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九州大学、三井不動産、日鉄興和不動産が
IWI(新国富指標: Inclusive Wealth Index) に着目した
「持続可能性に資する未来型の高度産業集積に関する共同研究」を開始

2023年4月25日
国立大学法人九州大学
三井不動産株式会社
日鉄興和不動産株式会社

国立大学法人九州大学(所在:福岡県福岡市、総長:石橋 達朗)(以下「九州大学」)と、三井不動産株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:植田俊)(以下「三井不動産」)と、日鉄興和不動産株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:三輪正浩)(以下「日鉄興和不動産」)は、「持続可能性に資する未来型の高度産業集積に関する共同研究」(以下「本研究」)を開始しましたのでお知らせいたします。

地政学リスクへの対応を踏まえたグローバルサプライチェーンの見直しが進む中で、とりわけ半導体産業やその周辺製造業への戦略的な投資が国内で加速しています。国内での新たな大規模工場の建設は、その地域にとっての経済的なインパクトはもとより、持続可能な地域全体の活性化につながる街づくりの視点が求められます。

九州大学と三井不動産および日鉄興和不動産は、このような社会情勢を見据え、持続可能性と経済合理性のバランスのとれた製造業を中心とした産業集積を想定し、その実現を目指して共同研究を開始しました。

本研究では、2010年より国連で採用されているIWI(新国富指標:Inclusive Wealth Index)(以下「IWI」)に着目し、九州をフィールドとして半導体産業の集積が起こる影響を定量化します。具体的には、半導体製造業や半導体装置産業といった半導体関連産業に加え、半導体を最終製品として扱う製造業や、それらの製造業に人材を供給する教育機関、物流施設や生活利便施設などの周辺産業も含めた広範な影響が、空間的にどのように波及していくかについて可視化することをめざします。

今回の共同研究を通じ、製造業や物流業の集積、それに伴う生活利便施設や住居エリアの再構築に関する知見を得ることで、将来にわたって有効な土地利用転換をはかるためのノウハウを指標化し、産業再生や地方創生に寄与できると考えています。三者が共同して、2030年頃を想定した産業集積のシナリオについて検討し、九州大学でそのシナリオの影響結果をIWIとして計算します。計算結果をもとに、三者でシナリオを検証し、具体的な開発候補地の選定について、三井不動産と日鉄興和不動産で具体化することを想定しています。

高度産業集積とは、研究者や技術者などの高度人材を要するアカデミア・研究拠点・製造拠点と居住環境からなる集積です。時代とともに、製造業自体にこれまで以上にスピード感をもったアジャイル開発が求められるようになり、製造現場と研究現場、さらには教育現場の連携に一層のスピード感が必要となっています。そのような製造現場のニーズに応えることのできる、産学連携を具現化した街づくりを想定します。

なお、本研究は九州大学 都市研究センターの馬奈木教授が中核となって進めます。馬奈木教授は九州地方を中心とした複数の地方行政とIWIを用いた実践に取り組んでいます。また、AIを用いて個別の製品・サービスのESG評価を行う手法を開発し、既に複数企業の事業改革も実践しています。

■IWI(新国富指標 Inclusive Wealth Index)とは

IWIとは、GDPを補完する新たな価値として2012年に国連が発表した指標で、「現在を生きるわれわれ、そして将来の世代が得るだろう福祉を生み出す、社会が保有する富の金銭的価値」を数値化したものです。UNEPより継続的にレポートが発行されています。馬奈木教授は、2014年より国連代表としてInclusive Wealth Report(国連・新国富報告書)を執筆、九州を中心とした複数の自治体でIWIを導入している第一人者です。IWI導入後、各自治体においてIWIを活用した政策が具体化されています。

IWIは物的資本、人的資本、自然資本から構成されることから、開発による自然破壊などの将来におよぶ負の影響も考慮されるため、ESG投資の観点からも関心が高まっています。

<IWIの活用イメージ>


(上) 馬奈木教授が作成した、IWIを構成する各資本の増減変化のグラフ


(左) IWIを人口衛星を用いた高解像度の人口密度データと紐づけることで、それぞれの空間メッシュごとにその増減を可視化することが可能となる

(右) 左図の計算手法を用いたCO2吸収量の空間分布の事例

■九州大学 都市研究センター長 馬奈木 俊介 教授

1999年 九州大学工学研究院修士課程修了
2002年 University of Rhode Island博士課程修了
Ph.D(Environmental and Natural Resource Economics)
2015年 九州大学主幹教授都市研究センター⾧、九州大学工学研究院教授就任
2020年 九州大学総⾧補佐就任

United Nations‘ Inclusive Wealth Report (IWR)代表、気候変動に関する政府間パネル(IPCC) の代表執筆者、生物多様性と生態系サービスに関する政府間プラットフォーム(IPBES) の総括代表執筆者、UNESCO International Science and Evidence based Education Assessment の総括代表執筆者、OECD貿易と環境に関する共同作業部会副議⾧等多くの国際機関や企業との連携を実施している。著書25冊、学術誌論文400本、日本学術振興会賞受賞他多くの受賞歴を有する。

■三井不動産の産学連携に関する取り組み

三井不動産は大学の英知からイノベーションのヒントを見つけ、それを街づくりやビジネスに活かすことを目指し、産学連携に取り組んでいます。2020年に産学連携推進部を立ち上げ、国立大学法人東京大学、早稲田大学、東北大学、お茶の水女子大学との共同研究に続き、九州大学との共同研究を開始しました。
これまでの街づくりの経験知を活かしながら、日本の大学が誇る最先端の研究を社会に実装していくことを目指して産学連携を進めて参ります。

■三井不動産グループのSDGsへの貢献について

https://www.mitsuifudosan.co.jp/esg_csr/
三井不動産グループは、「共生・共存」「多様な価値観の連繋」「持続可能な社会の実現」の理念のもと、人と地球がともに豊かになる社会を目指し、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)を意識した事業推進、すなわちESG経営を推進しております。当社グループのESG経営をさらに加速させていくことで、日本政府が提唱する「Society 5.0」の実現や、「SDGs」の達成に大きく貢献できるものと考えています。また、2021年11月には「脱炭素社会の実現」、「ダイバーシティ&インクルージョン推進」に関し、下記の通りグループ指針を策定しました。今後も、当社グループは街づくりを通じた社会課題の解決に向けて取り組んでまいります。

【参考】
・「脱炭素社会実現に向けグループ行動計画を策定」
https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2021/1124/
・「ダイバーシティ&インクルージョン推進宣言および取り組み方針を策定」
https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2021/1129_02/

      
目標9 産業と技術革新の基盤をつくろう
目標11 住み続けられるまちづくりを
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