気候変動

気候変動に対する認識

産業革命以降の人間のエネルギー消費などの活動により、大気中の二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの濃度が上昇し、地球温暖化が進みつつあります。有効な対策を取らず温暖化が進めば、気候が大きく変動し、海水面の上昇や異常気象などを引き起こし、人やその他の生物の生息環境に大きな影響をもたらすこととなります。また、当社グループの事業活動においても、異常気象による被害を受けるリスクが高まることとなります。

当社グループは、地球温暖化を抑制して、自社グループの気候変動によるリスクの低減と、人やその他の生物が生息できる環境を守り持続可能な脱炭素社会を形成していくため、エネルギー消費を抑え温室効果ガスの排出が少ない建物や街をつくり提供・運営していくことが、不動産デベロッパーとしての大きな社会的使命と考えています。

取り組み方針

グループ環境方針に基づき、エネルギー消費や温室効果ガスの排出が少ない建物や街づくりを推進するとともに、共同事業者やテナント企業、出店者さま、お客さまとともに省エネルギー活動などの地球温暖化対策を進め、脱炭素社会の形成をめざします。

取り組み指標と目標および達成状況

当社グループの気候変動に関する指標と目標および達成状況は以下の通りです。

項目 目標(KPI) 2019年度 進捗状況
【短期目標】
エネルギー消費原単位
年間1%削減 3.4%削減
(0.04056㎘(原油換算)/m2・年)
【短期目標】
CO2排出量(東京都特定地球温暖化対策事業所のエネルギー起源)
東京都環境確保条例に定められた削減義務率を上回る削減率(1期:8%、2期:17%、3期:27%) 第2計画期間削減義務率11.2%に対し、28.4%の削減率を達成
【中期目標】
温室効果ガス(GHG)排出量削減
2030年度までに▲30%(2019年度比)
SBTイニシアティブ認定
SBT
【長期目標】
温室効果ガス(GHG)排出量削減
2050年度までにネットゼロ
【長期目標】
RE100(事業活動で使用する電力の再生可能エネルギー割合)
RE100
2050年度までに100%
※「優良特定地球温暖化対策事業所」認定による削減義務率軽減分考慮後の当社の報告対象事業所の削減率を平均した数値

気候変動への適応に関するイニシアチブへの参加

国連グローバル・コンパクトへの参加

当社グループは、国連の提唱する「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」に関する10原則からなる「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」に賛同し、2018年12月に署名するとともに、日本におけるローカルネットワークである「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)」に参加しました。

当社グループは2001年に「グループ環境方針」を定め、省エネや温室効果ガス排出量の少ない建物や街づくりを進め地球温暖化の抑制に寄与するとともに、環境汚染の防止や廃棄物削減、水環境や生物多様性の保全などにも取り組んできました。オフィスや住宅などの生活基盤を支える企業グループとして、今後もより一層、環境保全等に取り組み、より高い水準で社会的責任を果たしていきます。
(「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」の詳細については、以下をご参照ください。)
https://www.unglobalcompact.org/

「RE100」への加盟

当社グループは、事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的なイニシアチブ「RE100」に加盟しています。そして、RE100地域パートナーであるJCLP(Japan Climate Leaders' Partnership)の正会員として気候変動に対して取り組んでいます。

(「RE100」の詳細については、こちらをご参照ください。)
http://there100.org/companies

RE100

気候関連財務情報開示タスクフォース「TCFD」に賛同

当社グループは、企業などに対して気候変動関連リスクと機会に関する情報開示を推奨する気候関連財務情報開示タスクフォース「TCFD」の提言に賛同しています。そして、TCFDに賛同している日本企業が集う「TCFDコンソーシアム」の会員として活動しています。

(「TCFD」の詳細については、こちらをご参照ください。)
https://www.fsb-tcfd.org/tcfd-supporters/

TCFD

温室効果ガス排出量削減目標においてSBTイニシアティブ認定を取得

当社グループが設定しているグループ全体の温室効果ガス排出量削減目標は、国際的なイニシアティブであるSBT(Science Based Target)より、科学的知見と整合する目標として認定されています。

(「SBTイニシアティブ」の詳細については、こちらをご参照ください。)
https://sciencebasedtargets.org/companies-taking-action

SBT

主な取り組み

省エネ・創エネ・蓄エネ

当社グループは、省エネに加え、太陽光発電やコジェネレーションシステムなどの創エネ、大型蓄電池による蓄エネなどにも積極的に取り組み、エネルギー消費と温室効果ガスの排出が少ない建物・街づくりを進めています。また、共同事業者やテナント企業、出店者さま、お客さまとともに省エネ活動にも取り組んでいます。

オフィスビルでの省エネ・創エネ・蓄エネ
「東京ミッドタウン日比谷」での取り組み

「東京ミッドタウン日比谷」(東京都千代田区)では、熱負荷を低減する外装や高性能ガラスの採用、昼光を利用した照明の制御などの省エネ設備や高効率設備機器の採用、ガスコージェネレーションシステムの排熱利用などのほか、太陽光発電設備(発電能力約20kw)を設置して創エネも行っています。これらの省エネ・創エネ設備等により、東京都建築物環境計画書制度におけるPAL・ERRの「段階3」およびCASBEEにおける自己評価で「Sランク」を達成しています。

また、地域冷暖房(DHC)のサブプラントを新たに設置し、日比谷エリアにある既存のDHCプラントと連携することで、地区全体で高効率なエネルギー供給を実現しています。

「東京ミッドタウン日比谷」の環境への取り組み概要
>「東京ミッドタウン日比谷」の環境への取り組み概要
「日本橋髙島屋三井ビルディング」での取り組み

「日本橋髙島屋三井ビルディング」(東京都中央区)では、東京都建築物環境計画書制度におけるPAL・ERRの「段階3」を達成しています。

都内のオフィスビルで東京都の
「優良特定地球温暖化対策事業所」の認定更新

2010年度より、東京都内のオフィスビルについて、東京都の「優良特定地球温暖化対策事業所」の認定取得・更新を進めています。

これらのオフィスビルでは、省エネ設備への切り替えのほか、CO2削減推進協議会を開催し、テナントとの協力体制を強化し、省エネ活動を推進しています。

なお、2020年4月1日現在、「優良特定地球温暖化対策事業所」の認定を受けている当社のオフィスビルは、トップレベル事業所が6事業所(6棟)、準トップレベル事業所が8事業所(11棟)となっています。

※東京都の「優良特定地球温暖化対策事業所」:東京都が規定する温室効果ガス排出削減の管理体制・建物設備性能・事業所設備の運用に関する全213項目の審査項目について、地球温暖化対策の推進の程度が特に優れた事業所を認定し温室効果ガス排出削減義務率を緩和する制度で、トップレベル事業所(評価点80点以上)と準トップレベル事業所(評価点70点以上)があります。
東京都の「優良特定地球温暖化対策事業所」認定一覧
(2020年4月1日現在)
トップレベル事業所 準トップレベル事業所
・日本橋三井タワー(更新)
・東京ミッドタウン(更新)
・銀座三井ビルディング(更新)
・グラントウキョウノースタワー(更新)
・グラントウキョウサウスタワー(更新)
・三井住友銀行本店ビルディング(更新)
・日本橋一丁目三井ビルディング(更新)
・汐留シティセンター(更新)
・ゲートシティ大崎(更新)
・赤坂Bizタワー(サブリース)(更新)
・霞が関ビルディング(東京倶楽部ビルディング含む)(更新)
・新宿三井ビルディング(更新)
・室町東三井ビルディング
 (室町古河三井ビルディング、室町ちばぎん三井ビルディング含む)
・飯田橋グランブルーム
6事業所(6棟) 8事業所(11棟)
合計:14事業所(17棟)
※「霞が関ビルディング」・「東京倶楽部ビルディング」は2棟で1事業所、「室町東三井ビルディング」・「室町古河三井ビルディング」・「室町ちばぎん三井ビルディング」は3棟で1事業所の扱いとなります。
大型物流施設での省エネ

当社は、大型物流施設「三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)」において、LED照明や太陽光発電設備の導入を進めています。

「MFLP稲沢」の太陽光発電パネル(発電能力約1,500kW)
「MFLP稲沢」の太陽光発電パネル
(発電能力約1,500kW)
「MFLP茨木」の太陽光発電パネル(発電能力約2,000kW)
「MFLP茨木」の太陽光発電パネル
(発電能力約2,000kW)
駐車場「三井のリパーク」での省エネ

三井不動産リアルティ㈱の駐車場「三井のリパーク」では、「安全・安心」「先進性」「環境配慮」「災害支援」の4つをキーワードを軸とした次世代型の駐車場づくりを進めています。

例えば、「『三井のリパーク』みなとまち新潟駐車場」(新潟市中央区)では、ハイブリッドソーラーシステムを導入して太陽光発電を行い、蓄電した電力で夜間に看板のLED照明を点灯することでCO2排出量を削減しつつ、災害時や停電時の非常用電力としています。

「『三井のリパーク』みなとまち新潟駐車場」のハイブリッドソーラーシステムの太陽光発電パネル
「『三井のリパーク』みなとまち新潟駐車場」のハイブリッドソーラーシステムの太陽光発電パネル

メガソーラー事業

当社はメガソーラー事業を行っており、2020年4月1日現在、太陽光発電所(メガソーラー)5施設が稼働しています。全5施設での計画発電出力の合計は約72MW、年間発電電力量は約7千万kWhで、一般家庭の年間消費電力量約2万世帯分に相当します。

当社の太陽光発電所の概要(2020年4月1日現在)

施設名 所在地 運転開始年月日 計画発電出力
三井造船・三井不動産大分太陽光発電所 大分県大分市 2013年12月1日 約21MW(増設分約4MW含む)
三井不動産山陽小野田太陽光発電所 山口県山陽小野田市 2013年12月1日 約13MW
三井不動産苫小牧太陽光発電所 北海道苫小牧市 2014年 4月1日 約24MW
三井不動産八戸太陽光発電所 青森県八戸市 2014年10月1日 約8MW
三井不動産大牟田太陽光発電所 福岡県大牟田市 2014年12月1日 約6MW
合計:約72MW

エネルギーマネジメントシステム

当社グループは、オフィスビルや商業施設、マンション、戸建住宅などにおいて、それぞれに最適なエネルギーマネジメントシステムの導入を進めています。また、これらの個別の建物のエネルギーマネジメントシステムを連携させ、街区全体でエネルギーを管理するエリアエネルギーマネジメントシステムなどの導入も進めています。

エネルギーマネジメントシステムの導入事例
建物等の種類 エネルギーマネジメントシステムの種類 エネルギーマネジメントシステムを導入している建物等の事例
オフィスビル BEMS ・東京ミッドタウン日比谷
・日本橋髙島屋三井ビルディング
など
商業施設 BEMS ・ららぽーとTOKYO-BAY
・ららぽーと甲子園
・三井アウトレットパーク北広島
など
分譲マンション HEMS(各戸)、MEMS(共用部、全体) 三井不動産レジデンシャルの
・パークタワー西新宿エムズポート
・パークシティ柏の葉キャンパス ザ・ゲートタワー
・パークシティ武蔵小杉 ザ ガーデン
・HARUMI FLAG
など
戸建分譲住宅 HEMS 三井不動産レジデンシャルの
・ファインコートけいはんな公園都市
・ファインコート等々力 桜景邸
など
戸建注文住宅 HEMS 三井ホームの
・green'sⅡ(グリーンズⅡ)シリーズ、
・green's ZERO(グリーンズゼロ)シリーズ
など
街区全体 AEMS、TEMSなど ・柏の葉スマートシティ(柏の葉AEMS)
・日本橋スマートエネルギープロジェクト
・豊洲スマートエネルギープロジェクト
・パークシティ武蔵小杉 ザ ガーデン
など
注)
BEMS:Building Energy Management Systemの略。
HEMS:Home Energy Management Systemの略。
MEMS:Mansion Energy Management Systemの略。
AEMS:Area Energy Management Systemの略。
TEMS:Town Energy Management Systemの略。
豊洲スマートエネルギープロジェクト ムービー

自動車からのCO2排出抑制

当社グループは、自動車からのCO2排出抑制のため、電気自動車用充電器等の設置や商業施設での公共交通機関利用促進サービスの提供などに取り組んでいます。三井不動産リアルティ㈱は、「三井のリパーク」の時間貸駐車場に電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHV)用の充電器 の設置を進めております。また、「ららぽーと湘南平塚」(神奈川県平塚市)などの商業施設や「パークシティ武蔵小杉 ザ ガーデン」(川崎市中原区)などの分譲マンションの駐車場においても、EVやPHV用の充電器の設置を進めています。

「『三井のリパーク』変なホテル舞浜 東京ベイ駐車場」(千葉県浦安市)のEV・PHV用充電器
「『三井のリパーク』変なホテル舞浜 東京ベイ駐車場」(千葉県浦安市)のEV・PHV用充電器

エネルギー消費量・温室効果ガス排出量

エネルギー消費量

当社(集計対象範囲参照)のエネルギー消費量は2015年度以降微増傾向にあり、2019年度は274.6千㎘(原油換算)/年と前年度比で2.1%増加しました。エネルギー消費原単位(延床面積当たり)は0.04056㎘(原油換算)/m2・年と、前年度比で3.4%減少しました。

エネルギー消費量の推移

エネルギー消費量データはこちら(第三者保証)をご覧ください。

エネルギー消費量の集計対象範囲はこちら(第三者保証)をご覧ください。

温室効果ガス排出量

当社グループが事業活動により排出する温室効果ガス(GHG)は、主にエネルギー消費に伴う二酸化炭素(CO2)です。そのほか漏洩したフロン類(HFC等)が該当します。

温室効果ガス排出量の推移(「エネルギーの使⽤の合理化等に関する法律」に基づく)

温室効果ガス排出量データはこちら(第三者保証)をご覧ください。

温室効果ガス排出量の集計対象範囲はこちら(第三者保証)をご覧ください。

SBT基準による温室効果ガス排出量(SCOPE1,2,3)

SBT基準に基づく当社グループの2019年度のSCOPE1,2,3毎の排出量は以下のとおりです。

SBT
Scope 2019年度
t-CO2
Scope1  直接排出 104,160
Scope2  間接排出 380,613
小計(Scope1,2):484,773
Scope3-1  購入した製品・サービス 893,110
Scope3-2  資本財 973,821
Scope3-3  Scope1・2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 94,885
Scope3-4  輸送、配送(上流)
Scope3-5  事業から出る廃棄物 125,531
Scope3-6  出張 2,623
Scope3-7  雇用者の通勤 4,755
Scope3-8  リース資産(上流)
Scope3-9  輸送、配送(下流)
Scope3-10  販売した製品の加工
Scope3-11  販売した製品の使用 955,558
Scope3-12  販売した製品の廃棄 5,818
Scope3-13  リース資産(下流) 567,141
Scope3-14  フランチャイズ
Scope3-15  投資
小計(Scope3):3,623,240
合計(Scope1,2,3):4,108,013
※支配力基準に基づき、対象組織を選定。
※集計範囲・方法の見直し等により数値が変動する可能性があります。

TCFDに基づく気候関連財務情報開示

TCFDと当社の考え方

三井不動産グループは、企業等に対して気候変動関連リスクと機会に関する情報開示を推奨する気候関連財務情報開示タスクフォース「TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の提言に賛同することを表明しました。三井不動産グループでは、グループ長期経営方針「VISION2025」において「街づくりを通して、持続可能な社会の構築を実現」することを目指す方向として掲げ、人・街・社会の課題解決に資する街づくりやサービスを展開しています。気候変動に伴う異常気象による被害など、自社グループの事業活動へのリスク低減と、人やその他の生物が生息できる環境を守り持続可能な脱炭素社会を形成していくため、この度の賛同を起点として、気候変動が事業に及ぼすリスクと機会についての分析と対応、関連する情報の開示を進めてまいります。

シナリオ分析

【前提条件と分析対象】

シナリオ分析の実施に使用するシナリオとして、国連IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書における気候変動シナリオ(下図)を参照し、2℃シナリオと4℃シナリオを選択しました。分析の時間軸としては、不動産事業における資産のライフサイクルの長さを考慮し、2050年頃における気候変動の影響を対象としています。初年度となる今回のシナリオ分析では、三井不動産グループの主要事業かつ気候変動の影響が比較的大きいと考えられる「住宅」「オフィス」「商業」を分析対象としました。

世界平均地上気温変化
世界平均地上気温変化
※出典:IPCC第五次評価報告書より作成
【分析のプロセス】

2017年6月に公表されたTCFD最終報告書に沿って、4つのステップで検討を進めました。

①重要なリスク・機会の評価

三井不動産グループの事業に大きな影響を与えうる気候変動リスクおよび機会を、関連するレポート等の調査によって洗い出しました。

②将来世界の定義

①で特定した重要なリスク・機会について、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)のRCP2.6およびRCP8.5や、IEA(International Energy Agency)のSDSシナリオ、NPSシナリオ等、外部専門機関の予測に基づき、2050年に想定される社会・政府・お客様・サプライヤー等の変化を2℃シナリオ/4℃シナリオのそれぞれで整理しました。

③事業インパクトの試算

②で収集した外部情報に基づいて、三井不動産グループの事業に与える財務影響を試算しました。なお、定量的なデータが入手困難なリスクおよび機会については、定性的な分析としています。

④対応策の検討(今後実施予定)

事業影響の特に大きい気候変動リスク・機会への対応方法を検討しました。具体的な対応策は、今後更なる検討を予定しています。

【分析結果1.主なリスクと機会】

不動産事業における主な気候変動リスク・機会を外部情報に基づいて整理し、それぞれのリスク・機会に関する将来予測データを収集しました。TCFD最終報告書やその他の気候変動に関するレポート等を参考に、脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会(政策/規制、業界/市場、技術)と気候変動に起因する物理リスク・機会(慢性、急性)について検討し、三井不動産グループ中核3事業に2050年までに影響を与える重要なリスクと機会を下表のとおり特定しました。

住宅事業においては、2℃シナリオでは炭素税の拡大が原材料価格や輸送費を通じて調達コストを上昇させたり、ZEHや省エネリフォームの普及が進む一方で、4℃シナリオでは猛暑日の増加による労働生産性等の低下を通じて新築建設コストが上昇する可能性があります。また、オフィス事業においては、2℃シナリオにおいて住宅事業と同様の調達コスト上昇、オフィスからのGHG排出への課税、ZEB建設拡大に伴うコスト増加が考えられる一方、事業機会として環境性能の高い物件の賃料の上昇が期待されます。4℃シナリオではオフィスの空調コスト増加や高潮・洪水による被害の発生が懸念されます。最後に商業事業においては、2℃シナリオでは住宅・オフィスと同様のコスト増、AI空調システム等の省エネ・再エネの浸透に伴う光熱費の削減が期待されますが、4℃シナリオでは、沿岸部に立地する商業施設の高潮・洪水リスクが顕在化することが考えられます。

分類 主なリスク・機会 想定される将来像
移行 政策 炭素税の大幅な引き上げ 自社GHG排出量に対する課税に加え、排出原単位の大きい原材料(鉄鋼、セメントなど)や輸送コスト、空調コストの上昇が予想される。一方で、低炭素型建築など環境性能の高い物件の競争力は上昇する。
省エネ政策 新築や修繕において満たすべきエネルギー効率基準が引き上げられることで、追加的な設備投資が発生する。また、エネルギー源の脱炭素化、ZEHの義務化、ZEB導入の拡大、省エネ住宅設備の導入が進む。
市場 顧客行動の変化 環境性能の高い商品の需要が上がり、競争優位につながる。
技術 再エネ・省エネ技術の普及 省エネ技術の普及とともに、省エネリフォームが拡大する。
物理 慢性 平均気温の上昇 猛暑日に現場作業が困難となり、対策コストの増加や工期遅延が発生する。また、クーラー負荷の増大によって設備運営費が上昇する一方、空調効率化によるコスト削減効果が拡大する。
急性 海面の上昇 海水面の上昇に伴い、台風に伴う高潮による沿岸物件での被害が発生する。
異常気象の激甚化 豪雨の頻発や内水氾濫の発生によって現場作業が中断し、工期が遅延する。また、お客様の安全が脅かされたり、保有資産の設備が毀損する。
【分析結果2.事業インパクトの試算】

入手可能な定量データやリスク・機会の重要性を考慮し、主なリスク・機会の一部について、2050年に三井不動産グループの事業に与える財務インパクトを試算しました。2℃シナリオにおいては、炭素税の拡大や省エネ基準の強化への対応コストが事業に与えるマイナス影響が比較的大きい一方で、三井不動産グループが強みを持つ環境性能の高い建築物によるビジネスチャンスの拡大や、先進的な省エネ技術による光熱費削減に伴うプラス影響が相殺効果を果たすことがわかりました。また、4℃シナリオでは、高潮・洪水による実損被害は軽微と想定され、大きな財務影響のある要因は2℃シナリオと比較して少ない結果となりました。

タイプ 主なリスク・機会 事業へ影響を与えうる要素 財務影響の試算結果
4℃
シナリオ
2℃
シナリオ
リスク 移行 炭素税の大幅な引き上げ 自社排出量への課税
原材料価格の高騰
省エネ政策 建築物省エネ規制の強化による省エネ改修コストの増加
ZEH建設コストの増加
物理 平均気温の上昇 猛暑日の増加に起因した工期遅れによる売上減
空調負荷の増加
海面の上昇/異常気象の激甚化 海面上昇に伴う高潮や豪雨による洪水被害の発生
機会 移行 炭素税の大幅な引き上げ 低炭素素材の導入によるコスト増の抑制
省エネ政策 ZEH義務化に伴うシェアの拡大
ZEH建設に伴う炭素クレジットの創出・売却
顧客行動の変化 環境性能の高い建築物へのシフト
再エネ・省エネ技術の普及 省エネ改修ビジネスの拡大
物理 平均気温の上昇 AI空調の導入による空調コスト削減
省エネ性能向上による光熱費削減
シナリオ分析から得られた結果

分析から得られた結果

今回のシナリオ分析の結果から、今後2050年にかけて世界が2℃シナリオ/4℃シナリオのいずれかの気候変動シナリオに進んだ場合であっても、三井不動産グループの事業は継続可能であり、一定のレジリエンスを有していることが確認されました。三井不動産グループは、GHG原単位の削減や省エネの推進などを通じて、炭素税の引き上げや規制強化等の気候関連リスクへの対応を推進しています。また、環境性能の高い建築技術を有しているゼネコン等サプライチェーンの皆様と協働したスマートシティ等、環境配慮型まちづくりを国内外にて展開していることは、市場優位性の強化を通じ、脱炭素社会への移行に伴うビジネスチャンスを拡大することに繋がります。今回のシナリオ分析により、これまで進めてきた環境取組の方向性を改めて確認することができました。三井不動産グループでは、今後シナリオ分析の精緻化・深化や対応策としての各種取組の推進を通じて、レジリエンスの向上と機会の最大化に努めてまいります。

推奨開示項目 ESG Report 2020での開示箇所
ガバナンス:気候変動のリスク及び機会に係るガバナンスを開示する
a)気候関連のリスク及び機会についての、取締役会による監視体制を説明する 環境 > 環境推進体制 >「環境推進体制」
b)気候関連のリスク及び機会を評価・管理する上での経営者の役割を説明する 環境 > 環境推進体制 >「環境推進体制」
戦略:気候関連のリスク及び機会がもたらすビジネス・戦略・財務計画への実際の及び潜在的な影響を、そのような情報が重大な場合は、開示する
a)識別した、短期・中期・長期の気候関連のリスク及び機会を説明する 環境 > 気候変動 >「TCFDに基づく気候関連財務情報開示」
b)気候関連のリスク及び機会がビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響を説明する 環境 > 気候変動 >「TCFDに基づく気候関連財務情報開示」
c)2℃以下シナリオを含む、さまざまな気候関連シナリオに基づく検討を踏まえて、戦略のレジリエンスについて説明する 環境 > 気候変動 >「TCFDに基づく気候関連財務情報開示」
リスク管理:気候関連リスクについて、どのように識別・評価・管理しているかについて開示する
a)気候関連リスクを識別・評価するプロセスを説明する ガバナンス > リスクマネジメント >「リスクマネジメント体制」
環境 > 気候変動 >「TCFDに基づく気候関連財務情報開示」
b)気候関連リスクを管理するプロセスを説明する ガバナンス > リスクマネジメント >「リスクマネジメント体制」
環境 > 気候変動 >「TCFDに基づく気候関連財務情報開示」
c)気候関連リスクを識別・評価・管理するプロセスが組織の総合的リスク管理にどのように統合されているかについて説明する 環境 > 気候変動 >「TCFDに基づく気候関連財務情報開示」
指標と目標:気候関連のリスク及び機会を評価・管理する際に使用する指標と目標を、そのような情報が重要な場合は、開示する
a)戦略とリスク管理プロセスに即して、気候関連のリスク及び機会を評価する際に用いる指標を開示する 環境 > 環境推進体制 >「環境推進体制」
環境 > 気候変動 >「取組指標と目標」
b)Scope1、Scope2及び当てはまる場合はScope3の温室効果ガス(GHG)排出量と、その関連リスクについて開示する 環境 > 気候変動 >「TCFDに基づく気候関連財務情報開示」
環境 > 気候変動 >「取組指標と目標」
c)気候関連リスク及び機会を管理するために用いる目標、及び目標に対する実績について説明する 環境 > 気候変動 >「取組指標と目標」

その他の環境データ

環境会計(当社ビルディング部門)

環境会計の集計に当たって

環境保全コストでは環境保全に要した投資および費用を集計しています。また、2002年度を基準年度として、対比・集計しています。

環境保全コストの費用額には、投資した設備などの減価償却費も含んでいます。

管理活動における環境保全コストには、業務知識研修の実施費用などを計上しています。

環境保全効果におけるCO2への換算根拠は以下のとおりです。基準年度と比較するため、当年度、前年度の数値も以下の根拠に基づいて算出しています。

  • CO2の排出係数(電力以外):「地球温暖化対策の推進に関する法律施行令(改正案2002年12月)」の排出係数
  • CO2の排出係数(電力):「地球温暖化対策の推進に関する法律施行令(改正案2002年12月)」の排出係数(一般電気事業者の数値を使用)

前年度および基準年度とは対象物件が異なります。

環境保全コスト(2019年度)
集計範囲:当社所有・一部所有オフィスビル(66棟)
対象期間:2019年4月1日~2020年3月31日
基準年度:2002年度
(単位:千円)
分類 主な取り組みの内容 投資額 当期費用額 基準年度からの
累計費用額
1 生産・サービス活動により事業エリア内で生じる環境負荷を抑制するための環境保全コスト
(事業エリア内コスト)
426,063 1,189,195 14,488,027
内訳 1-1 公害防止コスト 排水処理設備、煤煙濃度測定、レジオネラ菌対策等 18,180 41,086 538,208
1-2 地球環境保全コスト 空調改修、CO2外気量制御、中央監視設備更新、中性能フィルター洗浄等 390,806 839,422 9,452,783
1-3 資源循環コスト 中水処理設備、生ごみリサイクル費、蛍光灯・乾電池リサイクル費等 17,077 308,687 4,497,036
2 生産・サービス活動に伴って上流又は下流で生じる環境負荷を抑制するためのコスト
(上・下流コスト)
0 0 0
3 管理活動における環境保全コスト
(管理活動コスト)
環境法令対応費
環境教育費等
0 107,710 1,527,540
4 研究開発活動における環境保全コスト
(研究開発コスト)
環境関連研究開発費用
研究開発設備の減価償却費
環境関連研究開発人件費
0 0 42,440
5 社会活動における環境保全コスト
(社会活動コスト)
植栽改修、外構植栽保守費等 0 88,942 907,960
6 環境損傷に対応するコスト
(環境損傷コスト)
0 0 0
合計 426,063 1,385,847 16,965,967
環境保全効果(2019年度)
集計範囲:当社所有・一部所有オフィスビル(67棟)
対象期間:2019年4月1日~2020年3月31日
基準年度:2002年度
効果の内容 環境負荷指標
当年度 前年度 基準年度 前年度比
(当年度-前年度)
基準年度比
(当年度-基準年度)
管理用省エネルギー 管理用燃料・電気原油換算量の床面積原単位
(入居率による補正後)
[原油換算㎘/千m2※1
1.93 2.01 3.16 -0.08 -1.23
管理用燃料・電気CO2換算量の床面積原単位
(入居率による補正後)
[t-CO2/千m2※2
2.97 3.10 4.87 -0.13 -1.9
各エネルギーの内訳 電気:管理用電力量の床面積原単位
(入居率による補正後)
[千kWh/千m2※3
6.51 6.69 10.94 -0.18 -4.43
ガス:管理用使用量の床面積原単位
(入居率による補正後)
[千m3/千m2※4
0.26 0.29 0.32 -0.03 -0.06
DHC:管理用購入量合計の床面積原単位
(入居率による補正後)
[MJ/千m2※5
18,368.61 13,616.79 24,258.57 4,751.82 -5,889.96
水:管理用使用量の床面積原単位
(入居率による補正後)
[t/千m2※6
25.93 40.78 77.96 -14.85 -52.03
廃棄物排出量の床面積原単位
(入居率による補正後)
[t/千m2※7
0.43 0.47 1.19 -0.04 -0.76
廃棄物総量に対するリサイクル率の向上[%] 70.70 72.52 44.77 -1.82 25.93
※1管理用燃料・電気の原油換算量[㎘]/(延床面積[千m2]×入居率)
※2管理用燃料・電気のCO2換算量[t-CO2]/(延床面積[千m2]×入居率)
※3管理用電力量[千kWh]/(延床面積[千m2]×入居率)
※4管理用ガス使用量[千m3]/(延床面積[千m2]×入居率)
※5管理用DHC購入量[MJ]/(延床面積[千m2]×入居率)
※6管理用水使用量[t]/(延床面積[千m2]×入居率)
※7廃棄物排出量[t]/(延床面積[千m2]×入居率)

条例に基づく環境データ

当社グループは、東京都をはじめとした各自治体の気候変動に対する政策に賛同し、条例に基づいた環境データを提供しています。

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