OUTSIDE DIRECTOR DIALOGUE

社外取締役対談

社外取締役対談社外取締役対談

取締役会での実効性向上に向けた課題・取り組み

取締役会の雰囲気や、その実効性についてどのように感じていますか。

野木森 取締役会は、オープンな雰囲気ながらも規律もしっかり守られていて、透明性が高く活発な議論ができる土壌と緊張感のある運営という双方の面で整備されているという印象です。私自身もオープンに発言させていただいています。
河合 私は2021年6月に社外取締役に就任しており、就任時、不動産業界の経験はありませんでしたが、取締役会前の丁寧な事前説明のおかげで理解を深めることができました。取締役会では十分な質疑応答の時間が確保されており、質問に対しても担当者のみならず、社長、会長などから真摯に回答していただいております。社外取締役の客観的な意見を真剣に受け入れる雰囲気があることは、取締役会の実効性という点でも重要です。また、取締役会にて審議した再開発プロジェクト等について、その開発エリアや物件を視察する機会も設けていただき、当社の街づくりへの理解を深めることができています。このような視察を通して、当社の街づくりはリアルとデジタルを組み合わせたイノベーティブなものであり、かつ、生活に近いゆえに面白く、明るい未来を感じさせるワクワクするビジネスであると感じています。
野木森 私も2017年に社外取締役に就任した当時、自分自身が個人で経験した不動産の仲介や販売とは違い、当社においては多岐にわたるステークホルダーとともに、スケールの大きな「街づくり」をベースにした事業を進めている点に驚きました。また、当社には新しいことに積極的に挑戦しようという風土があると感じています。これはコーポレート・ガバナンスにも表れており、就任当時からオープンな会社だという印象がありましたが、オープンネスの度合いはこの数年でさらに進化していると感じます。取締役会議長は取締役会の進行等の役割に加え、自身でも質問をされ、かつ、他の取締役にも質問を促すなど、取締役会で活発な議論が交わされるような進行をされています。また、議案説明の後に社長が補足で説明される場面も多くあります。そうしたところからも、経営者が自ら責任を持ってガバナンスの強化を図ろうとする姿勢が窺えます。
河合 取締役会の議案へは、社外取締役の意見もよく反映していただいていると思います。取締役会の実効性評価において出た実効性の向上に関する意見に対して、積極的な改善に取り組まれており、良いサイクルが回っていると思います。社外取締役の意見を、有識者、客観的な経営者視点から出てくる意見として経営に取り入れており、私も含め、社外取締役の取締役会における役割・機能が十分に果たせていると思います。
野木森 おっしゃるとおり、実効性評価に対する改善は確実に進んでいますね。また、世間動向や外部機関等からの要請や意見に対して真摯に向き合い、当社として必要なことは変えていこうという姿勢があります。
河合 コーポレートガバナンス・コードや非財務情報の開示要求等に対して、当社としての対応が必要かきっちり整理したうえで、対応すべきものは長期的にでも必ず対応していくという姿勢があり、そこを高く評価しています。

脱炭素推進に関する課題・取り組み

昨年11月に「脱炭素社会実現に向けたグループ行動計画」を策定しました。
この取り組みや策定プロセスでの議論などをどのように評価していますか。

野木森 脱炭素に対する関心が高まるなか、当社は脱炭素への対応を迅速に進めてきました。「脱炭素社会実現に向けたグループ行動計画」の策定にあたっては、その内容について取締役会として議論を重ねるとともに、策定した内容を速やかに対外発表しました。その後も、第三者機関の脱炭素に関する認証取得を進めたり、社内の推進体制強化を目的としてサステナビリティに関する専門本部を設置するなど、矢継ぎ早にさまざまな施策を行っています。そして、それらの施策を積極的に社外へ発信しており、脱炭素に対する当社の取り組み姿勢をアピールできたのではないかと思います。
河合 私がスイスにいた2000年代初頭の日本は、欧州に比べて環境への取り組みは遅れていた印象でしたが、ここにきて、脱炭素に向けたコミットメントと企業の対応がすごいスピードで求められています。当社の脱炭素の取り組みについては、社外役員ミーティングにて、不動産事業ならではの脱炭素に関する特徴も交え、非常に丁寧でわかりやすい説明を受けており、その後、取締役会にて議論しております。この議論の中で、私自身も非常に複雑な将来予測についても理解を深めることができました。
野木森 当社では数値目標もきちんと出していますが、特に街づくりという大きなテーマの中では、そこに関わる社外の関係者の方々も巻き込んだ取り組みが求められます。街づくりにおいて、当社は不動産会社としてプロジェクトを中心となって進める立場ですが、建設業界やその委託先企業まで幅広い関係者が一体となってプロジェクトを推進するなかで、当社の脱炭素に向けた考え方を関係者全体に浸透させ、実行していただくことは容易ではありません。
河合 建設業界等も環境課題解決に向けた取り組みを積極的にされていると思いますが、当社の脱炭素の目標達成に向けた努力をしていただくと、コストアップにつながる部分もあり、それがエンドユーザーにも転嫁される可能性があります。経済合理性を重視する傾向の強い日本人が、環境配慮という価値に対して追加でお金を払う感覚があるのか難しい問題ですが、当社の取り組みは高く評価したいと思います。
野木森 確かに日本では経済合理性を追求する感覚は強いと思いますが、やはり、環境配慮の価値については時間をかけてでも認識していただく必要があると思います。1社だけで行うのではなく、世の中の流れとしてそういう方向に持っていくことが必要だと思います。

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女性活躍推進に関する課題・取り組み

「ダイバーシティ&インクルージョン推進宣言」を行い、女性活躍という取り組みでは、女性管理職比率を2025年に10%、2030年には20%、女性採用比率も40%という目標を掲げています。
この取り組みの推進状況について、どのように評価していますか。

  • 河合 経営トップがダイバーシティ&インクルージョンにコミットし、数値目標も出している点を評価しています。特に女性の活躍推進を重要な取り組みとして位置付けて、さまざまな施策を展開しています。例えば、女性社員により組成されたワーキンググループ等により、女性活躍に関する課題抽出を行うとともに、確認された課題に対しては、上司や職場の意識改革を目的としたアンコンシャスバイアス研修を開催するなど、しっかりと対応をしている印象を受けています。また、当社でも男性の育児休業を促進するなどの取り組みを進めていますが、ダイバーシティ&インクルージョンの推進においては、女性だけにスポットを当てるのでなく、性別に関わらずすべての社員が働きやすい環境づくりに向けて取り組むものだと考えています。また、当社の仕事には生活者として人生を楽しむことやクリエイティビティが求められます。育児をしている時間、旅行、ショッピング、レストランで食事している時間等、日常の経験が消費者ニーズの把握につながり、さらに日々のさまざまなシーンのなかでクリエイティブな発想が生まれる可能性もあります。そう考えると、日々の暮らしの場所を提供している不動産業界は、女性目線の発想も非常に重要であり、もっと多くの女性が活躍していても不思議ではないと思います。引き続き、女性活躍に関するさまざまな施策を推進するなかで、当社の数値目標をクリアしていただきたいと思います。
    野木森 不動産事業の中でも、当社の手がける街づくりは非常に幅が広いため、女性の活躍の場は多いはずだと思います。一方で、不動産業界においては、過去、女性採用数が少なかったという経緯から、当社においても中間層における女性社員数が少なくなっています。このような状況下で、当社の女性管理職比率目標は決して低いものでないと考えていますが、達成に向けて、引き続き女性活躍推進に関する意識改革等を進める必要があると考えています。また、女性の採用比率目標に関しては、過去と比較しても業界全体や当社に対するイメージが向上しており、かつ当社は就職活動を行う学生からの人気も比較的高く、良い人材を採用しながら、女性採用比率目標を達成することは、難しいことではないと考えています。
    河合 女性従業員支援も手厚く、女性管理職に対して自身の上司以外で関連性のある部門の部門長をメンター・スポンサーとしてつけ、相談役・助言を行う立場としてフォローするとともに、他社との交流等、人材成長の機会につながる場に連れていくことも出始めているようですね。
    野木森 男女関係なく、社外交流等も含めて多様な経験をさせることは、人への投資という意味で必要なことですよね。ダイバーシティというとどうしても女性にフォーカスが当たってしまいますが、ジェンダー以外の切り口でのダイバーシティも同じように進めていかなければいけません。当社は、社員同士の仲が良い会社であり、ある意味では、社員間に均一的な側面があり、阿吽の呼吸や以心伝心により仕事が進められているシーンも多いと考えられます。これをなくす必要はありませんが、ダイバーシティ&インクルージョンの推進のためには、コミュニケーションの在り方も変えていく必要があると思います。
    河合 社員間のコミュニケーションを向上させることで、意思疎通などの問題も減っていくということですね。マネジメントをするうえでは、均一な組織の方が効率的な側面もありますが、イノベーションを創出するには違う環境で育ち、意見や考え方の異なるダイバーシティも必要だと思います。
    野木森 社内広報を見ていても、社長が前面に立ってダイバーシティ&インクルージョン宣言にコミットするような記事があります。そういったシーンを見て、社員も重要性を感じ取ると思いますので、トップからの発信が大事ですよね。
    河合 もちろんトップの姿勢も大事ですね。加えて、中間管理職をはじめとした会社全体として、意識を変えていかなければいけないと思います。
  • 野木森 雅郁

    野木森 雅郁東京大学薬学部卒業、藤沢薬品工業株式会社に入社。2006年よりアステラス製薬株式会社の代表取締役社長、2011年より同社代表取締役会長を務める。2014年から2016年まで日本製薬団体連合会(日薬連)会長を務めた後、2016年6月アステラス製薬を退職。2017年6月より当社の社外取締役に就任。

グローバル展開企業としてさらなる飛躍を遂げるために

「VISION 2025」では連結営業利益に対する海外事業比率を30%程度にするという目標を掲げていますが、当社の現状のグローバル展開についてはどのように評価していますか。

  • 野木森 グローバル展開は着実に進んでいる印象です。「グローバル」は言葉で言うほど簡単ではありません。不動産事業はその土地に根差したビジネスであり、日本の大きな会社だからといって、海外でグリーンフィールドからいきなり事業を手がけられるものでもありません。当社では、不動産取引や不動産開発においてパートナーと提携して進めることが多いですが、一方で、「ららぽーと」のような当社独自のノウハウが必要となる開発においては、現地のパートナーと組まずに自社で進める場合もあります。私はこの戦略はとても良いと思っています。
    河合 私もこの戦略は評価しています。海外のパートナーと提携する場合は、環境配慮型の建設ノウハウ等、海外の先進的なデベロッパーのノウハウを当社内に取り込んでいくことも期待できますね。
    野木森 海外展開エリアの観点では、事業機会は世界のあらゆる国で転がっているはずですが、国が違えば異なるリスクも出てきますから、急いで一足飛びに全世界に向けて出ていく必要はないと考えています。
    河合 不動産事業の投資は、証券投資等と比べてすぐに引き揚げることができませんので、その地域の安定とか政治的安定、経済的安定等をしっかり見極めて長期的な視点で投資することが必要ですね。ロシアによるウクライナ侵攻等、世界情勢はさまざまに変わりますから、多少利益率が低くなっても、リスクの低い先進国への進出が安全で良いように思います。新興国は今後、食糧問題や金利、通貨下落などで経済面での混乱も予想され、リターンが高くても、その分リスクも高いということになるので難しい経営判断が求められます。
    野木森 おっしゃるとおり、当社の事業は先進国での開発が多く、どこの国に進出するにしても、ターゲットとなる都市はその国の首都等が中心になると思います。海外には、当社の街づくりのようなコンセプトを基にした開発例はあまりなく、当社が海外展開を進めていくと、将来的には海外の不動産デベロッパー側から当社にアプローチが来ることもあるだろうと思っています。
  • 河合 江理子

    河合 江理子ハーバード大学で学士、フランスのINSEADでMBAを取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニーのパリ支社など欧州の複数企業で勤務。その後、国際決済銀行や経済協力開発機構などの国際機関を経て、現在は京都大学名誉教授・京都大学大学院総合生存学館ソーシャルイノベーションセンター特任教授。2021年6月より当社の社外取締役に就任。

当社に期待すること

河合 当社は一民間企業でありながら、長期的な視野で大規模な街づくりを展開し、日本社会に大きなインパクトを与える企業だと考えています。木材でつくる高層ビルなど新技術を積極的に取り入れ、地球環境にもやさしい環境づくりを進めるなど、時代を先取りする企業として大きな期待を持っています。
野木森 私も、当社が事業として行っている街づくりは、国づくりでもあると考えています。そういう面で、非常にやりがいのある仕事をしていると思い、さらに言えば、当社は、将来を見据えて「不動産事業を通じてどのように世の中を動かしていくか」という大きなビジョンを実現していく力があると考えています。

※ 本対談は感染対策を行った上で実施しました。

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