SUSTAINABILITY / ESG

Vol.17

2024.03.27

三井不動産グループの街づくりにおける
D&I推進のいま

三井不動産グループでは、ロゴマークの「&」に象徴される「共生・共存」「多様な価値観の連繋」「持続可能な社会の実現」の理念のもと、グループビジョンに「&EARTH」を掲げています。街づくりを通して、人と地球がともに豊かになる社会に向けた取り組みをお届けしてまいります。

今回は、現在グループで推進中のD&I施策に焦点を当てます。ハード・ソフトの両方を重視したお客様向けサービスと、その裏側を支える三井不動産社内向けの施策について、社員インタビューも交えてご紹介します。

多様なニーズをかなえる街づくり

ライフスタイルや価値観の多様化がますます進む中、三井不動産グループでは、様々なニーズをかなえる街作りに取り組んでいます。

よく働き、よく楽しみ、よく住まう——持続可能な街づくりには、その時代のニーズに合わせた対応や、新たな視点を取り入れていくことが重要です。

そこで、現在当社グループが推進しているD&I関連施策の数々を、「働く」「楽しむ」「住まう」「新しい事業」という4つの切り口から紹介します。

【働く】仕事と、介護や子育て等ライフの両立を支えるコミュニティづくり

「&BIZ」は、『三井のオフィス』に入居する数千社のテナント企業と数十万人のビジネスパーソンが集まり、ON/OFFの垣根を越えてつながるコミュニティです。会員に向けて、ダイバーシティや介護に関するセミナー、SDGsに関する親子向けイベントを開催しています。

育児と仕事の両立セミナー配信の様子

仕事をしながらご家族の介護をしているビジネスケアラーは、 2030年には介護者の約4割(約318万人)になるといわれています。誰にでも起こる可能性があり、いざそうなったときに仕事と介護を両立することは可能なのかと不安を抱く方も少なくないでしょう。 &BIZでは、そんな不安を取り除けるように、毎年2回介護セミナーを開催しています。ビジネスケアラーが介護で直面する不安を紐解き、仕事も介護も諦めないために知っておくと安心な介護の基礎知識や、支えとなる制度やサービスについて伝えています。

また2024年2月には男性育休をテーマとした「男性育休経験者にきく!育児と仕事の両立セミナー」を初開催。漠然と育児休暇取得に不安や悩みを抱えている未来のパパに向けた、“ちょっとためになる話”をお届けしました。

2023年7月には「SDGsを親子で楽しく学ぶ」をテーマに、東京ドームシティプリズムホールにて『三井のオフィス』の入居テナント約20社の協力による夏休みの小学生を対象としたSDGsについて学ぶ場を提供しました。ワークショップや子供向けセミナーなど様々な形で体験しながら楽しく学んでいただくことができる特別な2日間となりました。

そして2024年3月4日には、国際女性デーに合わせ、役職や業種が異なる3名のパネリストによるトークディスカッション「Diversity&Career Forum~企業の取り組みとワーカーの意識から紐解く、誰もが活躍できる社会を実現するためのヒント~」を開催いたしました。

&BIZではこうしたセミナーやイベントを通して、『三井のオフィス』のテナント企業およびそこで働くビジネスパーソンのワーク・ライフの充実をサポートするためのサービス提供を行っています。

【楽しむ】子育て世代に向けた取り組み

三井不動産グループが開発・運営する商業施設「三井ショッピングパーク ららぽーと」では、お子様がお腹にいるときも、大きくなってからも、パパ・ママが楽しく安心して過ごせる施設を目指し、“もっとパパ・ママに優しいららぽーとへ。”をスローガンに、「ママwithららぽーと」の取り組みを推進中です。

子育て世代が過ごしやすい空間を目指し、おむつ替えや授乳のためのスペースだけでなく、キッズスペース、フードコート内の小上がり席や遊具のある広場などをららぽーと内の各所に設置しています。こうした設備の充実により、より快適に安心してお買物を楽しんでいただけるようになりました。

また、Trim株式会社との協力体制のもと、完全個室のベビーケアルーム「mamaro™(ママロ)」を、ららぽーとをはじめとする10の商業施設に導入しています。これにより、ショッピングの合間でも、プライバシーを守りながら授乳・離乳食・おむつ替えなどの快適な赤ちゃんケアを実現できるようになりました。「mamaro™」は今後も導入を随時進めていく予定です。

そのほか、ららぽーとに生理用品の常備・無料提供サービス「OiTr(オイテル)」を導入したり、助産師が育児のお悩みに寄り添うイベント「ベビーケアステーション」を各施設で開催したりと、一人ひとりの悩みに寄り添う取り組みを続けてきました。

こうした活動が評価され、ららぽーとは一般社団法人日本マザーズ協会主催の「マザーズセレクション大賞」を2022年、2023年の2年連続で受賞いたしました。商業施設としては唯一の受賞であり、投票者の方々からは「子どもと一緒でも安心な場所です」「ベビー用品が豊富で大人も子どもも楽しめます」といったメッセージをいただきました。

【住まう】ハード・ソフト両面から豊かな暮らしを叶える取り組み

パークシティ高田馬場外観完成予想 CG

住まいにおいては、住宅事業のブランドコンセプト「Life-styling × 経年優化」のもと、多様化するライフスタイルに応える商品・サービスを提供するとともに、安全・安心で快適にくらせる街づくりを推進しています。特に最近では、働く世代の子育てをサポートするプロジェクトが進行中です。

「パークシティ高田馬場(2025年5月下旬竣工予定)」では、全国初の取り組みとして、三井不動産レジデンシャルと明光ネットワークジャパンが提携した学童保育サービスが導入されます。学童でのお子様を介したふれあいや、居住者様専用アプリを通して交わされる、子育て情報、ちょっとした困りごとの相談、使わなくなった子ども用品の譲り合いなどを通じて、居住者同士のコミュニケーションを活性化させるすまいの実現を目指します。

また、多拠点居住サービス「n’estate」では、山形県庄内エリア・長崎県五島エリアにある宿泊施設と連携して、未就学児の子育て世帯に向けた一時預かり保育サービス付滞在プラン 「n’estate with kids」 をご提供中。家族で地域を訪れ、保護者様がテレワークをしている間、お子様を近隣の保育園に通わせられます。お子様は地域ならではの体験に触れて、好奇心や感性を育む機会が得られ、大人は安心して働きながらも、いつもと違う場所でリフレッシュができる自由度の高い滞在を叶えることができるようになりました。

さらに、三井不動産レジデンシャルでは、社員の多様な働き方の実現に向けて、住宅販売センターにおける「日曜日定休」の本格的な導入を2024年度より開始します。住宅販売センターにおいては、土日祝日に勤務することが一般的ですが、販売においてデジタル技術を積極的に活用することで、お客様の満足度を下げることなく「日曜日定休」を導入していきます。

【新しい事業】都市部の孤育て課題の解決を目指す「YASMO」

三井不動産と株式会社ShareTomorrowは、民間企業初のママ・パパ用休息室併設の一時預かり保育「YASMO」として※、第1号拠点となる「YASMO武蔵小杉」を2024年1月15日にオープンしました。

※保護者向けの休息室を併設し、休息支援を行う保育施設は民間企業初(自社調べ)

目指すのは、日本の深刻化する少子化の課題である、都市部の「孤独な子育て(孤育て)」の解決と、子育てしやすい街づくりの推進です。三井不動産グループの事業提案制度「MAG!C」でこの新事業を提案したのも「孤育て当事者」の社員でした。

一時預かり保育サービスと休息するための個室を同一店舗内で提供することにより、お子様は工作やこだわりの遊具を使って楽しく遊び、パパ・ママはお子様のすぐそばで安心して自分の時間を過ごすことができます。

女性活躍推進に優れた企業として3年連続「なでしこ銘柄」に選定

三井不動産は、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「なでしこ銘柄」に、令和3年度より3年連続で選定されました。

「なでしこ銘柄」は昨年度から大幅にリニューアルされ、企業の女性活躍の取組の多寡を評価するだけではなく、経営戦略と結びついた女性活躍推進体制・施策となっているかを重視して評価されるようになりました。
今年度は、「共働き・共育て支援(男女問わない両立支援)」に関する項目が評価対象として拡充され、「キャリア形成支援」と「共働き・共育て支援」を両輪で行い女性活躍を推進する企業が「なでしこ銘柄」として選定されました。

自社組織の多様性を高める取り組みは、お客様の多様なニーズに応えるサービス提供にもつながります。今後も持続可能な未来の街づくりを目指し、社内におけるD&I推進を続けてまいります。

三井不動産グループでは今後も、ハードだけでなくソフトも含めて時代や人々のニーズに合わせたサービスを提供し、一人ひとりのくらしに寄り添い続け、住み続けたいと思われる街づくりに貢献してまいります。

PROJECT STORY
プロジェクトストーリー

自分自身の多様なキャリアを活かした一人ひとりに寄り添うD&I

人事部D&I推進室 中安 理恵

三井不動産グループでは、社内でのD&I推進に積極的に取り組んでいます。自律的な働き方のできる制度、階層別や手挙げのさまざまな研修、メンター制度等の施策推進のほか、社内SNSでの子育て情報交換など、多様な人材が活躍できる環境整備や文化醸成に取り組んできた三井不動産のD&I推進室の中安理恵に話を聞きました。

はじめに、中安さんのご経歴を教えて下さい。

人事部D&I推進室 中安理恵(以下、中安):大学で工業化学を学び、大学院修了後、外資系メーカーに勤めました。その会社で携わったのは、赤ちゃん用紙おむつの生産技術です。紙おむつを大量生産する製造機械の開発や、海外の工場の立ち上げなどに関わっていました。いわゆる「技術系」の仕事ですね。肩書も「エンジニア」で、作業着を着て鉄板入りの靴を履き、現場に行く時はヘルメットをかぶって働く日々でした。

そのとき私は兵庫県、夫は東京都に住んで「遠距離婚」をしていたのですが、妊娠を機に退職して東京に引っ越し、専業主婦をしていました。その後、子供が1歳になったときに働きたい気持ちが芽生え、就職活動をして、三井不動産に入社をしたという流れです。

外資系の技術職、専業主婦、そして三井不動産と、多様なキャリアを経験されていますね。

中安:そうですね、それぞれの場所でたくさんの経験を得ました。例えば生産技術の世界では、女性は本当にマイノリティでしたし、外資系企業において日本人であることもマイノリティでした。グローバルチームではもちろん、アジアチームの中でも自分は「少数者」でした。
あらゆる言葉と文化を持つ国の人が集まって一つのプロジェクトを進める、その環境の中で、どうやって共通認識を持つのかということを学びました。

専業主婦時代はいかがでしたか。

中安:「子供が同じ年齢」というだけでつながることができたメンバーと一緒に、さまざまなサークル活動をしました。

パティシエの友達にシフォンケーキ講座を開いてもらったのですが、その講座で、生地をちょっと泡立てすぎてしまったことがありました。するとそこにパティシエの子がパッと来て、「あー、ちょっとやりすぎちゃったね」なんて言いながらさっと材料を加えて、「はい、リカバリー完了!」って直してくれて、プロの姿を見ました。みんな初めての子育てですごく自信がない中、自分が自信を持っているところを披露できた、そういう場面だったと思います。それぞれの得意なことを披露する、そのこと自体がすごく、その人の自信になるのだな、と思いました。

今、三井不動産で「それぞれの持てる力を最大限発揮する」ことを目指して取り組む中で、よく思い出すのが「それぞれ得意分野が違うからね」というママ友の言葉です。私はほかのママのようにパン作りなどは得意じゃないし、子供のワンピースを作ることもできない。持ち寄りパーティーをすると、みんなのお料理のレベルの高さに落ち込んだりもします。でもある日、ママ友が「理恵ちゃんには理恵ちゃんのできることがあるから」と言ってくれて、そういった経験の一つひとつが、今の仕事につながっていますね。

そこから再び働くことにしたきっかけは何だったのでしょう?

中安:人それぞれ得意分野があるとはいえ、やはり専業主婦界の中では自分は落ちこぼれで、自信を持てませんでした。そんな中、育休復帰するママ友が増えてきて、また働きたいなと思うようになりました。私の場合は、どちらかというと仕事のほうが得意だったのです。

子育てしながら働いていると、みんな「大変だね」って言ってくれますが、私としてはチームで成果を出して、頑張ったら認めてもらえる仕事という場所があって、本当にありがたいな、と思います。

あとは個人的な話ですが、私自身は専業主婦を経験した後に、今三井不動産で管理職として働けているという事実があるので、「いったん仕事をやめたけれど、また働こうかな」と悩んでいる人がいれば、「全ての経験が役に立ちますよ。」って背中を押してあげたいなと思います。

三井不動産に入社されたあと、社内やグループ内での女性活躍に関する取り組みについてどのように感じていますか?

中安:社長がコミットして「重要な経営課題として推進」と発信してから、一気に取り組みが進んだと思います。そのように進めてきたこの2〜3年の活動が認められて、3年連続なでしこ銘柄に選定されたり、皆様からの評価やお問い合わせをいただいたりしているのではないでしょうか。

でも、先進的というわけではないと思っています。元々不動産業自体が男性社会でしたし、三井不動産でも、過去には、社員といえば新卒入社・男性で奥さんは専業主婦、というケースが多数を占めていて、会長の言葉を使うと「同質性の高い会社」でした。

よく世の中で注目される指標の女性管理職比率は、2015年時点で1.5%、2023年でやっと7.7%とまだ1割にも満たない数字です。最近の女性採用比率は4割以上ですが、女性総合職の年齢構成が20歳代~30歳代主体のため、管理職層に女性が増えるにはまだ途上だなと思います。女性管理職比率は、2025年に10%、2030年には20%を目指して取り組んでいます。

「女性活躍推進」を掲げると「なぜ女性だけが対象なのでしょうか?」という疑問が出てくるかもしれません。でも、女性にフォーカスして取り組みを進めることで、みんなが働きやすい環境づくりに繋がっていくと思います。

例えば社内の「組織知化」の動きも女性活躍推進の取り組みをきっかけに進み、プロジェクトの経験者がみんなに経験を語る会、本部長が本部の歴史を語る会などの実施につながりました。また、同じ流れで「自分の本部にいるメンバーを知る交流機会を作ろう」など、女性に限らず、みんなが働きやすい施策が生まれています。

なでしこ銘柄を連続で取得されていますね。

中安:特に令和4年度は選定基準が厳しくなり、1業種1社、全部で15社しか選定されない中で選んでいただいたのは、誇りに思っています。数字そのものは高いわけではないのですが、認められた部分が2点あります。

まずは、トップの強いコミットメントがあることです。経営層で丸一日かけてD&Iを議論したほか、定期的に議論の場を設けています。また、経営層の言葉でD&Iについて動画メッセージも発信しています。昨年度、社長を皮切りに、副社長と本部長、役員クラス10名がリレー形式で動画を発信し、植田社長も発信しています。

もう一つは、各組織での浸透を図っていることです。各組織の本部長が「自分たちの本部でなぜD&Iを推進するのか」を言語化して発信したのです。「D&Iってなんとなくいいことだろうけど、自分に何か関係があるんだっけ?」と思いがちなところを、「今このビジネスを組織で進める上で本当に必要なのだ」という形で伝え、その組織に合った施策を考えて実行している。そういった部分が評価されました。

三井不動産としてD&Iを積極的に推進する中で、変化を感じる部分はありますか?

中安:定量データでは、アンケートの数字に改善が見られます。「キャリアのステップアップを考える上で不安要素はありますか?」という質問に対して「ない」という肯定的回答が増えています。

この質問に「ある」と答えた人に「その不安要素は何ですか?」と問う項目で「能力やスキルに自信がない」と回答した人の割合を見ると、女性のほうが多かったのです。この状況を改善するためにいろいろな施策を始めたところ、「自信がない」という回答が減りました。

ほかに、「管理職になると責任が増える、働き方が縛られる」ことを不安要素とする回答も減っていて、これは施策を進めている効果なのではないかと思います。

そういった不安を減らすことで、昇進に前向きになる方も増えそうですね。

中安:三井不動産には「一人ひとりを大事にする」という文化が根付いています。例えば、女性管理職層とその手前の層に対しては、一人ひとりの育成計画を作っています。

まずは直属のグループ長と計画を作ります。「これまでの業務経験」「将来のキャリアイメージ」「キャリアに影響のありそうなライフステージの変化」といった内容を書き、経験や働き方の制約を踏まえた上で、自分の強み弱みを分析し、中長期的なキャリアを見据えた今年のアクションプランを立てていきます。

このプランは、部門長や役員クラスの本部長にも共有され、期待についてのコメントを記入してもらえるので、当事者からも「部門長や本部長にも見てもらえていることがモチベーションになった」という声をもらっています。

また、特に異業種から来たキャリア採用の方で「前職ではすごく活躍していたのに今は役に立てていない」と感じているケースでは、これまでの経験や自分の強み・弱みを改めて表明することで、「前はこんなことをしていたなら、今後はこういうことに挑戦してみる?」と自分の過去を肯定され、それが仕事につながる機会にもなっているようです。

社員一人ひとりに寄り添う文化があるのは素晴らしいですね。

中安:他社さんからも評価いただく施策として、「年に1回、人事部が全社員一人ひとりと、1対1の面談をする」というものがあります。全社員で2,000人規模ですが、一人ひとりの話を聞くと、直属の上司との1on1では出てこない悩みを聞くことができます。その中には上司との関係についての悩みもあれば、「子供の体が弱くて」「介護が大変で」といったものもあります。悩みはとても多様ですが、こうして一人ひとりが人事部を信頼して話してくださるからこそ、必要な対応ができている部分があります。

中安さんは社内SNSで子育て情報交換グループを立ち上げて、情報交換や交流会もしているとか。

中安:社内SNSのViva Engageで子育て情報交換グループを立ち上げ、110人以上の参加者がいます。

子育て情報交換グループを始めたきっかけは、2010年の入社当時、人事部に来るとは思ってもいなかった頃に参加した「社内ママランチ会」です。社内のとある方が企画してくださったイベントなのですが、そこで出会った人たちが、子育てのことはもちろん、その後の仕事でもすごく親身になってくださって。業務についてちょっと聞きにくいことも気軽に聞けるような関係ができたのです。そういうつながりを作りたいなと思って立ち上げました。

病児保育、学童、時短のためのお薦め家電、家事代行など、さまざまな情報を交換しています。世の中に情報が溢れている中、社員からのリアルな口コミは信頼できます。まだ知り合いじゃない社員の投稿にコメントをつけるケースもあり、リアルで会った時に「あの時の」という会話になったという話も聞きます。昼休みの交流会の募集もしています。

子育ての話題だけでなく、「自分の部署でファミリー向けサービスを検討しているので、インタビューに協力してください」などの投稿もあり、仕事にも役立っています。

D&Iの取り組みによる変化が社内外に良い影響を与えている部分はありますか?

中安:注目されやすいのはやはりサービスの部分です。例えばららぽーとだと「この通路の幅はベビーカーだと通りにくいから広くしよう」「フードコードに座敷がないと子連れは利用しづらいよ」「授乳室って個室が並んでいることが多いけど、できればママ友と一緒に喋りながら授乳したい」というように、社員の経験が実際のサービスに活きる場面はたくさんあります。

ほかにもロジスティクス施設の中に礼拝室や多国語サインを設置するなど、多様な視点を活かした例は多いです。サービス以外にも、企業価値の向上や「入社したい」と思ってもらえる会社になること、社内業務の効率化や組織知の共有が進むこと、多様な社員の相互理解が進んでチームプレーの意識が高まることによる生産性向上、高いエンゲージメントの継続など、良い影響があります。

多様な価値観を持った社員全員がお互いをリスペクトして、自由に意見を言えて、チームとして新たな価値を生み出し、お客様に求められる商品・サービスを提供できる、という状態がゴールだと思います。

三井不動産は街づくりを通して持続可能な社会の実現を目指しています。ニーズや価値観が多様化するなか、「人が主役」の街づくりをするために、私たちも多様であることが必要です。社内で自由に発言できないとサービスも偏ったものになり、お客様の求めているものと異なるものを提供してしまう可能性があります。顧客志向で事業を進める三井不動産だからこそ、自分たち自身が多様な価値観を認め合うことが大事だと考えています。

今後社内外でD&Iの取り組みを進めていくにあたって、どういったことが必要だと思いますか?

中安:これまでたくさんのD&I先進企業にヒアリングに伺う中で、多くの企業が「D&Iを進めれば進めるほど、1社だけじゃどうにもならない、社会全体が変わらないといけないと気づく」とおっしゃっていました。例えば女性社員が働きやすい環境を自社で整えても、その配偶者の会社で長時間労働が当たり前になっていると、結局その女性の状況が改善されなかったりします。

ですので、社会が全部変わるように企業同士も連携して、良い事例やロールモデルを共有していく、そういう取り組みが大切だと思います。だからこそ私自身も、社外からのお問い合わせにはできる限り対応して、輪を広げていこうとしています。自分たちが手探りでトライしていることをお伝えして、他社さんの取り組みを伺って、情報交換しながらより良い形を目指し、社会全体が変わっていくことが重要だと思っています。

三井不動産グループのSDGsへの貢献について

三井不動産グループは、「共生・共存」「多様な価値観の連繋」「持続可能な社会の実現」の理念のもと、人と地球がともに豊かになる社会を目指し、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)を意識した事業推進、すなわちESG経営を推進しております。さらに「重点的に取り組む6つの目標」に取り組むことで「Society 5.0」の実現や、「SDGs」の達成に大きく貢献できるものと考えています。

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重点的に取り組む6つの目標

  1. 街づくりを通した超スマート社会の実現
  2. 多様な人材が活躍できる社会の実現
  3. 健やか・安全・安心なくらしの実現
  4. オープンイノベーションによる新産業の創造
  5. 環境負荷の低減とエネルギーの創出
  6. コンプライアンス・ガバナンスの継続的な向上