• オフィスビル

停電時の非常用発電機の電力を有効利用する
電力供給自動制御システム「TRAMSBOARD(トラムスボード)」を販売開始
BCP*1対策強化を支援、通常の非常用発電設備増強と比較し導入コスト・工期を約1/2削減

2015年7月15日
株式会社日立製作所
三井不動産株式会社

株式会社日立製作所(執行役社長兼COO:東原 敏昭/以下、日立)と三井不動産株式会社(代表取締役社長:菰田 正信/以下、三井不動産)は、このたび停電時の非常用発電機の余剰電力(防災用電力)を企業などが入居する執務空間にまで供給可能にする電力供給自動制御システム「TRAMSBOARD(トラムスボード)」を共同企画し、日立の製品として本日より販売開始します。

  • BCP(Business Continuity Plan):事業継続計画。災害や事故など不慮の事態を想定し、事業継続の対策をまとめたもの。

非常用発電機の電力には、保安用照明や保安用空調機の電力となる保安用電力とスプリンクラーや消火ポンプの電力となる防災用電力があります。火災を伴わない停電時には、スプリンクラーなどの防災用設備を稼働させる必要がないため、非常用発電機の発電力容量のうち約50%~60%が余剰電力として見込まれます。本システムはこの防災用電力に着目し、電力を有効利用するものです。

本システムの導入により、火災を伴わない停電時に、企業などが入居する建物の執務空間などへ電力供給ができるほか、防災対策室などにも供給可能となるため、建物および企業のBCP対策が強化されます。また、これまで実施されていた大規模な非常用発電機の増強工事を伴わないため、既存建物の場合、従来比約1/2の導入コストと工期でシステム構築が可能になります。

本システムは、既存の非常用発電機の電力を最大限利用することを目的に、日立のビル管理システムに関するエンジニアリング力と三井不動産のビル運営での防災強化・BCPサポートのノウハウを結集して開発したもので、日立と三井不動産は、本システム導入に向けて、複数物件において設備状況の調査を開始しております。今後、オフィスビル、医療施設、公共施設向けに提供し、建物や企業のBCP対策の強化を支援し、災害に強い街づくりに貢献します。

【防災用電力の利用(概念図)】

【電力供給自動制御システム「TRAMSBOARD(トラムスボード)」の詳細

本システムは、監視制御装置と、電力幹線に設置する制御ユニット搭載の新設分電盤で構成され、監視制御装置が建物の停電発生状況、非常用発電機の稼動状況、火災発生状況などの各信号から「通常時」「停電時」「BCP対応時」などの運転モードを選定し、分電盤の制御ユニットへモード信号を送信する自動制御を行います。制御ユニットは受信したモード信号に応じて、限られた余剰電力を複数の分電盤へ等配分、あるいは防災対策室など必要なところへ効率的に分配します。

また、専用の電力幹線の設置が不要で、商用電力で使われている電力幹線を利用できることから、従来の方式と比べて、既存建物の場合は約1/2の導入コストと工期でシステムを構築できます。本システムの導入により、火災を伴わない停電時には、非常用発電機の防災用電力を入居企業や入居店舗の専有部、および防災対策室などに供給し、建物および企業のBCP対策強化が可能になります。

【電力供給自動制御システムの構成(BCP対応時)】


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【電力供給自動制御システムの仕様】

自動モード制御 建物の状態から分電盤を制御する通常モード、BCPモードなどを自動制御
手動操作 モードの変更、分電盤の設定や個別発停などを手動で操作
入力インターフェース 停電、火災、非常用発電機、遮断器などの状態信号を接点I/Fにより入力
監視機能 建物や分電盤の状態を常時監視し、異常時に警報を出力する機能
保護機能 非常用発電機の電圧、燃料などの状態信号により発電機の保護を優先する機能
保全機能 各機器の故障やバッテリーの異常を監視し、システムの健全性を保つ機能
ユーティリティ 分電盤のテナント名称や使用電力(電流値・電力量)の値をCSVやグラフで出力
ユーザー管理機能 登録された管理者権限・パスワードによって管理する機能
  • 非常用発電機の発電容量、連続運転可能時間によりシステムが適応しない場合があります。
  • 停電時における母線連絡など、停復電時のシーケンスを変更していただく場合があります。
  • 幹線に設置されたトランス(変圧器)についても改修が必要となる場合があります。

【日立の取り組みについて】

日立は、ICT*2を活用したエネルギーマネジメントシステムやインフラ設備をビルや工場など多くの建物に導入した実績を持ち、メンテナンスや管理業務まで一貫したサービス体系を備えています。これらに加え、このたび、三井不動産の建物運営、企画、防災対策のノウハウを活用することで、「TRAMSBOARD」を開発しました。「TRAMSBOARD」により、建物の電力供給のBCP対策導入における工期短縮やコスト削減などのお客さまのニーズに応えるとともに、災害に強い社会環境の構築に貢献します。
*2 ICT(Information and Communication Technology):情報通信技術

【三井不動産の取り組みについて】

三井不動産は従来からオフィスビルを中心に進めてきた防災対策・BCPサポートのノウハウを活かす事で、本システムを構想し、関係施設のみならず、BCP対策が必要とされる各施設でも普及することで、災害に強い社会インフラの整備が進むことを企図してまいりました。
    また、三井不動産は、入居企業各社の皆様とお互いの強みを活かして、単なる賃貸借の関係を超えたビジネスパートナーシップの関係の構築を行っております。
    日立は三井不動産のオフィスビルの入居企業であり、これまでもBCPサポートの強化に取り組まれてこられた経緯から、本事業において共同で企画し、日立製品として開発・販売を行っていただきます。

【電力供給自動制御システム「TRAMSBOARD」に関する日立のWebサイト】

http://www.hitachi.co.jp/tramsboard/