複数の会社が入居する大規模なオフィスビルとして初の重要文化財
「三井本館」開館80周年
「残しながら、蘇らせながら、創っていく」をコンセプトに「日本橋再生計画」を推進中
平成21年6月2日 三井不動産株式会社
三井不動産株式会社が所有し、管理・運営する「三井本館」(中央区日本橋室町2-1-1)は、本年 6月15日に開館80周年を迎えます。
「三井本館」は、三井財閥を形成する三井合名会社、三井銀行(現三井住友銀行)、三井信託銀行(現中央三井信託銀行)、三井物産、三井鉱山(現日本コークス工業)等の主要各社の本社が入居し、財閥の拠点的な機能を持つ建物として昭和4年(1929年)に開館しました。その後、平成10年12月には、複数の会社が入居する大規模なオフィスビルとして初めて重要文化財の指定を受けております。
「三井本館」のある日本橋地域では、「残しながら、蘇らせながら、創っていく」をコンセプトに、街の活性化、新たな魅力の創造を目的とした活動「日本橋再生計画」を官民地元一体となって進めています。今後も「三井本館」の維持・保存に努めると同時に、「室町東地区開発計画(2014年完成予定)」などのプロジェクトを通じて、日本橋地域の活性化と新たな魅力の創造に貢献してまいります。
なお、「三井本館80周年」を記念し、三井本館1階中央三井信託銀行および三井住友銀行各々の営業場にて三井本館の80年を振り返るパネル展「三井本館開館80周年〜写真で見る三井本館と日本橋」を行います(無料、主催:三井不動産、三井住友銀行、中央三井信託銀行)。
![]() 三井本館 外観(竣工当時)南西角より |
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![]() 三井本館 外観(現在/背後は日本橋三井タワー) 南東角より |
<三井本館の概要・主な特徴>
- 大正12年(1923年)関東大震災により旧三井本館が被災し、三井合名会社社長 三井八郎右衞門 髙棟、同社理事長 團琢磨により、東京復興の規範を示すため、建て替えの決定がなされた。
- アメリカ型の設計・建設システムを日本に導入することにより、日本の建築技術の向上発展に寄与することを期待して、米国の建築家と建設会社を採用した。
- デザインについては「壮麗、品位、簡素」をコンセプトに掲げるとともに、構造については、「関東大震災の2倍の地震が来ても壊れないもの」を設計の方針とした。
- 近代化された建築生産方式を導入し、当時6年かかるといわれた工期を2年8ヶ月で完成させた。
- 三井信託銀行(現中央三井信託銀行)の「モスラー」社製の地下大金庫の重量は50トンあり、重量制限のため日本橋上を運ぶことを許可されず、新常盤橋際まで船で運び陸上げし、深夜、現場まで運んだ。
- 総事業費は2,131万円で、当時の一般的なビルの建築費の約10倍の単価。
- スケジュール
大正 15年 6月24日 起工式
昭和 2年 11月10日 上棟式
昭和 4年 3月23日 竣工
昭和 4年 6月15日 開館
<重要文化財指定>
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平成10年(1998年)に、「国宝及び重要文化財指定基準」の「意匠的に優秀なもの」および「歴史的価値の高いもの」として評価をされ、重要文化財の指定を受けました。
(評価のポイント)- 大規模な中層建築物として、アメリカの技術と生産システムを導入してつくられた初期の例で、歴史的な意義が認められること。
- 複数の会社が入居する本格的業務用ビルとしても初期のもので、意匠的に優秀で完成度も高く、昭和初期を代表する建築物のひとつとして貴重であること。
- 外装
- 花崗岩仕上げ、道路に面した三方に1階と2階を通したコリント式オーダーの列柱(両脇2本が角柱で、丸柱はエンタシス(柱のふくらみ)、フルーティング(縦溝)付き)。
- 3階の上部にコーニスを廻し、列柱上をエンタブレチュア風に扱い、同階壁面に三井の業務内容や意義を表現した浮き彫りを起き、4階のパラペットに連続した花形の彫刻やレリーフ等の華やかな装飾。
- 5階を4階以上よりわずかにセットバックして建て、重圧感を軽減させ安定感をもたせる等の全体のバランス。
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内装
- 1階の営業場は、吹き抜けの大空間で、床・柱・接客用のカウンター等各部の仕上げに大理石を採用。
- ドリス式の巨大な柱を何本も並べる一方、柱頭・天井・梁の縁等の要所に装飾を施す等、力強さの中に華やかさを感じさせる意匠。
<保存と開発の両立>
- 平成17年(2005年)に、歴史的建築物を活かした街づくりの促進を目的として東京都が定めた「重要文化財特別型特定街区制度」第1号の適用を受け、隣接する「日本橋三井タワー」(地上39階・地下4階)が誕生。
- 当社および株式会社日本設計は、保存と開発を両立させた一連の取り組みに対して、社団法人日本建築学会から「日本建築学会賞(業績)」を受賞。
![]() 銀行営業場の吹き抜け大空間 |
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![]() 銀行営業場の天井装飾 |
![]() 中央三井信託銀行 モスラー社製大金庫 |
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![]() コリント式オーダーの列柱 |
![]() 三井の事業と意義を表すレリーフ(12カ所) |
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![]() 壁面全体を木製羽目板張りにした内装 |
【三井本館の概要】
所在地 | 東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号 |
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敷地面積 | 約5,610m2 (約 1,700坪) |
延床面積 | 約32,245m2 (約 9,754坪) |
階数 | 地上7階、地下2階 |
主体構造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造 |
鉄骨使用数量 | 9,600トン(坪当たり約1トン、現在の一般的な事務所ビルでは0.5トン) |
鉄筋使用数量 | 470トン |
建築様式 | アメリカ型の古典主義建築(アメリカンボザールのクラシカルリヴァイバル) |
設計会社 | トローブリッジ・アンド・リヴィングストン事務所 (当時ニューヨーク三大建築事務所の一つ) |
施工会社 | ジェームス・スチュアート社(在ニューヨーク) |
外装仕上げ | 茨城県稲田産花崗岩積 東西南3面に合計22本のコリンシャン丸柱を並列 |
内装仕上げ | 玄関・営業場は壁面柱とも全てイタリア産大理石を使用 特別室の高羽目板、腰羽目板は楢、胡桃、樺、桜、マホガニー、チークを使用 |
建築期間 | 工事日数:964日(2年8ヶ月) 従業延人員:588,193人 |
【パネル展「三井本館開館80周年〜写真で見る三井本館と日本橋」概要】
主催 | 三井不動産株式会社、株式会社三井住友銀行、中央三井信託銀行株式会社 |
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期間 | 平成21年6月5日(金)〜6月30日(火)(土、日、祝祭日を除く) |
会場 | 三井本館1階中央三井信託銀行および三井住友銀行各々の営業場 |
時間 | 9:00〜15:00 |
料金 | 無料 |
概要 | 日本橋に三井本館が誕生してから80周年を記念し、三井本館が歩んだ歴史や、国の重要文化財にも指定された建築的魅力を貴重な写真で振り返るとともに、今後の日本橋の街づくりについても紹介するパネル展 |
展示写真例
三井本館建築工事中 写真
昭和32年当時の三井本館 写真
(出典:中央区立京橋図書館)
「室町東地区開発計画」鳥瞰パース