当社グループは創立以来、時代の変化をチャンスと捉え、多くの挑戦を続けてきました。
高度成長期には埋め立て事業で土地を創り出し、それが発電所や製鉄所となり日本の工業化を後押ししました。また、日本初の超高層ビル「霞が関ビルディング」を皮切りに、オフィス環境を向上させることで企業活動を支えてきました。
物流施設事業においては、伸長するEコマースや物流効率化を通じ、産業を支えています。住宅や商業施設、ホテル・リゾート、東京ドームをはじめとするスポーツ・エンターテインメント事業を推進し、より豊かな暮らしを提供、人々のクオリティ・オブ・ライフを高めてきました。
そして、新たな時代の価値創造を加速するためには、自らを変革し、進化させていくことが不可欠と考え、2024年に「経営理念」を再定義しました。
私たちに受け継がれているGROUP DNA、「&マーク」の理念は、「共生・共存・共創により、新たな価値を創出する、そのための挑戦を続ける。」ということです。
私たちが果たしたい使命、すなわちGROUP MISSIONは、「& EARTH 自然とともに、未来をともに」「& INNOVATION 創造とともに、輝きをともに」「& PEOPLE 人々とともに、感動をともに」です。地球の未来を想い、イノベーションにより燦然と輝き、人々に感動を提供し、幸せにする、ということを表しています。
この経営理念を凝縮し、私たちが進む方向性を示したものが、コーポレートメッセージ「さあ、街から未来をかえよう」です。不確実性が高く、先行きの見通しづらい社会においても、より良い未来に向け、様々なステークホルダーとともに、街から「未来をかえていく」という想いを込めています。
そして、私たちの企業ロゴは、GROUP DNAにも掲げている「&マーク」です。現在の「&マーク」は着物の帯で一筆書きにしたイメージのデザインで、しなやかさと強さを表すだけではなく、当社ルーツである呉服商の「越後屋」にもつながっています。
こうした想いを踏まえて、当社グループの重点的に取り組む課題「GROUP MATERIALITY」として「産業競争力への貢献」「環境との共生」「健やか・活力」「安全・安心」「ダイバーシティ&インクルージョン」「コンプライアンス・ガバナンス」を定めました。
我々はハードな建物だけではなく、街づくりを通じて、「場」や「コミュニティ」の提供を行う、いわゆる「プロデューサー」的な会社であると考えています。そして、そこに集う人々や企業に、「イノベーション」を起こすお手伝い、「付加価値」を高めるお手伝いをし、社会に貢献することで、ともに成長してきました。このことから、私は、当社グループは「不動産デベロッパー」の枠を超えた、いわば「産業デベロッパー」という「プラットフォーマー」である、と考えています。
ライフサイエンス分野におけるコミュニティ構築を担う会員組織「LINK-J」は活動10年目を迎える今年に会員数が1,000を超える見込みであり、年間1,000回超のイベントを開催しています。宇宙ビジネス領域における会員組織「クロスユー」も、立ち上げから3年で会員数300超に発展しています。
そして2025年7月には半導体産業を活性化する新たな基盤として「RISE-A」が設立されました。
AI・半導体分野は、デジタル社会を支える国家戦略の要として注目される一方、サプライヤーとユーザーの連携や人材不足といった課題も抱えています。私たちはそのハブとなることで、産業の成長を支える新たなエコシステムづくりに取り組んでいきます。
私たちが街づくりにおける環境との共生を通じて目指す姿を広く社会の皆様に知っていただくために、街づくりにおける環境との共生宣言「& EARTH for Nature」を策定しました。
不動産開発は、都市や社会の成長を支える一方で、環境や地域に対して大きな影響を与える行為でもあります。当社グループはこれまでも、街づくりの過程で環境に配慮した取り組みを積み重ねてきました。その成果は、さまざまなプロジェクトに形として残されています。
「& EARTH for Nature」が目指すもの——それは、日本橋はもちろん、東京、全国へと、豊かな環境のネットワークを広げ、次世代へとつないでいくことです。
当社グループは「環境」を、自然と人・地域を一体で捉えています。街づくりは人の営みの舞台であり、住まい、働き、憩う空間には緑や自然との共生が欠かせません。そして、そうした自然環境を未来に引き継いでいくためには、人の積極的な関わりも必要です。
たとえば、北海道に保有する約5,000haの社有林では、植える・育てる・使うというサイクルによって“終わらない森”創りに取り組んでいます。 また、東京ミッドタウンでは、緑地再生によって希少な鳥類が飛来するようになるなど、生物多様性への貢献が確認されています。
創業の地・日本橋では、再開発にあたり、平安時代よりこの地に鎮座する福徳神社の社殿を再建するとともに、1,000㎡超の「福徳の森」を整備するなど、地域の歴史や自然との共生を大切にしています。
こうした人・地域と自然が互いに支え合うかたちを、私たちの街づくりは目指し、実践しています。
当社グループはこれまでも、「街づくり」を通じて、社会的価値と経済的価値の両立に挑戦してきました。自然と人・地域を一体で捉え、今ある環境に配慮しつつ、それらを未来の世代につないでいくために、豊かな「環境」を実現する街づくりこそが、社会的価値の最大化につながります。そしてその価値を経済的価値、すなわち資本の創出につなげ、再び環境のネットワークの拡大へと投資していく。こうした価値創造のサイクルをまわし続けることが、私たちが果たすべき責務であると考えています。
また、地球規模で深刻化する気候変動への対応は、私たちにとって喫緊の課題です。脱炭素社会の実現に向けて、2030年度までに温室効果ガス(GHG)排出量を2019年度比で40%削減し、2050年度にはネットゼロを達成することを目標とした行動計画を推進しています。
その実現に向けて、2023年秋からはすべての新規プロジェクトにおいて建設時のGHG排出量を算出するマニュアルを適用し、削減計画の策定と提出を義務づけました。サプライチェーン全体との連携を深めながら、業界全体の排出量削減に貢献していきます。
コロナ禍によってさまざまなサービスのデジタル化が進み、リモートワークなどデジタルの有用性が認識された一方で、リアルの重要性も再認識されたと感じています。人々はデジタルでは得られない「感動体験」や「五感で感じるリアル体験」に、より高い付加価値を見出していくと考えます。スポーツやエンターテインメントといったリアルならではの価値を追い求めるとともに、リアルとデジタルを組み合わせ、多様化するお客様のニーズに合った体験価値を提供することが求められていると考えます。
2024年4月に商業施設事業と親和性の高いスポーツ・エンタメ事業を融合し、新本部を設立し、スポーツ・エンタメによる感動体験のシナジー効果を強化しています。2024年5月に開業した船橋の「Lala arena TOKYO-BAY」は、バスケットボールの千葉ジェッツのホームアリーナとなっていますが、コンサートなどを含め、土日はほぼ100%の稼働と順調なスタートとなり、ライブ開催日に隣接する「ららぽーと TOKYO-BAY」関連イベントを行うことで、ららぽーとの来館者数が通常より30%増加するケースもあるなど、周辺エリアとの相互送客も進みました。
また、東京ドームで行われるライブのアーティストのグッズを、当社のECサイトである「& mall」で販売した際には、売上の伸長はもちろんですが、数時間で約1万人の新規登録会員を獲得しました。この会員の多くは、当社の商業施設事業だけではリーチが難しかった、Z世代が占めており、早速、期待通りの「シナジー効果」が発揮されていると言えると思いますし、商業施設とスポーツ・エンタメの持つ可能性は無限大と感じています。
働く人、訪れる人、そして住まう人——都市で暮らすすべての人々にとって、安心して過ごせる環境と、災害への備えが整った街は欠かせません。
当社グループは、大規模災害に備える堅牢な建物計画や耐震設備に加え、街区全体に非常用電力を供給するエネルギーセンターの設置など、ハード面の強化を進めています。
あわせてソフト面にも注力しており、日常的な防災意識の醸成や、地域住民やオフィスワーカーと連携した防災訓練、東京消防庁などと協力した解体予定建物での訓練を継続的に実施するなど、都市全体のレジリエンス向上を支えています。
すべての人が自らの力を発揮し、いきいきと活躍できる環境の実現は、社会全体の豊かさにつながります。
社員との一体感を醸成し、当社を「One Team」とするために、社長就任後の2年間で計84回の社内ミーティングを開き、全社員と胸襟を開いて語らいました。
当社の特徴は、事業規模から想像される以上に少ない社員数で、質の高い成果を生み出している点にあると考えていますが、このコンパクトな組織体制だからこそ、風通しの良い環境を自然と作り出すことができていると考えています。
従業員の皆さんとの対話を通じ、私自身、改めて当社社員の優秀さ・多様性・エンゲージメントの高さを感じることができました。多様な人材の活躍を支え、グループの力を結集させるOne Team型組織は、ミクストユース開発のように複雑かつ高度な事業にも柔軟に対応する原動力となっています。
コンプライアンスとガバナンスの徹底は、企業の信頼と持続的な成長を支える基盤です。当社グループでは、法令遵守はもちろんのこと、社員ひとり一人が高い倫理観と自律的な行動意識を持つことを重視し、継続的な取り組みを進めています。
また、経営の健全性・透明性・効率性を高めるため、コーポレート・ガバナンスの充実にも注力しており、不断の見直しと改善を通じて、より強固な経営体制を構築しています。2024年度、社外取締役を1名増加させたほか、任期を1年とするなどの改善を行いましたが、2025年度においては、取締役の報酬制度についてグループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」のKPIと連動させる形へと改善するとともに、取締役会構成についても、社内から女性取締役を1名推挙し、株主総会においてご承認をいただきました。
昨今、特に欧米各国においては、ESGに対する多様な意見や捉え方が顕在化し、サステナビリティへの取り組みをめぐる議論も一層活発になっています。しかし、私たちは、事業を通じた企業価値の向上とともに、社会的価値の創出に本気で取り組むことが、持続可能な社会への貢献であると確信しています。社会の課題を起点とし、ステークホルダーの観点も踏まえた6つの「GROUP MATERIALITY」を通じて「社会的価値」と「経済的価値」の創出を、両輪で実現していきます。