三井本館街区(東京都中央区日本橋室町)再開発計画に着手
〜「重要文化財特別型特定街区制度」適用第1号〜
平成11年5月25日 三井不動産株式会社
三井不動産は、地権者である株式会社千疋屋總本店と共同で、中央区日本橋室町二丁目の三井本館街区(面積約1.4ha)の再開発を進めておりますが、本日、この計画が本年7月開催予定の東京都都市計画地方審議会に付議される都市計画案(「東京都市計画日本橋室町二丁目特定街区」)として東京都より公表されましたので、その計画概要についてお知らせいたします。
本再開発計画は、東京都が新たに創設した「重要文化財特別型特定街区制度」の初めての指定を受け、従来の特定街区の割増容積に加え、先に重要文化財建築物に指定された「三井本館」の床面積相当分を割増容積として活用することにより、当該街区において、重要文化財「三井本館」の保存と、最先端の超高層ビル「(仮称)室町三井新館」(地上41階建て、高さ194m)の建設を同時に実現するものです。
「重要文化財特別型特定街区制度」は、歴史的建築物の保存を誘導し、歴史や個性豊かな都市景観の形成をはかることを目的としており、本計画は、都市部再開発における「保存と開発の両立」の実現に先鞭をつける事業となります。
「(仮称)室町三井新館」の建設にあたっては、デザイン設計者として米国の設計事務所:シーザーペリアンドアソシエーツを起用。特に低層部のデザインは、三井本館に隣接して建設されることから、回廊を設け、三井本館の列柱のリズムと軒線を連続させるデザインを採用することにより、中央通り沿いに三井本館と調和した伝統的な建物景観を演出します。
機能面では、当社のビル事業における次世紀を代表するフラッグシップビルとして位置づけ、国際的な金融機関のニーズにも十分応えられるように、仕様、設備、サポート施設等において、グローバルスタンダードを満たす最新鋭のオフィス機能を備える計画です。また、中央通りに面した地上1・2・3階および地下1階には、千疋屋總本店をはじめとして、地域に新たな魅力を付加することができる商業施設の集積をはかる予定です。
三井不動産は、これまでも日本橋(室町) ,霞が関,日比谷,新宿を中心に、計画的なアセット戦略のもと首都圏のオフィスビル事業を展開してまいりました。今回の本再開発計画の推進は、そうした主力4大拠点のうち、既にリニューアル等を実施している他の3拠点に続き、課題であった日本橋室町の再整備にいよいよ着手することとなり、大阪市の「中之島三井ビルディング本新館」の建替えとあわせて、東西の主力保有オフィスビルにおける更なる競争力の強化をはかるものです。
【本計画の課題・内容・意義について】
(1)本再開発計画の課題
日本橋室町の三井本館街区は、明治7年(当時の町名は駿河町)に洋式ハウス三井組が建造されて以来、三井グループの本拠地であったという歴史を有しています。また、周辺地区は、江戸時代より、金座(現在の日本銀行所在地)を中心とした金融と、越後屋(現在の三越本店)などの商業の街として発展してきました。
- 重要文化財三井本館の保存
本再開発計画の第一の課題は、街区内に現存し、重要文化財に指定されている三井本館(昭和4年竣工)の保存です。
また街区周辺には、日本銀行本館(明治29年竣工、重要文化財)、三越本店(大正3年竣工、東京都選定歴史的建造物)、日本橋(明治44年竣工、重要文化財指定予定)などの歴史的建造物が集積しています。これらの貴重な歴史的建築物と調和した開発を目指し、保存と開発の両立を図ることが課題と考えています。 - 日本橋室町地区の保有オフィスビル群競争力の向上
第二の課題は、弊社のオフィスビル事業の東京における主力4大拠点(日本橋室町、霞が関、日比谷、新宿)のうち、日本橋室町地区のオフィスビル群について、計画的な再開発やリニューアルを開始し、商品競争力と収益力を向上させることです。4大拠点のうち、霞が関、日比谷、新宿については、既にリニューアルに着手・計画済みであり、残る日本橋室町地区のオフィスビル群について、再開発に着手し、拠点としての競争力を強化していくことが課題となっていました。 - 金融と商業の街としての再活性化の促進
第三の課題は、本計画が、周辺地域の既存建物の更新を加速させ、再活性化の契機となる先導的な役割を果たすことです。
そのためには、新建物は、金融ビックバン後の東京金融市場の成長をバックアップできるような性能を持った業務施設機能と、地域に新たな魅力を付加することのできる文化商業施設機能とを併せ持ち、また、地域の再活性化を象徴するようなシンボリックなデザインの建物にする必要があると考えています。
(注)中央区は、「日本橋・東京駅前地区再生計画(中間報告書)」の中で、本街区周辺の地域を、「歴史拠点再生地区」として、歴史的建築物を活かしながら老朽化建物の更新を図り、再び日本の金融の中心地となることをめざした街づくりが必要である地域と位置づけています。
(2)本再開発計画の内容
本再開発計画は、東京都が創設した「重要文化財特別型特定街区制度」の初めての指定(適用第1号)を受け、三井本館を保存しながら隣接地に(仮称)室町三井新館を建設する計画です。
- 「重要文化財特別型特定街区」制度を利用して三井本館を全面保存
- [三井本館街区の容積割増について]
本街区の指定容積率は現行718%ですが、「重要文化財特別型特定街区制度」を利用することにより、三井本館床面積相当分の加算、および有効公開空地を確保すること、景観に配慮することにより、合計500%の割増容積率が加算され、街区の新しい容積率は1218%となる予定です。
(注)「重要文化財特別型特定街区制度」は、本年4月、歴史的建築物を活かした街づくりの促進を目的として創設された制度です。特定街区の従来の割増容積制度に加えて、保存する重要文化財建築物の床面積相当分も割増容積として加算するとしたものです(割増容積の上限は500%)。 - [新制度により保存と開発の両立が可能に]
東京都が創設した「重要文化財特別型特定街区制度」は、「保存と開発の両立」に道を切り拓く、都市計画上画期的な制度です。
これまで歴史的建築物は、その重要性が叫ばれつつも保存は難しいというのが実状でした。それは主として、歴史的建築物を解体してしまった場合の方が、新たに建てられる建物面積が多くなることや、保存・維持コスト負担が無くなること等の経済的理由によるものでした。この結果、近年日本各地で歴史や個性豊かな都市景観が急速に失われつつあり、都市計画・文化の両面から大きな課題でした。
今回の東京都の新制度創設は、この問題に対し、都市計画行政の側面から、歴史的建築物の保存を誘導し、歴史や個性豊かな都市景観の形成を図るものといえます。歴史的建築物の所有者がインセンテイブと感じられるような保存施策は、文化行政、都市計画・建築行政面から、今後もきめ細やかな整備は必要ではありますが、今回の改正は、「保存と開発の両立」に向けて流れを変える、大変画期的なものであると考えます。
- [三井本館街区の容積割増について]
- 三井本館の保存と活用
- 現存する三井本館は、機能維持のために必要な設備の改修工事を実施し、全面保存します。
- 文化庁の「重要文化財(建造物)保存活用計画策定指針」に従って、関係諸官庁、学識経験者、所有者(弊社)により構成する委員会において、三井本館の保存と活用方法について長期計画を策定する予定です。
- 委員会に対しては、重要文化財としてふさわしい文化施設(例えば、美術館、博物館等)の誘致など、公益性、公開性の増進を図るための具体的活用計画を諮問し、適切な活用策を実施する予定です。
- (仮称)室町三井新館計画の特長
- [シーザーペリアンドアソシエーツの起用]
三井本館が米国の設計者を起用してつくられた新古典主義建築であること、また、歴史的建築物と高層タワーとが調和した優れた建築実例が米国のニューヨーク、シカゴ等に多いことから、米国の設計事務所を中心に実績のある4社による国際デザインコンペを実施いたしました。
いずれも優れた提案でしたが、東京、就中日本橋室町地区の新たなランドマークとして、地域の特性に考慮した親しみやすいデザインであると同時に、次世紀を代表するビルにふさわしい先進性を兼ね備えたデザインという観点から、シーザーペリアンドアソシエーツを起用することとしました。 - [三井本館との調和を重視したデザイン]
新建物は、三井本館の隣接地に建設されるため、低層部は三井本館の列柱のリズムと軒線(コーニス)を連続させるデザインを採用し、また回廊を設け、中央通り沿いに三井本館と調和した伝統的な建物景観を演出します。これにより、中央通りの持つ歴史と品格という魅力を増加します。 - [国際的な金融機関が入居するのに適した施設性能]
新建物は、国際的な金融機関の入居にも対応できるようにするため、基準階の形状や寸法、設備仕様、セキュリティ仕様、オフィスサポート施設の内容などに関し、グローバルスタンダードを満たす、最新鋭の性能のものを備える計画です。 - [中央通り沿いの活性化に貢献]
新建物は、中央通り沿いに面した地下1階、地上1・2・3階に、店舗、レストラン等の活性化施設(商業店舗等)を配置し、中央通り沿いでのにぎわいの形成に貢献する施設計画とします。また、公開空地に面した東北角地部分には老舗の千疋屋總本店(創業1834年、本年創業165周年)が新店舗を建設する予定です。 - [周辺建物の建替えのための受け皿機能]
新建物は、周辺地域で建替えを計画している建物の入居者が移転する受け皿としての役割を果たすことで、周辺既存建物の更新を加速させ、地域再活性化の契機となることも視野に入れた計画となっています。
地元公共団体との連携が重要となりますが、その具体策について中央区と今後協議していく予定です。
- [シーザーペリアンドアソシエーツの起用]
(3)本再開発計画の意義
- 保存と開発の両立を実現するモデル事業
日本の都市部、とりわけ東京の都心部における再開発はこれまでスクラップアンドビルドがほとんどでありました。しかしながら、良質なストックがある場合は、それを次世代に残しながら、新たな時代にふさわしい更新も進めることが、都心部再開発を考えるうえで、本来的に重要なテーマであると考えます。
東京都が今般新設した「重要文化財特別型特定街区制度」は、「歴史的建築物を活かした街づくりを促進する」ことが主旨とされており、本計画は、本制度適用第1号プロジェクトとして、都心部再開発における「保存と開発の両立」の実現に先鞭をつける事業といえます。
東京の中でも特に歴史と品格の残る日本橋地区において、この制度による事業が始動することは、東京都にとっては新制度がその主旨に沿って活用されるという意味で、また中央区にとっては、地域のまちづくり方針が実現に向けて歩み出すという意味で、さらに事業者にとっては、社会と共生しうる新たな都心部再開発のあり方を示すことができるという意味で、大変意義深いことであると考えます。
本制度が広く活用されることで東京の歴史的景観が保存され、さらに魅力ある都市になっていくことを期待したいと考えます。 - 主力保有賃貸ビルの競争力強化
弊社は、来るべき21世紀に向けて、東京の主力4大拠点と、大阪の中之島地区において戦略的なリニューアルおよび建替えを順次進めてまいりました。今回の東西両ビルの建替え計画着手により、弊社の21世紀に向けての主要賃貸ビルの商品力、競争力強化を一層進展するものと考えております。
また、東京の日本橋地区、大阪の中之島地区は、ともに古くより経済や文化の中心地であり、新たな時代にふさわしい都市機能の強化・更新が必要という共通の課題を有するエリアでした。
弊社がこれらの両エリアで、街の個性や歴史的魅力を活かした形で再開発の先陣を切ることにより、エリアの中心部分から更新が始まり、それが周辺に波及することにより、エリア全体の活性化が進展することを期待しています。
【「(仮称)室町三井新館」完成予想図・概要】
所在地 | 東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号 他 |
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敷地面積 | 14,375m2(三井本館街区全体) |
建築面積 | 約5,500m2 |
階数・高さ | 地下4階、地上41階建て、約194m |
容積対象床面積 | 約118,350 m2 |
延床面積 | 約129,980 m2 |
駐車場台数 | 305 台 |
着工予定 | 平成13年 4月 |
竣工予定 | 平成19年12月 |
【位置図】
【会社概要】
三井不動産株式会社 会社概要
設立 | 昭和16年7月15日 |
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本社所在地 | 東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号 |
代表者 | 代表取締役社長 岩沙 弘道 |
資本金 | 1,344億円(平成11年3月31日現在) |
事業内容 | (1) ビルディング・ショッピングセンター等の賃貸事業 (2) 戸建住宅・マンション等の分譲事業他 |
従業員数 | 1,392名(平成11年4月1日現在) |
株式会社千疋屋總本店
設立 | 昭和13年2月1日(創業1834年。本年で創業165周年) |
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本社所在地 | 東京都中央区日本橋室町二丁目1番2号 |
代表者 | 代表取締役社長 大島 博 |
資本金 | 3,000万円 |
事業内容 | (1) 果物および関連食品小売り (2) フルーツパーラーおよびレストランの営業 |
従業員数 | 110名(平成11年4月1日現在) |
シーザーペリ アンド アソシエーツ インク
会社名 | シーザーペリ アンド アソシエーツ インク |
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所在地 | 米国コネチカット州ニューヘブン |
社員数 | 85名 シーザーペリ略歴 1926年生まれ 1949年ツクマン国立大学建築学科卒業 1954年イリノイ大学建築学修士 1977年イエール大学建築学部長 |
主な作品(米国) | ワールドファイナンシャルセンター カーネギーホールタワー ニューヨーク近代美術館拡張・改修計画 ワシントンナショナル空港北ターミナル |
主な作品(日本) | アメリカ大使館 NTT新宿本社ビル シーホークホテル&リゾート |
その他 | クアラルンプール・シティ・センター(マレーシア) |