽しく安心して過ごすことができるよう、“もっとパパ・ママに優しいららぽーとへ。”をスローガンに、「ママwithららぽーと」の理念を掲げ、子育て世代が過ごしやすい空間を目指す施策を実施しています。

お子さま連れの方が使いやすい場所を目指し、おむつ替えや授乳のためのスペースだけでなく、フードコート内の小上がり席や遊具のある広場などを設け、お子さまとともに楽しめるよう工夫しています。

加えて、親子で楽しめるイベントやパパ・ママ向け講座等を積極的に実施することで、ソフトにおいても子育て世代が楽しめる施設運営に取り組んでいます。

PROJECT STORY
プロジェクトストーリー

誰もがD&Iに共感できる社会を目指して

左:三井不動産ビルマネジメント株式会社ビジネスソリューション事業推進本部 鎌田茉莉花
右:三井不動産株式会社ビルディング本部 山田祥子

国際女性デーに東京ミッドタウン八重洲で開催されたイベント「もっとチャレンジできる明日へ『Diversity&Career Forum』~企業が女性活躍と多様性の推進に取り組む理由~」は、三井不動産と三井不動産ビルマネジメントによる共同プロジェクトです。本イベントの企画と運営を担った、三井不動産株式会社ビルディング本部の山田祥子と三井不動産ビルマネジメント株式会社ビジネスソリューション事業推進本部の鎌田茉莉花に、イベントに込めた想いを聞きました。

お二人が普段担当されている業務や、これまでのイベント参画経験をお聞かせください。

山田祥子(以下、山田):三井不動産のビルディング本部で、オフィスビルに入居されているテナント企業様に向けたソフトサービスの企画や運営をしています。私は昨年に三井不動産に中途入社したばかりで、今回の国際女性デーイベントへの参画は、自分にとってまったく新しいミッションでした。

鎌田茉莉花(以下、鎌田):三井不動産ビルマネジメントのビジネスソリューション事業推進本部に所属し、テナント企業様のニーズに添ったイベントの運営を手掛けています。国際女性デーのイベントの運営に携わるのは今回が初めてですが、学生のときに女性の生き方や人権問題を学んだこともあって深い関心を抱いており、昨年は「参加者」の立場でイベントに参加しました。

今回のイベントのコンセプトは、どのような経緯で決まったのですか?

山田:実は私自身、女性活躍推進の動きに、当初もやもやしていたんです。例えば、女性管理職を増やそうという動きがある中で昇進のオファーを受けても、「女性だからといって優遇されているんじゃないか? 私自身ではなく、性別が評価されているんじゃないか」と疑心暗鬼になってしまったり。こういったもやもやを解決できるようなイベントになればいいな、という思いがありました。

鎌田:私も働く女性として、活躍を期待されていると肌で感じるのですが、果たして「女性活躍」とは何だろう、と悩むことがありました。女性といっても一様ではなく、自分の身の回りにいる人だけを見ても、置かれている状況はとても多様です。例えば独身で子どもがいない女性、まもなく結婚を控えている女性、子どもを育てている女性……そして、子育ては女性だけでなく、男性も担っています。昨年のイベントは、育児とキャリアの両立に悩む女性向けのテーマでしたが、様々な人が様々な悩みを抱えている中で、今年はどの悩みにフォーカスしたイベントにするか、非常に悩みました。

山田:現場の課題感をヒントにしたくて、テナント様にヒアリングを行いました。ダイバーシティ推進や女性活躍推進についてどのような取り組みを実施しているのか、どういった悩みがあるのかを聞きました。その結果浮かび上がってきたのが、「社内に制度は用意されているものの、なぜかあまり浸透しない」「他社の成功事例を参考にしたいが、どういう取り組みがなされているか情報が得られない」という課題です。それを聞いて、今年は個人ではなく、企業を起点に考えてみてもよいのではないかと思ったんです。「なぜこの会社にはこんな制度があるのか」というその裏にある想いがわかると、私をはじめ、様々な立場にある個人一人ひとりのもやもやも解消できるかもしれないと。そういう流れで、ビルのテナント企業でダイバーシティ推進に取り組まれている方を登壇者としてお呼びして、語っていただくことになりました。

登壇者はどのように選定されたのですか?

山田:BofA証券の林礼子さんは、以前三井不動産の研修に来ていただいたときの講演内容や、一度直接お話しした経験から、経営者として危機感を持ってD&I推進に本気で取り組んでおられる姿が印象深く、ぜひ来ていただきたいと思っていました。
また今後、東京ミッドタウン八重洲をD&Iに関する情報発信の場にしていきたいという思いから、新しくテナントとして入ってくださったダイキン工業の野間友惠さん、三井化学の安井直子さんをお呼びしました。そして、男性の参加者にとって共感できる内容にするためには、男性にも登壇していただくことが必要だと思い、本田技研工業の橋本昌一さんにお声掛けしました。

イベントで語られた登壇者のバックグラウンドが非常に多様で、印象的でした。

山田:林さんは三井不動産の研修でもご自身の人生を語ってくださいましたが、ほかのお三方のバックグラウンドを知ったのは、実は登壇をお引き受けいただいたあとのことなんです。イベントではかなり個人的な事情まで語っていただけましたが、そうした情報のほとんどは、公表されていませんでしたから。

鎌田:皆様の人生を知ったのは、登壇者決定後、全員での顔合わせ会でした。働く女性が気になるであろうポイントとして、「これまでどのような状況の中でキャリアを築いてきたか」「これまで、どのようなつまずきがあったか」をうかがいました。すると偶然、お一人ずつまったく違ったバックグラウンドをお持ちだということがわかったんです。

山田:もともと、登壇者の中で多様性を実現したいという想いがあったので、嬉しい偶然でした。どのような立場にある人が見ても、「この登壇者には、自分と似ている部分がある」と感じてもらえるイベントを目指していたからです。D&Iの取り組みを「腹落ち」させるには、共感が必要だと考えています。登壇者の方々は皆様、輝かしいキャリアを積まれていますが、その素晴らしいキャリアを聞くだけでは、なかなか自分ごとにすることができません。そんな方々にもつまずきがあったと知ることで、「もしかしたら自分が登壇者席にいる未来もあるかも」とポジティブに感じてもらえるのではないかと思いました。

鎌田:登壇者の顔合わせは今年初めて導入した取り組みでしたが、登壇者どうしでお互いどんな人かを知っていただく意味でも良い機会でした。顔合わせを通じて登壇者の方々の距離感もグッと縮まり、その結果イベントでも個人的なことをたくさん話していただけて、議論がより深まったと思います。

イベント参加者の反応はいかがでしたか?

山田:開催後すぐに大きな反響がありました。「非常に共感したので会社の上層部にも見てほしい」という意見など、嬉しい声をいただきました。当社内でも上層部の方にもイベントを視聴してもらったのですが、多様性に富んだ登壇者の意見に「こんな考え方もあるのか」という声も上がっていて、実施した意義を感じました。個人的にも、どの登壇者の方のお話にも共感できる部分があって、前向きな気持ちになれました。

鎌田:会場を見ると男性の方が2〜3割参加されており、これまでのイベントに比べて多い印象でした。「組織としてどうすべきか」というテーマにしたところ男性が増えたということは、男性管理職が多いという現状を反映しているのかもしれません。ただ今回、男性比率が多い企業における女性活躍推進のお話もありましたから、男性の方に多く来ていただけたのは嬉しいことです。個人的にも、間近で登壇者の方々のお話を聞いて、たった1時間半ですごく参考になりました。

これからの取り組みについて、展望や意気込みを教えてください。

鎌田:若手として、ロールモデルがなかなか見つからないという悩みがありましたが、今回女性登壇者のロールモデルを3例見られただけで、「こんなキャリアの歩み方があるのか」と非常に参考になりました。今後、登壇者と参加者がもっと気軽に会話できる、距離感の近い会も実現できると良いなと思います。また三井不動産ビルマネジメントでは、国際女性デーのイベント以外にも、様々な交流イベントを運営しています。それらのイベントをきっかけに、テナント様とのリレーションも、三井不動産グループとしてのリレーションもいっそう深めていきたいですね

山田:今回は私自身の悩みを反映させたテーマになり、自分と近い世代の人を中心に共感を得られたという感覚があります。今後は鎌田さんのように、社会人になって2、3年目の方の気持ちに寄り添うイベントも開催したいですね。そうやって縦にも横にも輪を広げながら、テナント様の経営課題解決のお手伝いができればと思います。特にD&Iの領域は広く、担当者の方が一人ですべてをカバーするのは難しい分野です。今回のようなイベントやサービスを積極的に提供し、ダイバーシティ推進に貢献していきたいと思います。

2年連続なでしこ銘柄取得

三井不動産株式会社は、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「なでしこ銘柄」に2年連続で選定されました。

「なでしこ銘柄」は女性活躍推進に優れた上場企業を選定するものです。女性活躍推進に優れた上場企業を「中長期の企業価値向上」を重視する投資家に紹介することにより、魅力ある企業への投資を促進し、各社の取り組みを加速化していくことを狙いとしています。

同銘柄の選定基準は今年度から大幅にリニューアルされ、企業が女性活躍の取り組みをどれだけ行っているかを評価するだけではなく、女性の活躍を推進する体制や施策が経営戦略ときちんと結びついているかどうかを重視して評価するようになりました。今回、当社の価値創造の根幹である「街づくり」に多様な価値観を取り込むための経営体制や施策がきちんと企業の経営戦略と結びついていることが評価され、選定にいたりました。
今回「三井不動産サステナブルSTORY vol.13」でご紹介した事例も、当社の「街づくり」に多様な価値観を取り込むための施策のひとつです。

三井不動産グループのSDGsへの貢献について

三井不動産グループは、「共生・共存」「多様な価値観の連繋」「持続可能な社会の実現」の理念のもと、人と地球がともに豊かになる社会を目指し、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)を意識した事業推進、すなわちESG経営を推進しております。さらに「重点的に取り組む6つの目標」に取り組むことで「Society 5.0」の実現や、「SDGs」の達成に大きく貢献できるものと考えています。

重点的に取り組む6つの目標

  1. 街づくりを通した超スマート社会の実現
  2. 多様な人材が活躍できる社会の実現
  3. 健やか・安全・安心なくらしの実現
  4. オープンイノベーションによる新産業の創造
  5. 環境負荷の低減とエネルギーの創出
  6. コンプライアンス・ガバナンスの継続的な向上