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千葉大学、三井不動産、パナソニック、みらいの4団体、
植物工場の利用を推進する「街中植物工場コンソーシアム 柏の葉実証部会」を組織
第一弾、「ネットワーク型家庭用植物工場」の実証実験を開始
スマートシティとしての街づくりが進む千葉県・柏の葉キャンパスエリアにて実施

平成24年5月28日
国立大学法人千葉大学、三井不動産株式会社
パナソニック株式会社、株式会社みらい

 国立大学法人千葉大学、三井不動産株式会社、パナソニック株式会社、株式会社みらいは、2012年5月、千葉県・柏の葉キャンパスエリアにおいて植物工場の利用を推進する「街中植物工場コンソーシアム 柏の葉実証部会」を組織化しました。当コンソーシアムは、住宅、学校、商業施設、病院など街の中のあらゆるところに植物工場を設置し、それらをネットワークでつないで地域での最適利用を行う「みらい畑スマートネットワーク」の構築を目標に活動します。

 活動第一弾として、2012年9月より1年間、柏の葉キャンパスエリアの住民10世帯程度をモニターに、ネットワーク型家庭用植物工場の実証実験を行います。モニターは、パナソニック(株)が開発した家庭用植物工場を設置し、千葉大学監修の基で(株)みらいが開発した家庭用栽培レシピ(種・苗など)を使用して、野菜の栽培を行います。なお、設置する家庭用植物工場は住宅におけるインテリア性も追求し、千葉大学工学部が外観デザインを行います。

 本実験では、大きく2つのポイントを検証します。1つは、実際に生活者がいる家庭での本装置による野菜栽培です。(株)みらいが提供する栽培レシピによる野菜の育成状況や装置の操作性、実際の生活空間での使用状況などを検証します。また、空調などを完全にコントロールできる大規模植物工場とは異なり、家庭用植物工場では各家庭の温度や湿度などで生育状況が多少変化する可能性があるため、その度合いも検証します。
 もう1つは、家庭用植物工場を単体で利用するのではなく、ネットワーク化することによる付加価値の検証です。モニターと専門家((株)みらい)、モニター同士をネットワークする専用WEBサイトを立ち上げ、栽培状況の変化に応じて専門家に気軽に質問ができたり、モニター同士の栽培状況を見える化(共有)することで物々交換などリアルな交流につなげたりといった、新たなサービスを提供し、その有用性や商業性を検証します。

 なお、家庭用植物工場のデモ機、及び取り組みに関する詳細は、2012年5月30日から6月1日まで東京ビッグサイトで開催する「スマートグリッド展2012」内、「植物工場・スマートアグリゾーン」にて展示します。
WEBサイトURL:http://www.nikkan.co.jp/eve/smart/

実験概要

実験期間 2012年9月1日〜2013年8月31日 *2012年7月より、1台のみ先行実施
対象世帯 柏の葉キャンパス駅周辺の10世帯程度
実験内容 ・モニター宅における家庭用植物工場での野菜栽培
・ネットワークを活用した専門家による栽培支援
・ネットワークを活用したモニター同士の交流支援
参画団体 千葉大学(全体監修、家庭用植物工場外観デザイン)
三井不動産株式会社(ネットワーク構築、WEBサイト運営)
パナソニック株式会社(家庭用植物工場製作)
株式会社みらい(種・苗など栽培レシピ提供、モニター栽培支援)

実験内容詳細

1.野菜栽培について

使用機器 <外寸法>(開発中につき、予定)
約60cm(幅)×約38cm(奥行)×約85cm(高さ)

<光源>
LED照明(赤色、白色<青色成分含む>)
*自動ON/OFF機能付き

<栽培可能株数>
5〜7株
栽培品目 全30種(モニターは、自由に選択して栽培)

<野菜類>
レタス、ロメインレタス、グリーンリーフ、サンチュ、水菜、からし水菜、ミツバ、葉ネギ、春菊、シソ、チンゲンサイ、スープセロリ、エンダイブ、空心菜、小松菜、コカブ

<ハーブ類>
ルッコラ、バジル、ミント、クレソン、マスタードグリーン、セージ、レモンバーム、マジョラム、ディル、セルフィーユ、ヒソップ、イタリアンパセリ、パセリ、コリアンダー
*実験期間中、イチゴなど新品目を追加する可能性あり


<家庭用植物工場 イメージ図>

2.ネットワークについて

<みらい畑スマートネットワークとは>
柏の葉キャンパスエリアに設置する植物工場を一元管理し、地域全体で野菜の最適利用を進めるための仕組みの総称です。現在、既に千葉大学に大規模な植物工場拠点を整備し、さらに駅前の商業施設「ららぽーと柏の葉」には中規模タイプの植物工場が設置されています。今回、家庭用の実証実験の開始に合わせ各植物工場をつないだ専用WEBサイトを立ち上げ、ネットワーク構築に向けた実証を開始します。


<みらい畑スマートネットワーク イメージ図>

<今回の実験内容>
・専門家による栽培支援
WEBサイトを通じて(株)みらいに質問することで、各モニターの栽培状況に応じて、適切に対処することができます。家庭用植物工場にはカメラが内蔵されており、遠隔でも栽培状況を確認することができます。

・モニター同士の交流支援
各モニターの栽培状況をネットワークで見える化(共有)し、WEBサイトを通じて簡単に収穫野菜の交換を申し込むことができます。各家庭で野菜を消費しきれない場合に発生する「ムダ」を地域全体で解消するとともに、交換会や試食会の開催も促し、植物工場を通じた地域コミュニティの活性化を目指します。


<栽培状況管理画面>


<物々交換申請画面>

【参考(1) 柏の葉スマートシティと植物工場 】

柏の葉キャンパスエリアでは、2011年12月に内閣府より指定された「環境未来都市」と「総合特区」の両制度を活用し、規制緩和や財政支援を受けながら大規模な「スマートシティ」としての街づくりを進めています。

 柏の葉の目指すスマートシティとは単に技術に頼った省エネ都市ではなく、緑地保全や都市と農業との共生を含めた「環境共生都市」、市民の食・運動・生きがいを地域ぐるみでサポートし高齢になっても健康で豊かな生活を実現する「健康長寿都市」、未来社会を支えるテクノロジー・ベンチャー企業や新産業の創出を地域連携で進める「新産業創造都市」の3つをキーワードとした総合的なスマートシティです。そしてこのスマートシティは、地域の「公」(行政)、「民」(市民・企業)、「学」(大学)が連携し、自律した都市経営を行っていきます。

 植物工場を通じた「みらい畑スマートネットワーク」の構築は、地産地消により「地域の食の自律」を進めるための取り組みです。野菜は市民の食生活を支える重要な資源であり、気候や天候に左右されず、高品質で安心安全な野菜を安定的に栽培できる植物工場は、従来農法の不足点を補完する技術として着目しています。

 柏の葉キャンパスエリアでは、地域のエネルギーである「電力」を一元管理する「エリア・エネルギーマネジメントシステム(AEMS)」の構築を2014年春に予定しています。将来は、AEMSとみらい畑スマートネットワークを統合し、さらに「交通手段」や「人的ネットワーク」なども合わせて地域の資源(リソース)を管理する「エリア・リソースマネジメントシステム(ARMS)」への発展を構想しています。


<エリア・エネルギーマネジメントシステム イメージ図>


<エリア・リソースマネジメントシステム イメージ図>

【参考(2) 千葉大学の植物工場研究と「街中植物工場コンソーシアム」 】

 千葉大学では、環境健康フィールド科学センターを開設した当初の1990年頃から、継続的に植物工場の研究に取り組んできました。2010年8月には、農林水産省の実施する「植物工場 実証・展示・研究事業」に参加し、大規模な実証実験施設を整備しました。同時に、他の学術機関や企業と協力して、生産コスト削減や一般認知拡大、普及策など様々な視点から植物工場の研究開発に取り組む9つのコンソーシアムを組織しました。その一つが、一般市民にとって身近な施設に小型植物工場を設置することでその普及を進める「街中植物工場コンソーシアム」です。

 千葉大学をオーガナイザーに複数企業が集まり研究を進めてきた当コンソーシアムですが、今後はより実践的な取り組みの段階へ移行するため、コンソーシアムメンバーの再編成を進めています。今回組織した「街中植物工場コンソーシアム 柏の葉実証部会」は、活動範囲を柏の葉キャンパスエリアに定め、研究段階よりも実証・普及段階に特化した活動を展開していきます。千葉大学もオーガナイザーではなくリーダーとしてメンバーに参加し、実証・普及に向けた取り組みを一層強化していきます。