三井不動産グループでは、2024年4月に公表した新グループ長期経営方針「&INNOVATION 2030」において、不動産デベロッパーの枠を超えた「産業デベロッパー」として社会のイノベーション・付加価値の創出に貢献することを目指し、事業戦略を支えるインフラの1つとしてDXを位置付け、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に力を注いでいます。
今回は、プロジェクトに携わる人々へのインタビューも交えながら、働きがいと技術革新を追求する三井不動産グループのDXへの取り組みをご紹介します。
オフィスDX | 働く人の毎日をより豊かに
すまいDX | 心おどる便利なすまい体験を提供
街づくりDX | 暮らしの中で健康になれる街へ
生成AIの浸透
デジタルマーケティングの浸透
PROJECT STORY ~DX本部、価値創造の起点で働くということ~
サマーインターンに「DXコース」新設
2023年IT賞(社会課題解決領域)受賞
三井不動産グループは、「働く、すまう、楽しむ、憩う」といった人々の生活の様々な場面を横断し、「リアル×デジタル」による不動産ビジネスの変革・イノベーションの推進を目指して、DXの深化に取り組んでいます。以下に、近年三井不動産グループが推進している主なDXの取り組みの具体例をご紹介します。
「三井のオフィス」にお勤めのビジネスパーソンを対象に、会員制の総合情報サイト「&BIZ」を提供しています。「&BIZ」では、商業施設での優待をはじめ、休日に家族と参加できるイベント情報、健康経営やDE&Iなど企業の持続的なサポートにつながるセミナーなど、多様化するオフィスワーカーのニーズに応える充実したサービスとコンテンツをシームレスに提供しています。
「Work」「Life」を充実させるデジタルコミュニケーションを通じて、より楽しく、より豊かなビジネスライフの実現に貢献します。
三井のオフィス「&BIZ」:https://and-biz.jp/
すまいに関する多様なニーズに応えるため、「三井でみつけて すまいとくらしウェブ」を2024年3月にリニューアルしました。AIコンシェルジュやメタバースなどの新技術を活用して、すまい選びの選択肢をさらに充実させると同時に、入居者向けサービス「三井のすまいLOOP」の会員34万人(2024年6月末時点)が参加できるオープン掲示板を開設し、様々な質問にお答えしています。
いつでもどこでもお好きな方法でアドバイザーへのすまい相談ができると共に、住宅購入の検討段階から入居後まで、お客様に寄り添い楽しみながらすまいとくらしを考えていただける環境が整いました。
「三井でみつけて すまいとくらしウェブ」:https://www.mitsukete.mitsui-mall.com
柏の葉スマートシティの生活者に向けたヘルスケア関連サービス提供ポータルサイト「スマートライフパス」を基盤に、データ連携プラットフォームを開発しました。本人同意のもとで提供されるデータを活用し、一人ひとりの健康に役立つサービスを循環させています。 安全性の高い独自開発ネットワーク環境「Dot to Dot」を活用し、提携サービス間でパーソナルデータを連携させることで、新たなサービスを利用できる仕組みです。2023年度からは「ららぽーと柏の葉」とも連携し、現在約20店舗が生活体験型健康測定の機会を提供しています。
利用者は暮らしの中で健康への気づきを得ながら、様々なヘルスケアサービスを優遇利用でき、商業施設のクーポンなどの嬉しい特典も受けられます。
ここまでにご紹介したサービスをはじめ、DXに関する様々な試みを支えているのは、三井不動産の「DX本部」です。
DX本部は、経営戦略へのコミットメントのもと、既存事業の知見を持つ事業部やグループ各社のIT部門と連携し、「リアル」と「デジタル」によるビジネス変革を推進しています。全社員を巻き込み、知的生産性を向上させながら、さまざまなアプローチでイノベーションの創出とビジネス変革に取り組んでいます。以下に、その一部をご紹介します。
お客様向けサービスの体験価値向上および業務効率化を目指し、自社特化型AIチャットツール「&Chat」を開発し、2023年8月より全従業員を対象に運用を開始しました。
各部門の業務効率化を促進するための社内研修や、業務改善につながるプロンプトのアイデアを社内で募集する「全社生成AI活用アイデアソン」を年3回実施。実施済みの2回のアイデアソンでは、のべ177名の参加者から517個のアイデアが集まり、厳正なる審査の結果、社長賞2名を含む計34名が表彰されました。
三井不動産グループ全体のマーケティング力強化を目指して、事業横断型のマーケティングサポート専門チーム「& Marketing」を設立。2022年度上期のプロジェクト開始以来、8事業47プロダクトでデジタルマーケティングの改善施策を実施しています。
「& Marketing」では、メールマガジンやLP(ランディングページ)の件名・文面の改良、広告運用の内製化、インサイドセールスの高度化、MA(マーケティングオートメーション)の高度化、アプリのUI(ユーザーインターフェース)改善まで、多岐にわたる提案を行い、戦略策定から施策の実行、ナレッジの展開までをサポートしています。
三井不動産のDXをリードする「DX本部」では、様々なバックグラウンドを持つ社員が協働してプロジェクトを進めています。今回は、DX本部で「三井でみつけて すまいとくらしウェブ」のリニューアルやAIチャットツール「&chat」の開発などに携わってきた宮岡真規人と田中翔太の二人に、プロジェクトや日々の業務、今後の展望について聞きました。
宮岡:私は大学で情報系を専攻しており、2012年に新卒入社した航空系の会社ではWebシステムの構築に携わっていました。この会社では、企画立案の段階から実際に手を動かしてプログラムを書く部分、そしてリリースまで、構築プロセス全体を経験しました。その後、エキスパート職(IT系)として三井不動産に転職したのは2020年のことです。商業施設のお客様向けのアプリや、住宅・ホテル事業用のシステムの開発・改善に取り組んだあと、今はDX本部のエンジニアリングリーダーとして、田中さんたちと共に生成AI活用などのプロジェクトに携わっています。
田中:私は2016年に新卒で総合職として三井不動産に入社しました。最初の配属で三井不動産レジデンシャルの千葉支店に出向し、マンションの開発に従事しました。柏の葉や船橋などのエリアで3年半にわたって開発を手掛けたあと、同じ支店で営業担当になり、自分が開発したマンションを販売することになりました。1年半後、開発に深く関わった「パークホームズLaLa南船橋ステーションプレミア」をすべて完売させて、DX本部に異動してきた形です。以前は主にデータを活用したマーケティング力向上プロジェクトに取り組んでいましたが、現在は生成AIチームで活動しています。
田中:そうですね。私はDX本部に異動が決まったとき、後輩に「DXって何?」と質問したくらい、ITの素養がなかったんです。そこから本を読んだり、現場で教えてもらったりして、必死で学んできました。今も宮岡さんにたくさんのことを教えていただく日々です。
宮岡:生成AIなんかは三井不動産で初めて触れた技術なので、そういう意味では私も田中さんと同じですよ。
田中:そうはいっても私は宮岡さんのようにコードが書けるわけではないので、「IT・技術と実ビジネスを結びつける」ことを自分のミッションだと思っています。各事業部の方々と一緒にユースケースを探索して、どうすればIT・技術を活用して現場を良くしていけるかを探っています。
宮岡:確かに、チーム内でうまく役割分担しながら同じ目標を目指しているのがDX本部の特長ですね。
宮岡:私と田中さんが初めて一緒に取り組んだのがこのリニューアルプロジェクトでした。キックオフはちょうど1年前頃です。
田中:目的は、三井不動産がアプローチできていなかったお客様との接点を増やすことでした。これまで「マンションを買いたい」「戸建てがほしい」といったニーズが顕在化・明確化している方に対しては三井不動産グループとしてしっかりとアプローチできていましたが、その手前の段階で「すまいのことをどうやって考えていけば良いんだろう」「マンションがいいのかな、戸建てがいいのかな」といったニーズが潜在的であったり、明確化できていない方には積極的にアプローチできていませんでした。そういった方々がふらっと遊びに来られるような場所を作りたいと考えました。このような課題があるなかでお客さまとの接点を持ち、ユーザー理解度の高いすまいとくらしの連携本部と、ITやマーケティングに精通したDX本部が一体となって、プロジェクトがキックオフされました。
田中:「ユーザー目線」という点に徹底的にこだわりました。まずはターゲットを明確化してユーザーインタビューを実施し、ユーザーの声を直接聞くことに注力しました。ニーズの解像度を上げて、それをもとにコンテンツを膨らませることを常に意識していましたね。
宮岡:メタバースや生成AIなどの新しい技術を積極的に取り入れたことも、今回のリニューアルのポイントです。特にメタバースについては、技術的な困難よりも、導入意義を第三者に説明する部分に高いハードルがありました。まだ成功事例が少ない新技術の導入にチャレンジすることの難しさと、面白さを実感しました。
田中:失敗を恐れずにチャレンジできる、両部門の空気感に助けられましたね。上層部も含めて「Fail Fast(はやく失敗せよ)」の文化があるので、新しいことに取り組みやすい雰囲気があります。
宮岡:「&chat」は三井不動産に特化したAIチャットツールで、機密情報を守りながら生成AIを社内活用するために開発したものです。
田中:社内では業務効率化はもちろん、壁打ちやアイデア創発にも活用されています。これまで聞いた事例の中で特に面白かったのは、「7人の個性的な人格を設定し、サステナブルな街づくりについて議論させる」という活用方法です。多様なステークホルダーに対する理解と協調が必要なまちづくりにおいて、社員だけの議論では得られない視点を引き出すことができました。また、社長のインタビューや社内報での発言を学習させて、社長の観点でコメントをもらうという活用事例も面白いと思いました。
宮岡:月に1回のペースで研修を実施しています。現場での活用イメージをチームで共有しやすいよう、オンラインではなくあえて対面で実施し、ロールプレイングを取り入れるなど実際の業務に即した内容を心がけています。この研修の中で、参加者から新たな活用アイデアが生まれることも多いです。
田中:昨年の秋と今年の春には、アイデアソンも実施しました。「ITに疎い人でも参加したくなる仕掛けが必要だ」という社長の言葉をきっかけに、魅力的な社長賞を設けたところ、予想以上に幅広い方々が参加してくれました。この企画をきっかけに、「うちの会社は生成AIを積極的に活用していこうとしているんだ」という社内認知が一気に広まったと感じています。
宮岡:前職では、誰かの要望に合わせてシステムを作るケースがほとんどでしたが、今はDX本部で「何を作ろうか?」という段階からプロジェクトに携われることがとても楽しいです。一般的な事業会社では「IT部門は事業部をサポートする部署」と位置づけられることが多いと思うのですが、三井不動産のDX部門は、自分たちがプロジェクトの起点となって、新しいチャレンジを各事業部に広めていける。これは大きな魅力だと思います。
田中:チームの約8割がプロパー社員ではない中で、多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まっているのもDX本部の良いところです。データサイエンスに強い人、マーケティングに強い人、システム開発に強い人など強みも様々で、今までITに馴染みがなかった住宅事業出身の自分もスキルを高めながら働ける環境を魅力的に感じています。
宮岡:最新の技術や知識をインプットし続けて、皆様の豊かな暮らしをもっとサポートしたいと考えています。そのために、DX本部チーム一丸となって新しい価値を提案し、各事業部の方から「一緒にやってよかった」と思える人材になりたいですね。
田中:ITの力で三井不動産の生産性を倍増させたいです。そのために、社内全体の文化醸成を進めていきたいですね。かつての自分のように「DXってよくわからない」「ITに強い会社じゃないよね」と感じている方々にこそきちんと寄り添って、「三井不動産はITに強い会社だ」と思ってもらえる風土を築きたい。そうすることで生産性だけでなく、お客さまに対する提供価値の向上にもDX本部が積極的に貢献していくのが自分の目標です。
三井不動産では、2024年度より新卒採用のサマーインターン「Summer College」に「DXコース」を新設しました。「リアルな場×テクノロジーで不動産ビジネスを革新する」と題する2日間の対面プログラムで、DX事例のレクチャーや、商業施設を舞台にテクノロジーで新たな価値を生み出すワークなどを実施します。詳しくは下記のURLをご覧ください。
https://recruit.mitsuifudosan.co.jp/shinsotsu/eventandintern/
「物流の2024年問題」解決に向けたロジスティクス本部の取り組みが評価され、公益社団法人企業情報化協会が選定する2023年度「IT賞(社会課題解決領域)」を受賞しました。幅広い協働によってITを活用した物流効率化とサステナビリティに寄与し、日本全体の社会課題解決を目指している点が評価されました。
https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2023/1218/
三井不動産グループは、「共生・共存・共創により新たな価値を創出する、そのための挑戦を続ける」という「&マーク」の理念に基づき、「社会的価値の創出」と「経済的価値の創出」を車の両輪ととらえ、社会的価値を創出することが経済的価値の創出につながり、その経済的価値によって更に大きな社会的価値の創出を実現したいと考えています。