• CSR
  • オフィスビル

〜『オフィスビルにおける、さらなる「安心」「安全」の提供に向けて』〜
「三井のオフィス」防災対策・BCPサポートの強化

平成24年3月8日
三井不動産株式会社

 三井不動産株式会社は、『WORKERS FIRST〜働く人にいちばんの場所であること〜』をオフィスビル事業の基本理念に掲げ、先進性を誇るだけのビルではなく、働く人にとって使いやすいビルであることを第一に考え、いつも快適で便利に安心して働けるオフィスビルづくりを行っています。

 今般、東日本大震災から1年を迎えるにあたり、さらなる「安心」「安全」の提供のため、今後開発するオフィスビルを中心に、防災対策やBCPサポートなどの取り組みを強化しますので、お知らせいたします。

<主な取り組み>

  1. インフラ停止後72時間の電力機能確保・主要機能の維持
    1. 72時間対応の非常用発電設備の標準装備(専用部にも電力供給可能)
    2. 主要機能の維持・早期復旧のための対応強化(エレベーター・トイレ・換気など)
    3. 建物被災度判定システムの導入拡大(高さ60m未満のビルにも導入)
  2. 帰宅困難者対応の強化
    1. 防災備蓄品の配備を強化(「在館人口」+「一般帰宅困難者(想定)」の1日分の水・食料確保)
    2. 情報発信の強化(情報提供のためのTVモニター等を設置)
  3. 『危機管理センター』の機能向上・スペース拡張
    1. 災害時に情報の一元管理、総合的判断など、司令塔の役割を果たす「危機管理センター(常設)」の機能向上・スペース拡張
    2. 専用回線による最新のTV会議システムなど複数の非常時通信インフラを完備
    3. 当直体制による365日24時間対応
  4. 防災関連ガイドブックの発行
    1. テナント企業に当社の防災の取り組みや、什器の転倒対策の重要性を伝えるための『防災ガイドブック(PDF:2.91MB)』『オフィス什器 転倒落下防止ガイドブック』を発行

TVモニター(横浜三井ビルディング)

危機管理センター(三井二号館)

<具体的な取り組み内容について>

1. インフラ停止後72時間の電力機能確保・主要機能の維持

本年2月に竣工した「横浜三井ビルディング」をはじめ、今後開発するオフィスビルについては、テナント企業の事業継続や館内滞留に必要な機能・環境を維持するための防災スペック向上を図るために「オフィスビル設計指針」の改定をいたしました。なお、既存ビルにおいても、非常用発電機の増設、エレベーターの耐震強化などの改修を順次進めていきます。

  1. 72時間対応の非常用発電設備の標準装備
    首都直下型地震などの大規模災害時、ライフラインの復旧に3日間(72時間)を要するとの想定に基づき、全ビルにおいて、72時間運転可能な非常用発電設備を標準装備し、エレベーター、トイレ、換気などの主要機能に電力供給をすることとしました。加えて標準的なビルには、非常用発電設備から専用室内に15VA/m2の電力供給を行い、テナント企業の事業継続を支援します。

    非常用発電機

    燃料タンク(一部)
  2. 主要機能の維持・早期復旧のための対応強化
    テナント企業の事業継続や館内滞留に必要な環境を確保するために、エレベーターやトイレ、換気、セキュリティなど、主要設備の機能維持・早期復旧の対策を強化します。
    1. エレベーター
      緊急地震速報による管制運転により、できる限り早く最寄階に停止させて、閉じ込め事故や設備の損傷を最小限にとどめるほか、自動診断仮復旧運転ソフトを標準で実装し、一定レベル未満の揺れであれば、保守会社の点検を待たずして早期の運転再開(仮復旧)を可能にします。

      全ビルで一定台数以上のエレベーターに、耐震性能最高ランクのクラスS(注1)を採用し、長周期地震動の対策も含めた耐震性の向上を図ります。 注1)(財)日本建築設備・昇降機センター「2009年版昇降機耐震設計・施工指針」に基づく
    2. トイレ
      非常用井戸、雨水利用、汚水の再利用などによる雑用水の確保、緊急時用汚水槽などの設置により、停電時や上下水道が途絶してもトイレ使用が可能な仕様としました。
    3. 換気
      テナント企業の事業継続や館内滞留を考慮し、停電時でも換気を行えるよう開放可能な窓を設置して自然換気を可能とするか、非常用発電機から換気設備へ送電するなどの仕様としました。
    4. その他主要設備
      保安設備や上水槽などのビルの機能を維持する上で重要な設備についても、非常用発電設備からの電力供給および耐震性能最高ランクのクラスS(注2)の採用により機能維持を図ります。
      注2)(財)日本建築センター「2005年版建築設備耐震設計・施工指針」に基づく
  3. 建物被災度判定システムの導入拡大
    大規模地震発生時、迅速に建物の被災状況を把握するために、従来から「建物被災度判定システム」の導入を積極的に進めており、現時点で30棟に採用しております。このシステムは、6〜7フロア毎に設置した地震計の計測データを基に、各フロアの揺れの加速度と層間変形角を自動解析するもので、地震発生後10分程度で建物構造の被災状況の一次判定を行うことが可能です。従来は、構造性能の大臣認定が求められる高さ60m以上のビルを導入対象としていましたが、今後はさらに対象を広げ、60m未満の一部ビルについても導入していく予定です。

2.帰宅困難者対応の強化

大規模地震発生時、テナント企業ならびにオフィスワーカーの皆様がより安全な行動を選択できるように、一定期間の建物内での滞留を可能にする施策に取り組んで行きます。また、地域貢献として主要ビルでは一般帰宅困難者についても可能な限り受け入れる方針です。

  1. 防災備蓄品の配備を強化
    1. 災害備蓄品の常備・充実
      ア.在館人口相当人数の1日分の水・食糧の備蓄
      イ.簡易トイレ、医薬品、救護機材等の備蓄拡充(本年3月実施)
      ※アについては、テナント企業と保管場所を協議の上、順次実施。
       万が一のエレベーター内の閉じ込めに備え、高層用エレベーター内に、防災備蓄キャビネット
       (簡易トイレ、非常食、携帯ラジオなど)を設置いたします。
  2. 情報発信の強化
    1. 情報発信ツールの整備
      情報提供のためのTVモニター等をエントランスホール等に設置し、被災状況や、公共交通機関の復旧状況、ビル設備の使用可否などの情報提供を行います。
    2. 「危機管理センター」から各オフィスビルへの情報提供
      当社が所有管理するオフィスビルから各エリアの被災状況・公共交通機関の復旧状況など独自に取得した情報を「危機管理センター」に集約、再配信し、テナント企業・オフィスワーカーに情報提供を行う。
    3. 館内放送のマニュアル化
      災害時の館内放送について、建物の安全性や周辺状況などを迅速かつ的確に情報提供を行うためのマニュアルを改めて見直し、体系的な整備を実施中。
    4. テナント企業ならびにオフィスワーカー限定のウェブサイト新設
      当ウェブサイトは、テナント企業ならびにオフィスワーカーを対象に、平時から当社所有管理ビルにおける防災の取り組みやイベント情報など、多数のコンテンツを情報発信する予定です。災害時には、外出中ならびに在宅中のオフィスワーカーやそのご家族に向けて、建物の被災状況などの情報を提供します。 なお、本サイトの開設は、2012年夏頃を予定しています。
  3. 一般帰宅困難者の受入
    1. 一般帰宅困難者受入マニュアルの整備
      地域貢献として主要ビルでは一般帰宅困難者についても可能な限り受け入れる方針です。
      「新宿三井ビルディング」では、モデルプロジェクトとして、一般帰宅困難者受入マニュアルを作成中で、運営スタッフが少ない状態でのオペレーションなど、さまざまな課題を整理中です。
    2. 一般帰宅困難者用の災害備蓄品(水・食糧・防寒シート等)の備蓄
    3. 各行政機関の一般帰宅困難者対策との連携
      各エリアの防災計画に沿った一般帰宅困難者受入に対応するために、各行政機関と連携した対策の構築に取り組みを行います。

3.『危機管理センター』の機能向上・スペース拡張

当社では、2006年10月から東京・日本橋の本社に「危機管理センター(常設)」を設置。今般、危機管理機能の更なる向上・充実のため、スペースを拡張しました。

  1. 「危機管理センター」(ビルディング本部の災害対策本部室)の機能向上・スペース拡張
    大規模地震発生時に、当社が運営管理する全国で約300棟のオフィスビル(ファンド物件も含む)の司令塔の役割(情報の一元管理、総合的判断、現場支援)を果たす。

    72時間対応の非常用発電機を配備するほか、今回の拡張にともない、起動ボタン1つで危機管理センター内の全システムが立ち上がる機能を付加しました。

    なお、当該「危機管理センター」には、全社およびオフィスビル以外の各商品本部、三井不動産レジデンシャル(株)の常設の災害対策本部室も併設しています。
  2. 専用通信回線による「TV会議システム」をはじめとした情報通信ネットワーク
    大規模災害時の通信手段を確保するため、一般回線電話に依存しない複数の非常時情報通信ネットワークを確立しました。
    1. 光回線の専用線を確保し、「危機管理センター」とエリア拠点および主要ビルとの間を結ぶ「TV会議システム」を整備。また、今回の拡張にともない「TV会議システム」を最新システムに更新し、よりスムーズに各ビルとの情報収集・指示伝達などのコミュニケーションが図れるようになりました。
    2. 衛星携帯電話・専用線電話・IP電話などの複数の通信インフラを整備。
    情報通信ネットワークを活用し、各ビルの監視カメラ映像や「被災度判定システム」の解析結果を「危機管理センター」で情報収集し、リアルタイムで被災状況を把握することができます。
  3. 当直体制による365日24時間対応
    平日夜間および休日に発災した場合でも、速やかに災害対策総括本部が機能できるよう、昨年2月より、当社と三井不動産ビルマネジメントの社員が2名ずつ交代で当直を行う24時間体制を構築。

    当直要員は毎日、対策本部立上げおよび拠点ビルとの通信訓練などを実施しており、その結果、東日本大震災の際も、総動員で対策本部任務にあたることができました。

【災害対策本部室 施設概要】

所在地 東京都中央区日本橋室町2-1-1 三井二号館2階
総面積 781m2(内、ビルディング本部 325m2
用途 三井不動産(本部)、ビルディング本部(危機管理センター)、商業施設本部、アコモデーション本部、三井不動産レジデンシャル
主な装備 通信設備:専用回線TV会議システム(現時点で主要ビル27棟と接続)
               衛星携帯電話・専用線電話・IP電話
ノーパンク自転車30台(現場応援要員用)

危機管理センター(防災訓練の様子)1

危機管理センター(防災訓練の様子)2

危機管理センター(防災訓練の様子)3

TV会議システム

複数の通話手段

ITVモニタリング

4.防災関連ガイドブックの発行

  1. 防災ガイドブック
    当社の防災に対する取り組みをテナント企業に理解していただき安心感の醸成を図るとともに、テナント企業の事業継続検討の参考になるよう、本ガイドブックを発行しました。
    【本ガイドブックの主な内容】
    1. 災害時の組織体制と役割
      危機管理センターに設置する災害対策総括本部と各ビルとの連絡体制について
    2. 「三井のオフィス」の防災機能
      被災度判定システム、耐震性能・制振構造、非常用設備、備蓄品について
    3. 災害時に備えたコミュニケーションと訓練
      テナントリレーションと各種訓練について

    4. 防災ガイドブック(PDF:2.91MB)
  2. 『オフィス什器 転倒・落下防止ガイドブック』
    東日本大震災では、東京都内でも約20%の事業所で、オフィス内のパーテーションやキャビネットなどの什器の転倒・落下・移動などの被害が発生しました。

    テナント企業に什器の転倒・落下防止対策の重要性を認識していただき、オフィス内の安全性を確保していただくために本ガイドブックを発行しました。

    本ガイドブックの内容は、東京消防庁『オフィス家具類・一般家電製品の転倒・落下防止対策に関する指針』を基に、オフィスにおける具体的な対策をまとめたものです。今後は、本ガイドブックを活用して、什器の転倒防止対策をテナント企業とともに推進してまいります。

    ※(発行部数)日本語版:各25,000部・英語版:各5,000部

以上