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千葉県・柏の葉スマートシティで実証実験中の
「ネットワーク型家庭用植物工場」 中間成果を公開
「植物工場・スマートアグリ展」(5月29日~31日、東京ビッグサイト)にて展示

平成25年5月29日
国立大学法人千葉大学
三井不動産株式会社
パナソニック株式会社
株式会社みらい

国立大学法人千葉大学、三井不動産株式会社、パナソニック株式会社、株式会社みらいによる「街中植物工場コンソーシアム 柏の葉実証部会」(以下、コンソーシアム)は、2012年9月より柏の葉スマートシティの住民モニター5世帯を対象に実施しているネットワーク型家庭用植物工場の実証実験の中間成果を公開しました。

本実証実験では、パナソニック㈱が試作し千葉大学工学部が外観デザインを行った家庭用植物工場を自宅に設置した住民モニター5世帯が日常的に野菜を栽培・収穫しています。栽培する野菜は、千葉大学監修の基で㈱みらいが開発した家庭用栽培レシピ(苗・栽培条件など)を使用しています。実証実験は2012年9月から2013年8月まで行い、本装置の実用化に向けた検証を行います。

コンソーシアムは、実証実験を通じて大きく2つのポイントを検証しています。

  • 家庭における小型植物工場の使用検証
  • 家庭用植物工場のネットワーク化による付加価値の検証

1で検証する事項は、提供する家庭用栽培レシピによる野菜の育成状況や装置の操作性、実際の生活空間での使用状況などです。空調などを完全にコントロールできる大規模植物工場ではなく、温度や湿度などが異なる家庭用植物工場という環境で、野菜の収穫頻度や品質の状況を検証します。
  2では、モニター間や専門家(みらい、パナソニック)をネットワークで繋いだ専用WEBサイト「みらい畑スマートネットワーク」を通じ、日常的な栽培情報や料理レシピの交換、リアルの場での試食会の開催など、交流を促進することで生まれる「食のコミュニティ」の有用性や商業性を検証しています。
以上の検証を通じて、家庭用植物工場においては、(1)生長のスピードが速く安定して収穫可能、(2)栄養の含有量が高い、(3)ネットワーク化によって栽培意欲向上・コミュニティ形成が進む、ことが確認されました。

なお、本実証実験結果、家庭用植物工場及び取り組みの詳細は、2013年5月29日から5月31日まで東京ビッグサイトで開催する「スマートコミュニティJapan 2013」内、「植物工場・スマートアグリ展」にて展示します。
WEBサイト URLhttp://www.nikkan.co.jp/eve/smart/agri.html

1.家庭における小型植物工場の使用検証について

収穫状況について

  • 小型の植物工場という特長のため
    • 野菜の生長スピードが早く、苗から育てる場合は、約2~3週間で収穫。種からの場合、約1ヶ月前後という短期間での収穫につながった。
    • 生育状況は、モニター間、季節などの外部環境に対して大きな変動はなく、安定して収穫できることを確認した。
  • ネットワークを通じた専門家のアドバイスにより、本実験期間で多品種の野菜の栽培への取り組みが見られ、個人でも多様な野菜栽培が可能であることを確認できた。

品質状況について

  • 公的機関による成分分析の結果、ミネラル類などの含有量は日本人食事摂取基準(2010年度版)に沿う数値であった。
  • レタスについては、美容と健康に良いとされるベータカロテンが、一般的な露地栽培ものより高い含有量が認められた。

2.家庭用植物工場のネットワーク化による付加価値の検証について

モニター間の交流について

  • 専用WEBサイト上に投稿された野菜料理レシピ数は57件にのぼった。他の書き込みをもとに料理をしたモニターも多く、WEBサイトを通じて、野菜の栽培意欲の向上が見られた。

    専用WEBサイト上でのコミュニケーション
  • モニター同士の交流会では、育成のコツや生活上の変化について活発な意見が交わされた。また、栽培に留まらず、家庭用植物工場のデザイン性や観葉としての役割などインテリアの楽しみも紹介された。

    モニター交流会の様子

モニターの意見

  • 最初は予想以上に育つので「栽培に追われる」印象。次第に慣れてくると自分でコントロールすることができ、栽培も楽しくなり始めた。(30代・女性)
  • 用意された苗から育てるだけでなく、自分で工夫し、種からの栽培にチャレンジしたり、二十日大根など、色々なことを試したりしたくなる。それが楽しい。(60代・女性)
  • 普段、店頭に並んでいることが少ないチャービルやコリアンダーという珍しい野菜を植物工場で栽培でき、欲しい時に食べることができるので、非常に助かる。(40代・女性)

実証実験に関する考察

千葉大学
千葉大学環境健康フィールド科学センターは、柏の葉スマートシティにおいて、植物工場の技術を還元していくと共に、意識の高い市民の暮らしの中で具現化することで、生活者中心の研究を行っている。今回の実証実験でも極めて有意義な結果を得られており、引き続き植物工場のある暮らしの実践につながる「植物環境デザイニングプログラム」を進めていく。
三井不動産
柏の葉スマートシティはICT技術を基盤に豊かなコミュニティを目指しているが、みらい畑スマートネットワークは、食の安全にとどまらず、農と食を通じた、新たなライフスタイルや交流を生み出す可能性を実感しており、引き続き実証実験を進めていきたい。
パナソニック
今回の実証実験を通じて、家庭内で野菜を育てるだけではなく、鑑賞する楽しみ、収穫の喜び、コミュニティとしてのつながる喜びを提供できることを認識した。引き続き柏の葉の街づくり構想実現に向けて、実証実験に協力していきたい。
みらい
家庭用植物工場と、大規模な植物工場を同じ地域の中で展開し、家庭内での野菜栽培を苗の供給を通じて支援していく。国内と海外において、植物工場のネットワークを広く形成していきたい。

街中植物工場コンソーシアムの今後の展開

コンソーシアムは、これまで駅前の商業施設ららぽーと柏の葉内に広さ約2坪の小型植物工場「みらい畑」を設置したほか、スーパーでの植物工場産野菜の販売、商業施設内の飲食店でのサラダ提供など生活シーンの中で植物工場に触れることができる機会の創出を進めています。将来的には、住宅、学校、商業施設、病院など街の中のあらゆるところに植物工場を設置しそれらをネットワークで繋いで地域での最適利用を行う「みらい畑スマートネットワーク」の構築を目指しています。

家庭用植物工場について

機器詳細

使用機器 <外寸法>
約60cm(幅)×約38cm(奥行)×約85cm(高さ)

<光源>
LED照明(赤色、白色<青色成分含む>)
  • 自動ON/OFF機能付き
<栽培可能株数>
5~7株
栽培品目 全30種(モニターは、自由に選択して栽培)
<野菜類>
レタス、ロメインレタス、グリーンリーフ、サンチュ、水菜、からし水菜、ミツバ、葉ネギ、春菊、シソ、チンゲンサイ、スープセロリ、エンダイブ、空心菜、小松菜、コカブ

<ハーブ類>
ルッコラ、バジル、ミント、クレソン、マスタードグリーン、セージ、レモンバーム、マジョラム、ディル、セルフィーユ、ヒソップ、イタリアンパセリ、パセリ、コリアンダー

専用WEBサイト「みらい畑スマートネットワーク」について

<みらい畑スマートネットワークとは>

柏の葉キャンパスエリアに設置する植物工場を一元管理し、地域全体で野菜の最適利用を進めるための仕組みの総称です。現在、千葉大学では大規模な植物工場拠点を整備し、駅前の商業施設「ららぽーと柏の葉」では2坪の中規模タイプの植物工場を展開しています。家庭用の実証実験では、各植物工場をつないだ専用WEBサイト「みらい畑スマートネットワーク」を立ち上げ、ネットワーク構築に向けた実証を行っています。

みらい畑スマートネットワーク イメージ図

<WEBサイトの主なコンテンツ>

  • 住民モニター同士の交流支援機能
    各モニターの栽培状況をネットワークで見える化(共有)し、WEBサイトを通じて簡単に収穫野菜の生育情報やレシピの情報を交換することができます。専門家への質問やアドバイスも行い、交流を促進します。

    交流支援機能でレシピ情報の交換が行われている
  • カメラによる野菜の24時間記録・確認機能
    家庭用植物工場には野菜を24時間記録するカメラが設置されています。WEBサイトを通じてパソコンやスマートフォンから野菜の栽培状況培状況を確認したり、生長の記録をシェアしたりすることができます。

    カメラによる記録写真